軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第310話

商業ギルドに行きアンディーの餌を入れるためのマジックバッグを注文する事にした。鮮度キープも大切だけど、一番大事な事は重さが軽減される事だと思う。そしてユニークスキルの隠蔽工作だね。

そして、予想外の報告があった。そんな事もあったよね…って言うか、すっかり忘れてました。

「点線を引くための回転式の道具を覚えているかね?」

「えーとそれは……あっ、ノート屋さんの!!」

「その道具が進化してね、回転式の点線裁断 刃(ブレード) と丸刃の裁断 刃(ブレード) になったのだよ」

ミシン目カッターか!! チケットを自作する時にお世話になるカッターだよね。丸刃ならピザも切れる。いずれオブラートも切られるであろう未来が見えるぞ。

「進化したんですね」

「点線式を使う事で紙にあらかじめ点線状の切れ目を入れておくことが可能になった。ノートや雑紙の束から紙を綺麗に一枚ずつ千切る事が出来る様になり、割り符を使うシーンでも重宝しているよ」

「それは良かったですね」

「基本形はミーシャ=ニイトラックバーグの発案品なので、二種類の裁断 刃(ブレード) が売れると微々たる額だが報奨金が入る事を伝えておかねばいけないのだよ」

「そんなに売れないでしょう?」

「いや、実はだ、拭き紙の生産で大々的に使用されることになった」

「拭き紙にですか?」

「今まで乾燥させた拭き草の葉を裁断するのは良く研いだナイフを使い、熟練の職人が切り分けていたのだが、 治具(じぐ) に沿わせて点線裁断 刃(ブレード) や丸刃の裁断 刃(ブレード) を使うと誰でも簡単に裁断する事が出来る様になったのだ。これは画期的な大躍進だよ」

「拭き紙作りってボクが知らないだけで手間も人手も掛かってるんですね」

「それはいざ使うとなれば尻に当たりが良い方がいいからな。職人達は出来栄えには拘っているよ」

「そうですね。でも裁断機は熟練の職人さんの仕事を奪うことになりませんか」

「裁断以外にも作業工程が多いから、むしろ裁断する手間が省けて有り難いそうだ。来年からはドワーフ領内のあちこちに拭き草事業の加工場が建設される。紙繋がりで芭蕉紙の生産も盛んになるから農業関係も活性化する。領内全体で仕事が増えて非常に喜ばしいのだよ」

「そういえば冷やしエールはそろそろ酒場解禁ですか?」

「魔術師ギルドと錬金術ギルドが必死になっているよ」

「でも、もうすぐ冬ですよね? 冷やしエールで盛り上がる季節ではない様な…」

「何の冗談かね? 暖房のきいた暖かい部屋で飲むキンキンに冷えたエールは格別だ」

そうだった、何時でも何処でも酒の事は忘れないのがドワーフでした。まぁ、古代エルフとクルラホーンもそこに含まれているだろうな。

そしてマジックバッグは魔道具の取扱店に行ったほうが早いって言われた。個人の希望に合わせてカスタマイズも可能なのでそっちで相談した方がいいって事ね。そして商業ギルドから外に出たら誰かに呼ばれた気がした。

♪ YO YO 酔う 酔う……

シルキー ブラウニー レプラコーン クルラホーン

こいつらみんな家の妖精 頼み事 YEAY 要請

妖精 要請 傭兵は無理!!

無理な依頼飲めないイライラ 飲むなら酒だろ

避けて通れない HEY 依頼 来来(らいらい)

俺は知ってるぜ お前アル中 俺、アルチュール

『ネオ=ラグーン』生まれ『スワロー』育ち

酔っ払ってる奴は 大体トモダチ!!

ラッ、ラップ!? ヒップホップ!? そしてこのサビ歌詞はアルチュールさんの歌ってたやつだ。それなりに長い歌詞だったのか…。

「よぉ、ミーシャ探したぜ」

どこ!? 足元? 単純に考えて足元だよね。

「アルチュールさん? どこでした?」

「ここだよ、ここ。俺はここ」

踵にコツコツと振動が伝わる。まさかの後ろかよ…、気付かなかったら踏んじゃうよ。

「『スワロー』に来てくれたんですね。門は潜れたんですか?」

「そこは妖精はフリーパスだからよ。 ア(・) レ(・) 採ってきたぜ、ヤベー汁!!」

「本当ですか?」

「クルラホーン、嘘つかない」

アルチュールさんが【粗相豆】二つを空間から取り出す。クルラホーンもサイズはともあれ次元収納持ちか。まぁ、ドワーフの『キーボックス』サイズでも十分な収納サイズなんだろうけどね。しかし醤油入れのサイズ的にアルチュールさんが尻尾側を手にしてドヤ顔で持つと “ 大漁 ” とか “ ◯◯場所優勝 ” って感じだわ。

「アルチュールさん、ありがとうございます。ちょっと待ってて下さい。今、報酬のワインを出します。赤と白、一つづつですけどワインの好き嫌いってあります?」

「ねぇねぇ。飲めりゃぁ何でもいい」

空の【粗相豆】の鞘に充填した赤と白、二色のワインを手にしたアルチュールさんはご機嫌そのもので、赤いキャップを外すと豪快にラッパ飲みを始めた。取り敢えず赤? しまった、ツマミを用意してない。

「ごめんなさい、今日は【 玉菜(キャベツ) 】と岩塩くらいしかツマミが無くて…」

「塩で飲むのは最高だろ? 山の塩はご馳走だぞ」

塩でいいのか。紛うことなき酒飲みだな。

「ワイン、いいねぇ。久し振りだ」

そう言いながらグビグビと飲みだす。相変わらずいい飲みっぷりだ。そうなると冷やしエールを飲ませてあげたい。

「ウェ〜イ。酒!! 酒!! また依頼してくれるか?」

「それなら、【 蔓野豆(ツルノマメ) 】を探してきて下さい。出来ればカビてない豆を」

見本の豆をコッソリ『 次元収納(インベントリ) 』から取り出すとアルチュールさんに見せてみる。

「あーこりゃヤブマメだな。これは良く食ってるからそれなりに持ってこれるぞ」

「こっちは分かります? ドワーフ語で【 橅(ブナ) 麦】、古代エルフ語なら【 角(つの) 麦】って言う穀物なんですけど」

「おいおい、それは【埋もれ死に】じゃねぇか。これに埋もれたら全身に尖った角が満遍なく当たって俺らは死んじまう恐ろしい実だ。こいつを集めるのだけは勘弁してくれ!!」

「それならこれは依頼しませんね」

「たまに群生してるんだよ。クルラホーン避けで植えてるのか!? って勘ぐっちまうレベルだ」

えっ、その群生地が知りたい!!