軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第279話

「ガルシア葱か……」

支部長さんまでそこに食い付いちゃうんですか、そうですか。

「支部長さんも召し上がってください」

「ではいただこう。詳しい説明は後でホーク=エーツから聞くよ」

支部長さんが試食している間、わらび餅を確認する。パイク=ラックさんにもう一回桶の水を冷やしてもらったら完成かな。

「ミーシャが 三毛皇(みけおう) 閣下に献上するということじゃったので手配しておいたのじゃ。この容器に詰めて渡せばよかろう」

「ありがとうございます。これは?」

パッと見では白いホウロウ製の容器なんだけど。サイズは二十センチメートル四方で高さが十センチメートルほど。雪のマークの付いたバターが三つくらい入る感じ?

「これはエマイ仕上げの容器じゃよ。鉄の箱にガラスを掛けて仕上げたものじゃな」

「それは良く冷えるし、酸味のある物が入っても錆びたりしなくていいですね」

「そうなのじゃよ」

ホウロウ容器で確定だった。折角なので手とホウロウ容器を洗い、更に『汎用魔法』 JSS(浄化・清浄・殺菌) トリプルコンボを掛ける。濡らした手でわらび餅を千切りホウロウ容器の中に並べていく。若干余ったので、それは鍋に残しておいた。もう一度わらび餅に『浄化』と『殺菌』をかけて蓋をしたらわらび餅は完成。蒲焼きのタレを作る時に一緒に作っておいたみたらしのタレはポーション瓶に詰めてある。もちろん『浄化』と『殺菌』済みね。

「ミスリルに魔導ガラスを掛けた魔導エマイというものもあるのじゃがな…、それを使うよりなら時間停止のマジックバッグを使った方が安上がりじゃよ」

特殊容器があることだけは覚えておこう。

「それ、気になる…」

「あっ、食べてみて下さい。材料はデンプンと水です。このタレを付けて食べます」

「タレ焼きのタレなのか?」

「ちょっと配合比率が違いますが、材料は一緒……いや、お酒は使ってないです」

「これは…不思議な食感だね」

「【 水母(プルモ) 】とは違うな」

「ぷるぷるでスライムさんみたいです」

「デンプンにはまだ新しい引き出しというか可能性があるのか」

「ミーシャ=ニイトラックバーグ、この食べ物の名前は何と言うのかね?」

「デンプン餅…いやカルトープンのプディングでしょうか?」

「も…ち?」

「こう手にくっついて 持(・) ち(・) 上がるので…」

何度目だ、この苦しいネーミングシリーズは。

「カルトープンはドワーフ領だと伝わりにくいな」

「ドワーフ領だとデンプンですからね」

「食べ物の名前にスライムを付けるとイメージがなぁ」

「拭き草の茎並みにイメージが悪い」

「まだ【 水母(プルモ) 】の方がいいか…」

「プルモッチはだめですか?」

「アッシュちゃん、プルモッチって?」

「【 水母(プルモ) 】みたいで、ぷるぷるで持ち上がるのを合体してみました」

「確かに間違ってはいないな」

「その名で良いかもしれないな。下手にスライムを連想させるより先に【 水母(プルモ) 】を意識させた方が悪いイメージを持たれないだろう」

「では【プルモッチ】で仮登録しておきます。ヒト族向けのネーミングで【カルトープディング】も残しておきますか」

「じぃじ、食べる時にはお髭に注意ですよ」

アッシュちゃん、ナイスネーミング!! でも 三毛皇(みけおう) さんに渡す紙には蕨餅とみたらしのタレって書いたけどね。わらび餅を渡すことを決めた時に表紙を作っておいた訳ですよ。そこにワラビっぽい山菜の絵を描いてみたけど、ワラビじゃなくてゼンマイになってしまったので描き直した。ついグルグル巻いてる山菜を描いてしまったけど、グルグルしてるのはゼンマイだった。ワラビは先端がハート型っぽかったよ。参考資料は食べられる野草の本。普通に図書室やギルドの資料室に置いてあったよ。そう言えば最新情報として拭き草の茎が追加されていたな。

「前回の【蛇魚】のタレ焼きだけでなく、他の類似魚も美味しく食べられる事が判明した。そして先日報告された特殊形状の包丁、それが【蛇魚】類を捌くのに適している事も確認出来た。ガルフ=トング、新しい包丁の登録だな。おめでとう」

「いえ、俺単独の仕事ではないので。ミーシャの案をリンド=バーグと共に形にしただけですよ」

「いや、俺だとその包丁で完成させられなかったな」

「そんな訳ないだろ?」

「出来なくはないだろうが、こんな短時間では物に出来なかったな」

「支部長、三人の力がこの包丁を生み出したんだ」

「ボクは何もしてないですよ」

「いやいや、ミーシャが居ないとこの包丁も料理も完成していない」

「支部長、登録が完了した後、いつから売り出しますか?」

「【粗相豆】ありきだから、使者として依頼したオロール=ダフネ=オベール女史が戻ってきてからだ」

「それとは違うのですが、【 強情菊(ゴンボ) 】の種の手配もお願い出来ますでしょうか?」

「【 強情菊(ゴンボ) 】かね?」

「そこの細切り炒めが【 強情菊(ゴンボ) の根】と【食用マンドラゴラ】で作られています。【 川底小枝(ヤナガー) 】の卵とじにも入っていますね」

「つまり、【粗相豆】と相性が良いという事か。検討しよう。今の価格はいくらかね?」

「一本銀貨五枚です」

「量を頼めば安くはなるか。そして栽培を試みると」

「ちょっと、ミーシャちゃん、その【 強情菊(ゴンボ) の根】ってそんなにしたの!?」

「はい。【 川底小枝(ヤナガー) 】の卵とじにどうしても入れたかったので」

「え〜〜」「ミーシャらしいな」「変!!」「クックックッ…」

ゴボウのせいで呆れられたり笑われたしつつもしたけど、無事に二回目の試食会も修了した。そしてそれはガルフ=トングさんとの別れが近づいているという事でもあった。