作品タイトル不明
第256話
炭焼き用の木は本来なら二十日程乾かしてあげた方がいいのだけど、カリキュラムの関係で数日干してからスキルで水分調整するとのこと。まぁ、入門というかお試しコースだからね。太い木は割って太さを揃える。炭焼き窯に入る様に長さも整えるんだけど、天地を間違わないように根元側に印を付けておく様に言われた。窯に詰める時に根元側が上になるように詰めていくのでパッと見でも分かりやすいようにチョークで印付けをする。慣れると見ただけでどちらが根元側か分かるそうだけど。勿論、鑑定すればどちらが根元側かは簡単に分かることなのではあるが、わざわざ鑑定する程のレベルではないので鑑定する必要は無いと言われたけどね。むしろ、炭にする木の水分量を均一にしておく方が大事だったよ。
初心者向けコースで使う炭焼き窯は中程度のサイズで、そのせいもあって高品質の炭は少ししか取れない。講師曰く、「窯の中心に置いた木が高品質の炭になるからな。質の良い木はそこに来るように詰めろ」だった。壁側や天井側、入り口側は低〜並の品種になるので詰める時は細い木を配置してやる。出来た炭は自分たちで使うか各種ギルドに売りに行くか。間違っても鍛冶師の皆さんの手元には渡らない。本当にアウトな品質の炭は砕いてから練炭に再生するか黒スライムの餌になる運命。
という訳で、受講生全員でスキルの使用無しで薪割りをしています。一回はスキルの恩恵を受けずに作業することが職校のルール。スキルが有れば作業内容にもよるけどセミオートで作業が出来たりもする。薪割りなんかはセミオート作業に含まれる。ただ、セミオート作業にも罠があって、均一に作業出来る代わりに素材の個性を活かすとかサイズ違いを微調整するとかは苦手。最終的に熟練工の手作業は大事だって事だな。
「スキルやゴーレムが作業を完璧にこなせるんなら、我々職人は失業するハズだろう? そんな事もなく仕事の依頼が来るって事はだ、知識は頭に、技術は手に着けておけば問題無いって事だ。その二つは誰にも取り上げられないからな。ちゃ〜んと後進に伝えたら、全部あの世に持って行っていいぞ」
それは俺が一番実感している。前世で培った技術や脳に残っている知識はこっちでも役に立っているからね。ヒト族なんかだとスキルや 職業(クラス) に溺れる者も相当数いるって言うからなぁ…。
「先生、大型窯だと取り出しは熱くないんですか?」
「そりゃあ当然熱いぞ。炭焼きゴーレムという炭焼き補助に特化したゴーレムが開発されていて、それを大型の炭焼き窯に配備している。危険な作業や連続作業で速度が要求される時はゴーレムに働いてもらっている。尤も僻地でゴーレムが配備出来ない場合は人力だな」
「焼け具合の判断はゴーレムは分かるんですか?」
「残念ながらそれはゴーレムだと判定出来ないんだ。煙の色とか臭いとか窯から発する音とかは職人の勘に頼るしかない。鑑定スキルでも完全には判定出来ないから、正直なところ数をこなすしかないな…」
「そうなんだ…残念」
「ゴーレムや鑑定スキルが一定基準で仕事をしてくれたとしてもだな、使う材料は均一ではないんだ。そこで仕上がりや完成度に差というかムラが出て来る。それも結構な品質差が出る。だけど何故か職人の見極めだとその差が小さくなるんだよ。錬金術ギルドや魔道具師の目標はそこを職人レベルに近付ける事だし、俺達職人は追い付かれない様に技術力を上げ続けるだけだ」
そんな話を聞かされたからなのか、皆の薪割りをする手に力が籠もる。
「先生、薪割りのスキルって本当に有るんですかー?」
「有るぞ。なかなか生えてこないけどな」
「薪割りスキルって生えても役に立たなくない?」
「だから、薪割りに使えるスキルを引っ張ってこい」
「製材とかですか?」
「極端だな…。まぁ製材は使えなくはない。薪割りには使いづらいけどな」
「え〜〜」
「そうだな、皆考えておけよ。二回目の実習の時は見つけたスキルを使って薪割りしていいからな」
変な宿題が出たぞ。直接関係しなさそうなスキルを利用してみろって事だな。『身体強化』とか『解体』って事? 尤も今日の作業では使えない訳だけど。
ナタの刃を丸太に当てコンコンと打ち込み、裂け目に沿ってそのまま垂直方向にナタを下ろしていく。やり方が悪いのか結構体力を使うんだよなぁ…。たまに刃が食い込んだまま動かなくなるし。土台代わりの切り株に木を叩きつける時にコンコンコンと響く音にリズムを付け、単調な作業をいかに飽きずに進めるかを考える。
コンコンコン コンコンコン コンコン (♪ 放題(ほうでー) ……)
それは前世で聞いていた、量販店『購入 放題(ほうでー) 』さんのの店内BGMだよ…… 『購入 放題(ほうでー) 』さん、お世話になったよなぁ……。 放題(ほうでー) 、ほうでー、 『 鈍器峰釘(ドンキホウテイ) 』!? いや、ナタは武器なら刃物カテゴリー。鈍器の修正は入らない。
「ヤベっ、刃が食い込んだ」
「叩け、叩け」
「叩くってどこだよ!?」
「柄を叩け。上手く行けば割れるから」
「割れねえって、叩いた俺の手が痛いって!!」
あっ………!! 石か木槌か何かでナタの柄を叩けば鈍器での攻撃判定になるんじゃ……? もしかしたら『 鈍器峰釘(ドンキホウテイ) 』の修正が入るかもしれないぞ。だとしたら『 粉砕乙女(クラッシュギャルズ) 』分も入るかもしれないな。