軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第351話

終業時間にはまだ早いのでタイムカード処理をしておく。これでも一応マジメな生徒なので。今日は九の日、前世的に表現したら花の金曜日だな。四の日の午後にハッチャケる 人(ドワーフ) もいるけどキリの良さで九の日の方が酒場も賑わう。と言っても十の日だから飲まないという事は一切ない種族だけどな。

アンディーを背中に装備して商業ギルドに向かう。早く着く分には問題ない。

(「ますたー あそび いくの?」)

(「お仕事だよ。明日は市場もお休みのお店が多いから、何か食べたい野菜が有ったら教えてね」)

(「あかいみ なの おさけ まぜるみ ほちい」)

それは多分トマトだな。使い道の覚え方がおかしいけど。八百屋さんでトマトを購入。他にも梨やリンゴなんかも買っておく。そう言えばアンディーはクルミも器用に前歯で開けて食べる。少し買っておくか。ちなみにクルミは殻が比較的柔らかい “ 柔殻種 ” と異常に硬い “ 硬殻種 ” の二種類がある。 “ 硬殻種 ” は可食部が少なく、殻から可食部を外しにくいという欠点があるので専ら搾油用にされている。食べると濃厚な味わいで美味しいんだって。ただ、搾油するのはドワーフかオーガに限られている。理由は簡単で、ドワーフは “ 硬殻種 ” の殻を割る事ができる道具を作れ、オーガは持ち前の腕力で割ることが出来るからだ。ちなみに『ロック=ハンド』領に住むオーガはこの “ 硬殻種 ” を擂り潰して作るクルミだれを掛けたオーガの手料理を出してくれるのだとか。

商業ギルドに着いたが流石にパイクお義祖父さまはまだ来ていなかった。カーン=エーツさんとホーク=エーツさんのエーツ兄弟は居たけど。

「おや、ミーシャはん」

「カーン=エーツさん、もうかりまっか?」

「ボチボチでんなぁ…。今日は何の用事なん?」

「パイクお義祖父さまと一緒に 三毛皇(みけおう) 様に献上する『新年飾り』を作りまして、それに添えるカードを描いたんです。それを渡しに来ました。もう少ししたらパイクお義祖父さまも到着しますよ」

「あ、名誉猫獣人謹製の【 魔多々媚(マタタビ) 】の『新年飾り』やね。今年はお試し売りするんやったかな」

「そう、それです」

「でも何でまたカードやの?」

「『新年飾り』は自身で新調したものを飾る他、親しい間柄でプレゼントしたり交換したりするそうなので、その時にメッセージを添えたら素敵かな? って思ったんです。それに、『新年飾り』が落ち着いたら猫の人達には『ニャンニャンニャンの日』のイベントが控えてるじゃないですか」

「【 魔多々媚(マタタビ) 】の 魚籠(ビク) に魚を入れるやつやね」

「それの布石というか事前アピールにも使えるでしょ?」

「せやなー。それエエな。…って、ミーシャはん、ホンマは 商人(あきんど) なんとちゃうん?」

「違いますよ。あ、こういう時は、 「ちゃうちゃう」 って言うんでしたっけ? それとも 「ちゃいますねん」 ですか?」

「どっちでもええですわ」

俺とカーン=エーツさんの遣り取りを聞きながら黙々と書類作業をこなすホーク=エーツさん。今月はまだ発案登録で振り回してご迷惑をお掛けしていないハズ。

「ミーシャ=ニイトラックバーグ、年が明けたら今月登録した分の権利金の一部が入金されると思うから。いくらになるか分からないけど」

「えっ、登録してましたっけ?」

「【コンロ】と “ マジックバッグの芳香利用 ” 、そして最大の功績が『反省のポーズ』だよ。先月は『飲み拳』でしょ? 『飲み拳』と『反省のポーズ』のコンボは半端ないよ」

「あっ……」

「もう、ミーシャはんはウッカリさんやなぁ…」

「……『反省』 」

「出たっ!! 本家の『反省ポーズ』や!! やっぱ ホ(・) ン(・) マ(・) も(・) ん(・) はええわ〜」

こういったシーンで『反省のポーズ』を使うのが多分正しいんだろう。

「そういえばラルフロ=レーンから仕事を 貰(もろ) たって?」

「はい。例の『ハニー・バニー』のイベントの時に売るアクセサリーに使う 裸石(ルース) を鉱石から研磨する仕事です」

「ミーシャはんやし、 た(・) だ(・) 研磨してへんのやろ?」

「 た(・) だ(・) 、と言うのは?」

「あれや、ごもっともな口上って言うか、胡散臭い設定って言うか、ミーシャはんの得意なヤラシイやつや」

「酷っっ…。せめて付加価値とかバックストーリーとか言いません?」

「言わんがな」

プッ…… 俺とカーン=エーツさんのやり取りに思わず吹き出すホーク=エーツさんだった。

「あ、納品前の 裸石(ルース) が有りますけど見ます? 研磨ノートも書いてあります」

「それ、見たいわー。ノートもめっちゃ気になるわ」

「はいどうぞ」

ロードナイト三石とそれに添付する研磨ノートと宝石ストーリーを書いた紙を手渡した。さて、どんな反応をしてくれるものやら。

「これ、ええデザインやね。【終わりかけ】で売るんにしては上品やし。これならナンパも成功するんとちゃうん?」

「カーン=エーツさんみたいな目利きの出来る 商人(あきんど) さんにそう言われるとボクも励みになります」

「で、なんですのん、この 設定資料(バックストーリー) 。出たわー、ミーシャ節やわ」

ミーシャ節ってなんやねん。

「どうです?」

「どないもなんも、これ 面白(おもろ) いわ!! コレな、研磨中に起きたネタを上手〜く物語にしとるんやろ? これな、ちぃとばかし夢見がちなヒト族のお嬢さん方が好きなやつやわ。あぁ、もう、これ持ってナンパ行きたいわー。ナンパやのうてもヒト族の オ(・) ト(・) モ(・) ダ(・) チ(・) にプレゼントしたいわー」

つまり、 現(・) 地(・) にイイ感じのフレンドがいるんですね。

「あー、カーン兄貴、ゲス五月蝿い」

「嫌やわー、モテない男のやっかみやわー」

「俺はモテないんじゃなくて、不特定多数に声掛けしないだけだから!!」

ムキュウ ムキュウ

(「あたち あの おじちゃん にがて」)

「今の鳴き声、なんやの?」

「アンディーです」

「アンディーって……、ミーシャはん、 面白(おもろ) いリュック背負ってんな」

ムキュウ キュウ

「なん…やてミーシャ、それリュックやないんかーい!!」

俺、どうやらカーン=エーツさんにアンディーの事を紹介していなかった様です。