軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第350話

「そうだ、アルチュールさん、今ボクこの鉱石にドリルで穴を開けているんですけど、その穴を整える為のヤスリが無いんですよ」

「どれ、見せてみな」

「ここです」

ぶっちゃけイイ感じの棒ヤスリが欲しい訳ですよ。直径三ミリメートル程度の棒ヤスリを希望。

「あ、これなら細い棒に 木賊(とくさ) を貼ればいいな。 木賊(とくさ) を出しな。それなりに持ってんだろ?」

「あ、はい、お願いします」

アルチュールさんに乾燥 木賊(とくさ) を何種類か渡す。それを触ったり光に翳しながら検分している。粒度チェックなのかな?

「コレとコレだな。ミーシャ、こっちの細いのは何処で手に入れた?」

“ こっちの ” と呼んだ 木賊(とくさ) は事務職員から特別に融通してもらった#2000相当の物だ。

「それ、特別に職校の事務の方から売ってもらいました。普通には売ってないみたいです」

「だよなぁ…。コレ、量が入手出来るんなら欲しかったんだがな。無ぇなら仕方ねぇわ」

「ボクが頑張ればもしかして…」

「頑張ったところで売ってねぇんだろ?」

「それは研磨品を事務の職員の方に見せたらより良い仕事の為なら特別に…と言う事で入手できたんです。なので、ボクがもっといい仕事をして沢山の方に認めて貰えればその 木賊(とくさ) も入手し易くなるんじゃないかと考えています」

「その手段の一つが棒ヤスリって事か」

「はい」

「それはオレも頑張らねぇといけねぇヤツじゃねぇか……」

「頑張る為に飲みますか?」

「飲むって何をだ? マジックポーションなら要らねぇな」

「いえ、赤いワインを……」

「おっ…おおぅ。今すぐ飲めってか? いや、棒ヤスリをやってからだな。全集中、酒の呼吸だ……」

「酒の呼吸ですか?」

「伝説の地に酒が無限湧きする泉っーてのがあってな、そこで泳いでも溺れない為の呼吸法だ」

「酒の泉!? 憧れますね」

「だろ? まぁクルラホーンなら酒樽で泳げばいいだけだがな」

それより、酒の呼吸はスキルなのか?

「ボク、穴を貫通させちゃいます。アルチュールさんも作業お願いしますね」

「任せろ!!」

アルチュールさんの作業が先に終わった時のことを考えて赤ワインを【粗相豆】の容器に入れた物を一本置いておく。俺個人の意見としてだが、穴開けは終わりが近くなってきた時が一番危険だと思っている。素材の材質にもよるけどパキッと割れたりするからな。前世での事だがDIYで棚を作ろうとして木材を電動ドリルで穴開けしてたら摩擦熱で木屑が焦げたこともあったな…。ドリルの溝に木屑が詰まって作業効率が落ちた事はしょっちゅうよ。とまぁ、そんな事を思い出しながら集中力を復活させた。

コリッと小さな音と共に石灰岩に小さな穴が開いた。そのままドリルを回すと作業台のコルクにドリル刃が貫入する。そっとドリルを逆回しして外し、穴の状態を確認した。それなりに開始地点から垂直に開けられたかな? 今の時点だと裏側の方が穴の径が小さいので、石灰岩をひっくり返して裏側の穴を広げてやる。この時も気を抜くとミスに繋がるので慎重にだ。表から裏から、ドリルを通して穴の径を広げてやった。『 螺旋錐(ドリル) 針鼠(・ヘッジホッグ) 』は根元が太い円錐形なので、穴が望む幅になるまでドリル刃を入れていけばいい。敵として遭遇した場合、戦闘中にこの針を飛ばしてくるとか恐ろしいな…。この針がドリル回転しながら身に突き刺さる訳でしょ? 抜く時に回して抜かないと肉が引き千切れる。回して抜いても傷跡が嫌な感じの穿孔になる。『 螺旋錐(ドリル) 針鼠(・ヘッジホッグ) 』って冒険者からしたら悪夢の魔獣だぞ。

まぁ工具素材採取用に飼育されている『 螺旋錐(ドリル) 針鼠(・ヘッジホッグ) 』は攻撃性が少なくなる様に品種改良されているし、飼育員も愛情込めて育ててくれているので特に大きな事故は起きていない。

穴開け成功に興奮していたら、脇ではアルチュールさんが美味しそうに赤ワインをラッパ飲みしていた。ドヤ顔しながらサムズアップしてるし。

「出来たぞ。粗い方から使って仕上げは細かいやつでだ。二種類あればイケるだろ?」

「ありがとうございます。これ、凄い仕事です。よく調べないと継ぎ目が分からない」

感動した!! 検分がてら鑑定してみることにする。

(簡易)

【棒ヤスリ】:クルラホーンが丸棒に乾燥 木賊(とくさ) を貼り付けて作った棒ヤスリ

(鑑定)

【棒ヤスリ】:クルラホーンが丸棒に乾燥 木賊(とくさ) を貼り付けて作った棒ヤスリ。品質=中程度++

これは普通に販売出来るレベルの仕事だ。特筆すべきは 木賊(とくさ) の継ぎ目だよ。そこが綺麗に処理されているのが凄い。重なっていて削り難かったり、逆に足りなくてガタガタしたり。それが無いってことは作業効率のみならず完成度にかなりの差が出てくる。アルチュールさんが来なければ爪楊枝に木賊を巻き付けようかと思ってたからな。めっちゃ有り難い。

「どうよ?」

「凄いです。これ、職人相手に売れますよ」

「そうか。そう言われたら嬉しいぜ」

マジか? な表情を浮かべつつも、満更でもない感のアルチュールさんだった。こんな綺麗に貼り付けてくれるんなら甲丸の棒や三角の棒にも貼り付けて欲しいわ。

「これがあれば穴の内側の仕上げが上手くいきます」

「頑張れよ。一杯やれたしオレは帰るぜ。ヤブマメ代の皆の酒、ありがとな」

「またお願いしますね」

「おうよ。オレらは酒さえ飲めりゃーそれでいい」

「ちゃんと代金も払いますからね」

照れているのか恥ずかしいのか、アルチュールさんは逃げるように帰っていった。あれは多分、褒められ慣れてないやつだ。

その後も作業を進めた。いい具合に勾玉の形に研磨出来たと思う。表面のウミユリの化石は少し削り落とすことにはなったけどな。化石部分にそれなりの厚みが有ったので、萎んだタンポポ部分を活かすために少しナイフで化石の周りの石灰岩部分を掘り込んでみた。カメオではないけどウミユリ部分を強調した。

後は部屋に帰ってからノートに鑑定情報を書いてから仕上げ磨きだ。予定よりかなり早いけど切り上げて身支度をしてしまおう。

あっ、アルチュールさんに髭を浮かべる魔法が使えるか聞くの忘れたよ……。