軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第261話

職校は授業のレポートを出す必要は無いのだけど、学んだことを自分なりに纏めておかないと折角学んだことが訳がわからなくなってしまうので時々は授業に行かず “ ノートに纒める日 ” を設ける事にした。いくら俺のチート能力『 知識保管庫(アーカイブ) 』さんが仕事をしてくれるとはいえ、パパッと複数の知識は引き出せないしな。そんな事のできる並列思考は持ち合わせていないし、第一、人様に何かしら説明する時に段取り良く説明出来ないって。それでも『 知識保管庫(アーカイブ) 』のお陰でちょっとした事を忘れる前にノート化出来るのは有り難いです。

逆に学園ではノート提出やちょっとした試験があるので注意が必要だな。

という訳で、今日は授業も作業もサボ…いや自習日です。鍛冶の作業場は覗きに行くけど。針製作の前に顔出しだけでも……と思って朝イチで挨拶に行ったら鍛冶の講師に捕まった。

「針の製作実習は十一の月になってからだぞ」

「今日は実習日の確認と挨拶とにで来ただけで…」

「丁度いい、時間が有るなら混ざっていけ。炉が暖まるまでもう少し時間がかかるんだがな」

「はい…、ワカリマシタ」

「今日は他に実習に行くのか?」

「いえ、今日はノートをまとめようと思っていたので自習日です」

「なら丁度いい。さーて、五年生以下のヒヨッコ共集まれ!!」

「ハイッ!!」✕七

七名が講師の前に集まってくる。

「その中で三年生以下のタマゴは何人いる?」

「ハイッ」「はい」

「ミーシャ=ニイトラックバーグ込みで三人だな。はい自己紹介だ」

「職校二年目のクリフ=トーファです」

「春に入校したローザ=リオールです」

「今月入校したばかりのミーシャ=ニイトラックバーグです」

「そして俺の事はヴォルド親方と呼ぶように。 大(おお) 鍛冶師の方はグレッグ親方だから間違うなよ」

鍛冶師講師は親方呼びなんだ。

「ミーシャは鍛冶スキルは持ってたか?」

鍛冶という仕事に直結しているであろうスキルは『鍛冶(初歩)』 『砥石知識』 『研磨の心得』 だな。単純に『鍛冶(初歩)』だけ答えたらいいだろう。『採掘』は材料調達系だから厳密には関係なくはないのだろうけど。大体、鉱山を掘りに行かない鍛冶師は普通にゴロゴロいる。

「はい。『鍛冶(初歩)』を持ってます」

「クリフとローザは当然『鍛冶(初歩)』は覚えてるな?」

「はい」

「よし。今日はこれで作ってもらおうか」

ヴォルド親方が長さの短いアスパラガスの様な四角い釘状の物体を材料置き場から引っ張り出してきた。ちょっと鉄道の線路に使う犬釘を思い出した。

「これは何だか分かるか?」

「釘ですか?」

「 楔(くさび) ではないよね」

「センターポンチっぽい気もします」

「これは鉱山用の 鏨(たがね) だ。石の切り出しにも使ってるな。だいぶ先が潰れているが。今日はこれでスプーンを作ってもらう」

「スプーン!?」

「そうだ、スプーンだ。一回お前らの体についた変なクセをリセットしてもらおうと思う」

ヴォルド親方が言うには、ドワーフは子供の頃から釘で遊んだりして鍛冶スキルを身に付け独学でナイフ等を作っていることが多いので、それを矯正する為にスプーンやバターナイフの様な刃の無い道具を作らせるのだという。

「ヴォルド親方、規格はありますか?」

「普段食堂で使っているスプーンと同じ物を作ってもらいたい」

「あれですか?」

「そうだ。食堂のスプーンを始め、フォークや皿といった食器類は鍛冶の実習で作っている。五年目を過ぎたら汁椀やコップ類も打ち出しで作ってもらっている。勿論、鋳物で鍋なんかも作らせるぞ」

「スプーンって板を切り出して成形じゃなかったんだね」

「それだと授業にならねぇだろ? そんなオママゴトはヒト族にやらせておけ。そろそろ炉も暖まったか? 最初は炉に 鏨(たがね) を入れて鉄を 焼鈍(やきなま) すところからだ」

炉に入れた鉄が赤くなったら火挟みで掴み出し、ゆっくりと冷ましてやる。色が落ち着いてきて冷えた様に見えててもそうそう直ぐには冷めてはいないものなので素手で触るときは注意が必要だ。

「この時に聞こえた音でどれくらい鉄が暖まっていたかが分かるからちゃんと聞く様にしろよ。足りなさそうなら無理に叩かずにもう一回 焼鈍(やきなま) しした方が間違いないな」

チンチン ピンッ キッ… 等と違う音がするのだと言うが、その擬音を口で真似されても聞いたことがないので今ひとつピンとこない。それでも先輩達がウンウンと頷いているからそんな聞こえ方なんだろう。

作るスプーンは、柄は平たくして液体を掬う『つぼ』という箇所は親指と人差指で楕円を作った大きさより気持ち大きい程度。長さは全長が二十センチメートルくらいかな。前世だったらカレーライスを食べる時のスプーンと言えばイメージが伝わるか。

一.五センチメートル弱四方、長さ十五センチメートル程の鉄材を叩いて伸ばしながらも先端は平たくしていかなきゃならない。厚みを程よくしたら長さが余りそうな予感。悩みながらも鉄を叩き時々炉に入れて 焼鈍(やきなま) してやる。

段々スプーンの様な形になってきた時に気付いた。これ、どう考えても厚い。薄さを求めたらサイズオーバーする。カレーライス用じゃなくてサラダを取る用もしくはスープをサーブするレードルになってしまう。

「ヴォルド親方、このままだとスプーンがサイズオーバーしちゃうんですけど…」

「私も……」

「気にしなくていいぞ…ってミーシャのはだいぶデカいな。デカい 鏨(たがね) が渡ったな。さて、どうしたい?」

「ボクは規格サイズに近付けたいです。でも厚くなりすぎて使い辛いのも嫌です。ヴォルド親方、これって長すぎる箇所を切ってもいいんですか?」

「まぁ、普通はそう考えるな。もし俺が駄目だと言ったら?」

「食堂規格からは外れますが、柄を中空にするとかで対処するしかないのかなぁ…」

「今回はどれくらいの材料が有れば希望のサイズが作れるか知らない状態で作ったからそうなるな。鉄なんかだとサイズオーバーしそうなら切って端材を出しても問題は無いが、特殊鋼材、オリハルコンとかアダマンタイトを含む合金とかだとそうもいかなかったりするので、作業前に実寸のデザイン画を描いて素材の必要量の計算をしておく事が大切だ。今回は切って調整してもいいぞ」

別にヴォルド親方に素材で意地悪されていた訳ではなかった…。