作品タイトル不明
第347話
結局グリーティングカードに描いたのは、お腹に次元収納を持つネコ型ゴーレム、黄色い電気ネズミ、黒丸三つの 出銭(デゼニ) ネズミ、海鮮一族の長女でした。オッスおら猿のライカンスロープとか、バイク乗りのバッタ怪人とか、三分間宇宙人とか、体は子供・頭脳はオトナ探偵とか、怪盗三世とかは諦めた。画伯になる気はさらさら無いしね。
パイクお義祖父さまは夕方に商業ギルドに向かうということなので、今日は3時上がりにしておこう。アンディーは今日も寮の部屋でのんびり過ごすんだって。野菜と果物を置いておく。グライダー・カーバンクル自体が夜行性という訳ではないけど気分次第でずっと寝ていたい日もあるらしい。
事務室に寄って今日も砕石場で作業する旨を報告しておく。何はなくとも報連相は大事たからね。ついでに昨夜完成させたロードナイト三石も見てもらうことにした。
「なかなか良い仕上がりだね。ミーシャ=ニイトラックバーグは宝石研磨は専攻してなかったよね」
「はい。鉱石研磨は入校前から趣味でやっていたので」
「形の選び方は悪くない。それより研磨ノートを付けている点を評価するよ。で、そのサイドストーリーがこれまた面白い」
「ありがとうございます。ちょっと思い浮かんだので書いてみました」
「いいと思うよ。ヒト族はそういった逸話を好むものだからね。しかもそれ、【黒薔薇】化する一歩手前でしょ。ヒト族が【心変わり】とか【終わりかけ】って呼ぶ二束三文にしかならなさそうな物に付加価値を付けちゃうんだから、なかなか大したものだね」
「これ、大丈夫ですよね?」
「騙してるとかではないし、鉱石研磨中に起きた事象を物語仕立てにしているだけだから誰にも訴えられないよ。もう一石、【 石灰岩(ライム) 】が有ったと記憶しているけど」
「それを今日研磨します」
「それも期待しているよ」
「頑張ります」
そんな遣り取りをした後に砕石場に向かった。今日も未来の精錬王達が来ている。 「いっち に いっち に」 と掛け声が聞こえてくる。見れば腕を大きく振り回したり屈伸をしたりしている。ウォーミングアップか…。前世だったら工場なんかでは朝礼後にラジオ体操をしたりするけど。怪我防止に俺も取り入れようかな。
よいしょ、よいしょ、 グーパー グーパー……
屈伸をしたり指を握ったり開いたり…適当に体を動かしてみた。本当はラジオ体操をしたらいいんだろうけどねぇ、それを広めるのは 三毛皇(みけおう) さんに任せたいところ。
「おーう、一緒にやるかー?」
「おはようございます。ボク、そっちに行きますね」
「ラーディ・オン・タイソンを教えてやるよ」
「ありがとうございます」
「そこまで難しくないからな、俺等のマネをすればいいぞ」
「まず腕を腕を振りながら足を外側に曲げる。その次は内回しと外回しだな」
これ……ラジオ体操くさくないか? ラーディ・オン・タイソンって実はラジオ体操が訛ったとかでさぁ。
「横曲げだ。そして天突きカニ歩き。そしてジャンプ」
何だか間違って伝わったラジオ体操だろ、コレ……。どう考えても昔の日本人転生者が広めたとしか思えないんだけど…。
「その二にいくぞ。力こぶを作って……」
ラジオ体操・第二まで伝わってるのかよ!!
「不思議な準備運動ですね」
「おーう、これな、ヒト族の騎士の間に伝わる訓練前の準備運動なんだぞ」
「騎士に伝わる準備運動なんですか?」
「昔にな、異世界から転生してきたミッチー=タイソンって男が広めたんだったかな。ヒト族史で『 英雄(ヒーロー) ・ミッチー=タイソンの兄貴』ってのを調べたらいいぞ」
「でも、ボク達ドワーフに関係ないですよね?」
「いや、ある!! 騎士には武器防具が付き物だろ? そういう点ではヒト族の騎士連中とドワーフは付き合いがあるからな。このラーディ・オン・タイソンを覚えておいたら商談が比較的スムーズに進むんだよ」
「あ……、言われてみればそうですね」
「俺等の動きは聞きかじりだから怪しいがな」
「まぁ、正式な騎士でなければ若干動き方が間違ってても怒られないから安心しろ」
当時ラジオ体操を伝えたのって、 英雄(ヒーロー) のミッチーさんで、体操の 兄貴(おにいさん) って事なんじゃぁ……。どうやら後で図書館にヒト族史を読みに行かないといけないらしい。ラジオ体操の流布に 三毛皇(みけおう) さんは必要なかったよ。
「正式にはラッパの演奏に合わせて準備運動をする。そして準備運動の前に唱和する歌もあるが、それは騎士しか歌えないやつだ」
「おーう」のドワーフさんは騎士団が準備運動の歌を歌うのを聴いたことがあって、
♪ アラー ダンシング
アンド サーガ キートン
キーボード アンド サーガ
ヨーロー コビッド
ムーン ネオ ヒーラー ケイン
オーゾンヌ アー オイゲン
ラーディ・オーン コーエン
スコーン カナーン ムーン ネオ
コール カール ガジェット
キー ケイン
ソウル イニング サーン ♪
という感じの歌詞だったとか。耳コピーだから絶対間違っているから、絶対にヒト族の前で歌うなよ…と念押しされた。多分それ、ラジオ体操の前に流れる歌だよ。こちらの世界の人達には日本語ってこんな風に聞こえていたのか……。
間違ってもラジオ体操の歌を歌ってからラジオ体操第一&第二を完璧にこなしちゃいけない事が分かった。後、ラジオ体操のBGMは演奏禁止だな。やったら最期、異世界転生者認定されるぞ。
「おーう」のドワーフさんは『 再詠唱(リ・コール) 』というレアスキル持ちで、このスキル持ちは聞いた歌や呪文を復唱出来るんだって。ただ、スキル使用者が呪文の意味が理解できていないものを復唱しても魔法は発動しないし、知らない言語だと筆記することも出来ないのだとか。そして詠唱省略された呪文も発動させられない。その理由は省略されたものでは呪文の本質を理解出来ないからだ。