作品タイトル不明
第309話
認識阻害の効果付きのトマホーク、オロール先生以外の手に渡ったらヤバい事になるんじゃ…ね?
ついつい面白武器を作れる事に興奮して全員で盛り上がってしまったけど、独りになって冷静に考えてみたらヤベー武器だよねってなるよねぇ。奪われただけでなく、 カーバンクル石(カーバンクライト) を外されて別の武器に取り付けられたら一大事だぞ。
ムキュウ
(「ますたー だいじょうぶ なの」)
(「アンディー?」)
(「あたちの 石 ますたーの ものなの ほかのひと だめ」)
俺の不安な気持ちを読み取ったのか思念が漏れたのか、急にアンディーが語りかけてきた。
(「じゃあ、オロール先生にプレゼント出来ないって事なの?」)
(「ますたー きょかした とくべつな ひと だいじょうぶ」)
(「ボクが権利をあげた人なら大丈夫ってこと?」)
(「うん とくべつ そこから ほか あげる だめ」)
どうやら、アンディーの カーバンクル石(カーバンクライト) は基本的に俺に使用権限が有り、権限を譲渡すれば譲渡先の人が使うことが出来る…と。そしてその先には権利を譲れないらしい。俺がオロール先生にアンディーの カーバンクル石(カーバンクライト) をプレゼント出来るけど、オロール先生はそこから別の誰かに権限は渡せないって事だな。オロール先生から俺に権利が戻せるかは不明だけど。奪われても只の不気味に光る石って事でOKかな?
(「かーばんくる みんな かーばんくるのますたー すき」)
(「ますたーに とくべつ 石 あげるの」)
(「うばった 石 だめなの」)
アンディーがキュウキュウと鳴きながら教えてくれる。どうやら カーバンクル石(カーバンクライト) という従魔石はカーバンクルが信頼の証に渡してくれる石であり、主従関係にない第三者が無理やり手に入れても只の綺麗な石にしかならないみたいだ。それでカーバンクルが乱獲というかテイム対象として人気が有るって事なのか? 単純に愛玩用って事ではなくてか?
「アンディー。石が無くてもボクはアンディーが大事だからね。だから、もし森に帰りたくなったら何時でも返すし、ずっと一緒にいたかったら一緒にいてね」
ムキュウ キュウキュウ
(「あたち ますたー だいすき」)
もはや定位置となりつつある俺の背中から語りかけてくる。もしかしたら俺が寝ている間に俺が知らないだけでお腹の上で毛布代わりになってる可能性アリ。
職校に戻ってハーレー=ポーターさんと顔合わせの日程をどうするか決めないといけないのか。あの先輩、ウザいんだよなぁ…。しかも設定被りだし。その前にパイク=ラックさんの家に行っておくかな。 巣箱(ケージ) のお礼を言うのとマジックバッグの返却ね。
アンディーはパイク=ラックさんの事を気に入ったらしく、キュウキュウとお礼の鳴き声を上げながら背中に張り付き、お礼?のグルーミングをしていた。曰く、(「おじいちゃんから もりのけはい するの」) だとの事。パイク=ラックさんは【 樹精(ドライアド) 】の加護持ちだから、その気配を感じ取った?
職校の学生寮に置く 巣箱(ケージ) は雰囲気がガラリと変わって木の 巣箱(ケージ) 。梯子状の登り木に、長方形の 巣箱(ケージ) で天板も広いので、 巣箱(ケージ) の中でも外でものんびりできる。トイレは置いていない。 木賊(とくさ) 管理の為に部屋には立ち入るけど、乾燥牛糞しか与えてあげられないのは赤スライムに負担を掛けてしまうからね。アンディーも一日くらいはトイレを我慢出来るので、寝泊まりしない部屋にトイレは置かない方向で。どうしても…だったら寮のトイレを使わせてもらえばいいんだし。あ、特殊な排泄物を出す従魔や排泄物の量が多い従魔の場合は 人(ドワーフ) 用のトイレ利用は拒否されるので注意が必要です。
こっちの部屋にも 巣箱(ケージ) を設置したのでアンディーには使い心地を確認してもらいがてら部屋で留守番をしていてもらう。校長室に連れて行く勇気は無いのです。
「あの校長先生、ハーレー=ポーターさんと打ち合わせをする必要があると言われたんですけど、ハーレー=ポーターさんに都合の良い日を教えてもらいたいと伝えてもらえますか? ボクは二の週からなら大丈夫です」
「ハーレー=ポーターと打ち合わせとは、ミーシャ=ニイトラックバーグも大変だな。まぁ、発案が多ければ説明やら共同開発やらで呼び出しが増えるから仕方ないとも言えるが」
「ハーレー=ポーターさんが開発に回ったんですか?」
「そりゃぁもう目の色を変えて興奮していたよ。卒業までに完成させると息巻いていたからね」
「そうなんですね。ところで コ(・) レ(・) の件はどうなりましたか?」
俺は右手の親指と人差し指でL字を作り、パンと銃を打つ仕草をする。そう、輪ゴム問題の件です。防音の魔導具が稼働しているか分からないので、そんな時はボディーランゲージっすよ。
「あ、それはだ……、今、防音の魔導具を稼働させた。その件は開発陣が血相を変えて仕様変更をしている。年内には含浸液の成分が変更されるそうなので、そのバージョンになれば危険度も減るハズだから、まぁ大丈夫だろう」
「良かったですね」
「全くもってだ。ミーシャ=ニイトラックバーグの指摘が無ければ大変なことになるところだったと皆が感謝していた」
「具体的にはどんな変更が入るんですか?」
「チューブワームの含浸処理で『 履筒(タイヤ) 』化するにあたり、以前よりも伸びにくくする代わりに厚みを増やす事になった。それにより振動軽減が強化され馬車の乗り心地が上方修正された。また、輪切りにした物も一定以上引き伸ばすと伸縮性が低下する様に変更された」
「短期間で凄いです」
「十年もしたら『 履筒(タイヤ) 』を薄くし、伸縮性を高めようとする者がヒト族側に現れるだろうが、その間に【 伸縮環(エラス・リング) 】の研究を進め、対 指弩弓(フィンガー・カタパルト) 対策も継続される。我々は悲劇的な事は起きないと信じている。その為にも『 履筒(タイヤ) 』に関する利益の一部は研究費に使われることが決定したよ」
折角だから乾燥 木賊(とくさ) を大量に買い込んでから学園の寮に戻ることにした。