軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第266話

【 水母(プルモ) 】シートといい、【クラーゲン】シートといい、前世と微妙に似た素材は存在するんだな。魔物由来の素材って辺りが異世界だけど。ガラスだってケイ素系の鉱石由来または土魔法経由の物もあれば魔石滓から作る魔導ガラスもある。色ガラスが有るのかはよく分からないけど。今度ラルフロ=レーンさんに質問してみよう。

なぜそんな話になるかというと、先日の大会議で取り上げられた様々な発明品や新素材、発案品が玄関ロビーに陳列されているからだ。玄関ロビーには置ききれないのか食堂前の談話ロビーにも置かれているけど。まぁ、食品系は食堂前の談話ロビーに置いてある。俺にとってはよく見知った品…というかなんというか。苦笑いするしかないやつだね。

いや、俺関連の登録品も玄関ロビーに置いてある。【鉱夫飴】と拭き草の茎だ。これは産業プロジェクトになっちゃうからだな。冷やしエールの件は伏せられているけど、たぶん酒関係なので秘密にしているだけだろう。もしかしたら学園の方に展示されているかもしれない。

一番の目玉商品というか大発明品はチューブワームから作られた【 履筒(タイヤ) 】だ。これを前世の自転車のゴムタイヤみたいに車輪のフレームに履かせて使う。今はまだ馬車の車輪用という事で細身のタイヤチューブだけど、ゆくゆくは太い物が作られるのだろう。当たり前だけど【 履筒(タイヤ) 】を製作して商用運用していく為には様々な業種の職人さんが必要な訳だ。錬金術師や魔導師の力も必要な本当に大掛りな産業なので、どう分業していくかを決めるところから始めなきゃいけないのだと説明書きにあった。まぁ飴と茎も同じ様な感じなんだけどね。決定的に違うのは、【 履筒(タイヤ) 】はブレイズ=ストーンさんという個人の登録品だという事かな。飴と茎…というか俺の発案品は登録者名を出してないもんね。

この三点が玄関ロビーに置いてあるのは、一つの発明・発案品が様々な仕事を生じさせ、雇用や販売網など多岐にわたる影響力を与える良い見本という事らしい。飴は原料である 白い粉(デンプン) が無ければ作ることは出来ないんだけど、白い粉は食堂ロビーの方に置いてある。実はこれはトラップらしく、白い粉の重要性に気付けるかを試している模様。

俺の登録なんか前世の知識をそのまま流用しているだけなので、何ともお恥ずかしい限りなのだが…。

チューブワームというのは魔物というか魔獣の一種で、スライム等と同じく知能を持たないとされる区分に属する生物の一種だ。環形動物で通常は地中や水中に棲息している。野生もいるし飼育も可能。中空なので内臓を排除してやるとホースみたいに使える。タイヤになる前は給水ホースやポーションを瓶に詰める時などで使われていたので新素材という程の物ではなかった。油分にも強いので油の計り売りの時にも重宝されている。特殊な技法で両端を繋げ、中に空気を詰める事によりタイヤ状にする事が出来たんだって。チューブワームのサイズで太さも変わるので、そこは飼育員次第。そしてチューブワームを輪切りにすると前世の輪ゴムみたいな物体になる。タイヤの余りで作れるからわざわざチューブワームを丸々一匹用意する必要もなかった。

で、【 伸縮環(エラス・リング) 】って名前がこの世界での輪ゴムって事になったみたいだ。スライスワームとかよりずっといい。俺なら多分スライスワームって名前にしてるわ。この【 伸縮環(エラス・リング) 】は髭エクステの取り付け部分に使われている。着色も簡単みたいでエクステの髭色と揃えたり逆にアクセントに使ったりされている。流通量が増えたら葉物野菜の茎を束ねたりするんだろうな。大葉の茎を纒めるサイズとかも出来るかな?

そして輪ゴムと言えば親指と人差指で横L字の鉄砲にしてそこに輪ゴムを引っ掛けてパンッと撃ち出す遊びをしたくなるのは俺だけか? 大して攻撃力も無いけど飛ばしたくなる、あるある。という訳で、異世界でもついつい輪ゴム指鉄砲をしてしまった。

【 伸縮環(エラス・リング) 】がペチッと情けなく壁に当たって床に落ちる。そして俺が床から【 伸縮環(エラス・リング) 】を拾い上げたその時、「ミーシャ=ニイトラックバーグ、校長室に行こうか…」という声の主に肩を叩かれたのだった。

ーーーーーー

「先程のアレは何かね?」

「校長先生、指弾モドキです。【 伸縮環(エラス・リング) 】を引っ掛けて飛ばすだけの単純な遊びです」

指弾というのはデコピンというか親指と人差指、もしくは親指と中指で輪を作りピンッと弾く動作の事。汚い表現だとハナクソほじってピッと飛ばすあの動作ともいう。小石や種なんかを弾き飛ばすのが普通だけど、土魔法と組み合わせると簡単に弾を作り出すことが可能。指弾はスキルが無くても使える。いや、ちゃんとスキル化も出来るけどね。そんな便利な動作だけど戦闘スキルとして人気がないのは親指を含む二指を使う為に武器を使いながらでは使い辛い事と、素手で放つと数発で指先が痛くなるのが原因だった。ガントレットみたいなアーマーを装備していると弾き辛いし、革手袋も特定の指先だけ劣化が激しくなるので嫌厭される。暗殺者ギルドのメンバーなんかだと目潰し攻撃の為に練習させられているみたいだけど。ただ、握手をしたり指先を見たら分かるのだとか。それで暗殺者バレするのはちょっとねぇ……。

「魔法やスキルは?」

「使っていません。飛ばす力は【 伸縮環(エラス・リング) 】の伸縮性のみです」

「あの指の形は魔法の為ではないと」

「はい。【 伸縮環(エラス・リング) 】を引っ掛けやすい形状なのと、後は…撃ち出す方向を示しているだけです」

流石に銃を表現したとは言えない。なので指鉄砲とは言わずに指弾と言って誤魔化す事にしたのだけども。

「単純な物理攻撃ということか。ならば 付与(エンチャント) が可能……。魔力無しの物理攻撃という事は……」

校長先生が何やらブツブツ言ってる。ちょっと待って、輪ゴムの指鉄砲にエンチャントするとか言ってないか?

「ミーシャ=ニイトラックバーグ、今から学園に行こう」

「今からですか!?」

「今すぐにだ」

何故だ!! 輪ゴムを飛ばしただけなのに!!