軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第255話

「じいじ、わたしとミーシャねえねの作ったサラダです」

「アッシュ、ミーシャ、ありがとうな。それではワートで乾杯じゃ」

「乾杯/かんぱーい」

「冷たいワート、美味しいです」

家によっては髭が生え出したらエールの一杯くらいは解禁だったりするみたいだけど、パイク=ラックさんの家では許可していない模様。前世風に表現したら “ お酒はお髭が生えてから ” って感じか?

「じいじは凄く大人なのでエールを飲んでも怒られませんよ」

「そうじゃな。じゃが、せっかくアッシュとミーシャが作ってくれた料理なんじゃ。儂はアッシュと同じ物を楽しみたいんじゃよ」

「そうなのですか?」

「そうじゃよ」

「じいじ、ポタージュは熱いうちが美味しいですよ」

微笑ましいやりとりを眺めながら甘いワートを飲む。これはこれで癒されるな。

「ミーシャねえね、このカリカリした物はなんですか?」

「これはクルトン。パンを刻んでから乾かして作ってみたんだ。ポタージュに浮かべてもいいし、サラダに乗せてもいいかなー? …って」

「歯ごたえがアクセントになってよいのう……、あいたたた」

あ、クルトンが口の中に刺さったかも。あれ、硬いからたまに角が刺さるんだよなぁ…。

「玉子がふしぎな感じです。白身はドロドロなのに黄身はドロドロしてないです」

「好き好きはありそうじゃが、面白い仕上がりじゃ」

「今日はサラダに乗せてみましたが、パスタに乗せてもいいかと思います」

「これは蝋が溶ける温度で加熱した結果かのう?」

「はいそうです」

「わたしはお花みたいな玉子が好きです…マヨネーズと合わせてパンに乗せてみました」

「【 緋(あか) 茄子】の中身をくり抜いて、それを詰めてもいいんじゃないかな?」

「じいじ、こんど作ってみるので食べてください」

「それは楽しみじゃ」

う〜ん、温泉玉子は好き好きがあるか…。次はカスタードクリームでリベンジしてやる。

「ミーシャ、アッシュ、お昼が済んだら儂と出掛けようか?」

「じいじとお出掛け、嬉しいです」

で、連れてこられた場所が商業ギルドなんだけど………。よりによって こ(・) こ(・) かよ。

「じいじ、お仕事ですか?」

「今日はアッシュの仮登録をしておこうと思ってな、遅かれ早かれ登録は必要じゃろうて」

「おや、パイク=ラックさん、今日は何かご用でしたか?」

「副支部長、今日は儂の孫娘の仮登録をしようと思うてな」

「仮登録ですか?」

「孫娘はそこにいるミーシャに料理を教わってるからのぅ、いつ何が飛び出すか分からんじゃろう?」

「ははははは、そうですな。そういう 理由(わけ) でしたか」

「ボクのせいですか?」

「そうじゃよ。現に今日も……」

「お花サラダとふしぎ玉子です。カリカリもありました」

「お嬢ちゃん、ギルドのおじさんにお名前を教えてくれるかな?」

「アッシュ=ラックです。よろしくお願いします」

「アッシュ=ラックさん、商業ギルドにようこそ。そのお花サラダとふしぎ玉子とカリカリのお話を聞かせてもらってもいいかな?」

「はい。お花サラダは茹で玉子をギューッとしてお花が咲いたみたいにして……」

商業ギルドは基本、年中無休だ。という訳で奥の方からホーク=エーツさんが姿を現す。どうやら俺が職校に行きだしてからは五の日と十の日が登録的に危険という事で、シフト変更していたよ。

「ミーシャ=ニイトラックバーグの隣にパイク=ラックが居るという事は……、又か?」

「どうじゃろうな? そちらに判断してもらわんとのぅ…」

「今日は道具ですか? 食べ物ですか?」

「食べ物じゃな」

「アッシュ=ラックさん、お話ししてくれてありがとう」

「どういたしまして」

「ホーク=エーツ、どう思ったかね?」

「思うも何も、現物が見てみたいですよ。十中八九、要報告で登録は必要そうですね」

「そして、【シュパー】と【バーサーカッター】が髭無しでも簡単に使える事が立証された様だが」

「副支部長、落ち着いて下さい。立証も何も一件だけですよ…」

聞き慣れた遣り取りの後、副支部長さんがアッシュちゃんに仮登録証を渡している。

「はい、これがアッシュ=ラックさんの仮登録証だよ。まだ『キーボックス』は覚えてないかな? 無くしたら大変だからね、覚えるまではお爺ちゃんに預かってもらうんだよ」

「はーい。ギルドのおじちゃん、ありがとうございます。じいじ預かってください」

「ミーシャの料理じゃが、アッシュの説明で分かったかのう?」

「それなりには理解できましたよ。尤も、ふしぎ玉子は現物を見てみない事には…」

「どうじゃったかね?」

「お孫さん、早くもアレンジを考えてましたね。ところで十の日は【蛇魚】の件で施設を使われるとの事ですが、もし差し支えなければそのふしぎ玉子とやらの実演をして頂けませんか?」

「ミーシャ、だそうじゃ」

「えっ、ボクは構いませんが道具が…」

「ここなら常備されとるじゃろうて。副支部長、エールの保温の魔道具は有ったかのぅ?」

「有りますがそれが何が?」

「不思議玉子はその保温の魔道具を使うと作るのが楽なんじゃよ」

まさか、【蛇魚】の仲間を捌く実験に温泉玉子の実演が割り込みしようとは……だったらいっそ、う巻きでも作ってみるか?

「ミーシャ=ニイトラックバーグ、十の日は今日作った料理をもう一度作ってもらいたい。検証なので材料は全て商業ギルド側で準備する。従って前日の九の日の昼までに一度、商業ギルドに来てもらいたい」

「はい、分かりました」

「その時までに届いた魚も見てもらい、必要な食材があれば手配させる」

「分かりました。【粗相豆】は必ず使うので多目にお願いします。後、【痺葡萄】って手に入りますか? 乾燥させた物を粉末にして使いたくて……」

「若干季節外れだが何とかしよう」

「乾燥させて皮のみ挽いて粉末で五グラーム程あれば。天日干ししなくてもスキル使用の乾燥で構いません」

ふふっ、やっぱり蒲焼には粉山椒は必要だよね。