軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第330話

「アッシュ、この後で少し難しいお話をするから食べ終わったら自分のお部屋にいってらっしゃい」

「ばぁば、分かりました」

まぁ、いきなり魔道具の発案話がはじまっちゃったからなぁ。幼ドワーフには面白い内容でもないし、聞いたことでトラブルに巻き込まれても困るので退席してもらうのが一番なのは事実。

「そうだ、その間、アンディーと遊んでいてくれる? アンディーもここで話を聞いていてもつまらないと思うし。アンディーってアッシュちゃんのことを気に入ったみたいだから仲良くしてくれたらボク嬉しいな」

「アンディーちゃん、わたしと遊んでくれますか?」

ムキュッ!!

アンディーが右手というか右前脚をスッと上げて挙手する。アンディー的にもOKって事ね。

「そうだ、これはアンディーのブラッシング用にプレゼントされた【タワシ】っていうブラシなんだ。これを預けるからブラッシングもしてあげてね」

「ミーシャねぇね、わかりました」

キュウキュウ

「アンディー、暴れちゃ駄目だよ」

ムキュウ

流石に人様の家で飛び回らないだろうけど、念の為伝えておかないとね。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ところで恒温鉄板の件だけど、それだけ思い付いたのではないのでしょう?」

「はい。先に【コンロ】という魔道具を思い付いて、それは先に発案内容を提出してあります。ハーレー=ポーターさんが開発に携わるとの事で、週明けに内容の説明というか話し合いをする予定です」

「【コンロ】とはどういう魔道具なのかしら? 制約等で話せなければ話さなくても構わないわ」

「【コンロ】というのは “ コ(・) ン(・) パクトな 炉(・) ” の略で、持ち運び可な卓上炉の事です」

「まぁ、素敵な発想だわ。その派生版という事なのね」

「火を使えるか使えないかの差はありますが」

「その恒温鉄板の改良版で蝋を溶かしてみたいのう」

「俺はホットワインを何時までも熱々で楽しみたいな」

「お豆を煮るのに良さそうよ」

熱燗機って前世でもあった様な…。

「それなら【コンロ】とも既存の保温の魔道具とも喧嘩しないわね。念の為商業ギルドに伝えておいたほうがいいわ」

「恒温鉄板って冷しエールの為の魔道具とかち合わないんですか?」

「温度をキープする魔道具という意味では同じカテゴリーに入れられてしまうけど、原理は真逆だから別物あつかいになりますわね。開発的には冷しの方が何倍も難しいのよ」

「そうなんですね」

「そうなのよ」

「既存の保温の魔道具との競合は?」

「それはエールの醸造の為にあるものなのよ。ミーシャさんの言う様にお肉を焼いたり出来る温度までは上がらないのよ」

玩具を前にした子供のように眼をキラッキラに輝かせながら食い付いてくるフィオナ=ラックさん。多分今はフィオナ=ポーターさん状態なんだろうな。

「残念だわ。ミーシャさんにもう百五十年くらい前に出会いたかったわ」

「それでは儂と一緒になってくれなかったのではないのかのう?」

「あら、そんな事ありませんよ。パイクさんは私の特別な方ですからね」

「お義母さん、象嵌細工と融合すると思いますか?」

「微妙だわ」

そんなこんなで小一時間が過ぎる。フィオナ=ラックさんから魔法の話を聞いたり魔道具の話を聞いたり、食後の団欒とはとても思えない濃密な座学が始まってしまった訳で。

「そうね…ミーシャさんは魔道具を作ったり魔法陣を組み上げたり魔導回路を開発したりはしないのでしょう?」

「はい。そちらの方はまだ勉強もしていないので全くのチンプンカンプンです」

「ミーシャさんのヒラメキは素晴らしいわ。魔導力学の基礎を学ぶくらいは必要だけど、下手に知識を入れすぎると柔軟な発想が失われてしまったりもするのよ。なので、ミーシャさんは開発云々より発案に重きを置くといいとおもいますよ」

「わかりました。忠告ありがとうございます」

「ハチャメチャなやらかしこそがミーシャの魅力じゃからな」

クスクスと押し殺した笑い声が漏れ聞こえる。皆、酷いや…、まぁ否定はしないけど。

「ほら、ミーシャさんは私とパイクさんの孫も同然ですからね、ちゃんと見守ってあげないといけませんから」

「母さん、親父様はミーシャの庇護養親なんだよな。だったら娘になるんじゃないのか?」

「言われてみればそうですねぇ…」

「俺の妹……なのか? しかし妹とは言っても娘ぐらいの年齢だな」

「ミーシャはどう思っているのかのう?」

「ボクはずっとパイク=ラックさんは優しいお爺ちゃんだと思っています。庇護養親だけど本当の祖父の様に思っています」

「まぁ」

「家族同然という事じゃし、儂らの事をフルネーム呼びなぞしなくてよいのじゃが…」

「差し支えなかったら、ボク、パイク=ラックさんはパイクお義祖父さま、フィオナ=ラックさんはフィオナお義祖母さまと呼ばせていただけますか?」

「まぁ、嬉しいわ」

「ミーシャは儂の自慢の孫じゃよ」

「俺とリズの事は何と呼んでくれる?」

「そうですね、リュートお兄さんとリズお姉さんでしょうか?」

「くぅ〜〜っっ、お・に・い・さ・ん!!」

そうか、リュート=ラックさんって末っ子だからお兄さん呼びに慣れてないんだな。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

一方その頃、アッシュちゃんとアンディーは仲良く遊んでいた

「アンディーちゃん、もう一回飛んで見せて下さい」

ムキュッ

アッシュちゃんの肩まで登るとピョンと飛んでお腹から床にベチッと落ちる。

「ブラッシングしましょうね」

キュウキュウ

背中側から始まり尻尾にお腹まで丹念にブラッシングされるとアンディーもご機嫌になるというもの。すっかり打ち解けたようで何よりです。

(「アンディー、楽しかった?」)

(「ますたー たのしかった」)

(「またアッシュちゃんと遊んであげてね」)

(「はーい でも しっぽ ぶらし やりすぎ」)

とうやらアンディー的にブラッシングは背中とお腹を重点的に…を希望している模様。尻尾は簡単でいいんだな。