軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第265.5話 (閑話)

ここは『ネオ=ラグーン』領都『ネオラグーン』。近隣のドワーフ領のほか、エルフの多く住む『ロング=フィールド』領経由の亜人や、様々な地域から商品を求めてやって来るヒト族の姿もそれなりに見る大都市だ。

俺は『ネオ=ラグーン』領内を回って歩く 商人(あきんど) や。あんまり商才もあらへんねん。そんなんでヒト族の領内なんかには行かれまへんのや。あかんあかん、ヒト族が相手やと髭どころか尻の毛まで毟られてまう……。今回は『スリーストライプ』から小間物仕入れての〜んびりやって来たんやで。ほんで『ネオラグーン』に着いたさかい、納品終えたら次の仕事をもらわな。簡単な仕事ならええんやけどね。それだと儲からへんか…。

「ガトー=リングさんお久し振りですね。もうかりまっか?」

「ボチボチでんなぁ…。今なにしてん?」

「俺は指定素材を採取してますよ。ホーンラビットが後二匹ですかね」

「何か 面白(おもろ) い依頼とかあらへん?」

「面白いかどうかは分かりませんが、【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓の採取・運送依頼が何件か有りましたね」

「せや、こないだ大会議があったんやったな」

「僕達のパーティーは護衛任務に呼ばれたよ」

「おや、『 坑道漢(こうどうかん) 』さん所属のエディー=ポンドさんじゃないですか」

「バーバ=リーさんは基本ソロだっけ?」

「ええ。なので大会議の護衛には呼ばれませんでしたよ」

『ネオラグーン』の冒険者ギルドの隣には大きな食堂がある。美味しい料理が人気の店…というよりは情報交換の場という方が正しい。肉料理とタップリのエールが人気の食堂だ。

「何か 面白(おもろ) い話、聞かせてーな。別に怖い話でもヤバい話でもええねんけど」

「では…百物語でもしますか?」

「百物語って、今ここに百人おらへんって」

「人の儲け話とか色恋沙汰を聞いてもクソっ…ってなるだけだからね。怖い話でいいんじゃない?」

「誰から行くん?」

「では僕から……」

「これは知り合いの冒険者パーティーから聞いた話なんですけどね……」

とある商人が山道を歩いていたんですよ。険しい山道すぎてポニーも連れてこられないので仕方なく徒歩で。峠に差し掛かる頃に避難小屋ってあるでしょ? 運がいいのか悪いのか夕方になる少し前で、夏だったので峠を越えて下った先の避難小屋で夜を明かそうと頑張ったわけですよ。で、その商人は避難小屋で水を飲み、手持ちの【パーシモン・シード】を何粒か食べてから出た訳ですよ。そうして何とか峠を越え、日も落ちてそろそろ歩くのを止めたくなった頃、無事に目的の避難小屋に着いた…と。

そして避難小屋に入り、荷を降ろし椅子に腰を落とした時に商人は気付いてしまったんです。

ゴミ箱の中に “ さっき食べた【パーシモン・シード】の殻がある…… ” という事に。

多分、ナイトメアに騙されたに違いない…って事にしたそうですけどね。その商人、【パーシモン・シード】の殻がある避難小屋で一夜を明かし、翌日無事に山を下りることが出来ましたがね、その後何度その峠を通っても普通に通過出来たっていうのでアレは一体何だったのか………

「以上。峠のナイトメアの話ね」

「うわっ、何処の峠だよ…」

「そこ通るの嫌やわー」

「じゃあ、俺の番だな。これは俺が『スワロー』近くの簡易宿泊施設を利用した時の話なんだけど…」

あの日は珍しく混んでいる日で、ポニーも居れば馬車も有る、そんな何時になく賑やかな簡易宿泊施設で、俺はソロな事もあるから野外でもいいか…って思って外にいた訳よ。勿論、全員ドワーフだから警戒することも無いからなんだけどな。

そうしたらそこにいた四人組の一人がだよ、拭き草を刈りに行ってた訳よ。準備が悪いのか途中でハライタでも起して拭き紙が足りなくなったのか…。髪型がツインテールだったからあれは女性だな。まぁ女性だと拭き紙も沢山使うからなぁ…って思って見てた訳だな。簡易宿泊施設にある拭き紙と交換で拭き草を渡せばいいから俺もよく交換するけど。まぁ、それはいいんだけど。

そのうち、そのツインテールのドワーフの仲間が竃を作った。火を起こし土魔法で土鍋を作って湯を沸かし始めた。混み合ってるから中のパッとしない食事より手持ちの飯でも食うのかな…? って思うだろ? そうしたらだ、ツインテールのドワーフが拭き草の茎を湯気の上がる土鍋に入れたんだよ。拭き草の茎だぞ!!

数分後、茹で上がった拭き草の茎を水洗いして……そいつら茎を喰い始めたんだよ!!!!

どんだけ糧食切らしてるんだって…。普通なら金出して簡易宿泊施設のクソも美味くない飯を食うだろ? そいつら食わないんだよ……食ってるのは茹でた拭き草の茎。

俺さぁ、ヤベー奴が居る…っていうんで外で寝るの止めたんだ。かといって夜中にソロで動く勇気もないからな。朝まで気を張ってロクに寝れないまま夜明け前に出発した。外にそいつらの馬車が有ったからすぐ逃げた。それから『ビレッジアップ』に向かったけど、マジで総毛立った。髭が立つってああ言う事なんだな……。

「以上。 “ 恐怖! 拭き草を喰うドワーフ ” の話だ」

「マジで!?」

「それ、人としてあかんがな」

「ナイトメアも怖いけど、拭き草女も怖過ぎるだろ!!」

「最後は俺やな。これは知ってる 商人(あきんど) から又聞きした話なんやけど……」

なんぞメッチャ熱っつ〜い食べ 物(モン) を食わされてな、口ん中がベロンベロンに火傷しはったんやて。その後に状態回復薬を飲まされて火傷は治ったんやけど、また同じメッチャ熱っつ〜い食べ 物(モン) を食わされとんねん。で、また状態回復薬を飲まされてな……、そんなんのを何度も繰り返えさせられたって言うてたわ。美味いんやけど何や拷問チックやったって。

「以上」

「それ、怖いか?」

「何や、怖いやろ。口ん中ベロンベロンになるんやで。回復薬がいつ切れるか…って思ったら怖いわ」

「で、一番怖かった話は?」

「ガトー=リングの話は駄目だな」

「何でやねん!!」

「ナイトメアは近くの峠じゃないだろうな」

―――――――

ちょっ、なんや、拭き草を喰らうツインテールのドワーフって……どう考えてもミーシャはんやろ!! 怖っ!! こないな場所で知り合いの黒歴史聞かされるの怖っっ!! しかも百物語にされてんで………。ちょいまちーな、そのメッチャ熱っつ〜い食べ 物(モン) と回復薬の話、多分【 鉱滓(スラグ) 包み】とホークの話!! それ百物語ちゃうわ!!

でもな、もうすぐ拭き草の茎は巷に出回んねん。 どや、怖いやろ。