軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第159話

「これ、これなんだけどね…、この【菊花・ 星留(ホシル) 】で『 死者送還(ターン・アンデッド) 』の打てる魔道具をお願いしたいの」

「ん? 磨いてあるのか。どれどれ……これは何処で手に入れた?」

「そこにいるミーシャちゃんが磨いたんだって」

「ほぅ……、嬢ちゃん、どこ所属の職人だ?」

「あの、ボク、来月から職校に入校するので所属とかは無くて…」

「マジかよ……」

気怠そうにサンゴの化石を見つめるラルフロ=レーンさん。そのマジかよ…は良い意味なの? それとも悪い意味なの?

「嬢ちゃん、いやミーシャ=ニイトラックバーグ、研磨の師匠は誰だ? 研磨歴は?」

「ボクの鉱石研磨は独学です。研磨歴は五年程です」

「ワォ、マジかー。独学かよ。これだからドワーフは面白れぇよなぁ…」

いや、あなたもドワーフですよ…。

「研磨技術は荒削りだが、まだまだどころじゃねぇ伸びしろがある。来月から職校って五日後か!? なぁ、青田買いしていいか? 俺のお抱え鉱石研磨師にならねぇか?」

えっ???

「ラルフロ=レーン、ミーシャとの契約は俺が先に持ち掛けてるんだよ」

ええっ???

バチバチに牽制し合うオッサンドワーフは置いておいて、俺は研磨ノートを取り出す。

「ラルフロ=レーンさん、ボク的にはその【 星留(ホシル) 】はまだ研磨途中です。そしてここまでの作業の研磨ノートを取ってあります」

「独学で研磨ノートとか、やっぱり専属契約してぇなぁ…。どれどれノートを拝見するぞ……、あぁ、そういう鉱石だったのか。で……、うんうん……。あーはいはい」

俺の磨いたサンゴの化石と研磨ノートが本職の魔道具職人によって検分される。前世基準だとソコソコの研磨完成度だとは思うんだけど…魔道具用としてはどうなんだろう。

「小一時間程ミーシャ=ニイトラックバーグを借りるぞ。見ててもいいけど暇ならどっか行っとけ」

特に追い出す訳でもないのか。企業秘密とかではないんだ。

「企業秘密じゃないんですね?」

「あ、そりゃぁ俺の仕事は 大(おお) 鍛冶師と冒険者には見ても理解できないだろうからな。邪魔してこなかったら別に気にするもんじゃねぇ」

成る程、見て盗めるならどうぞってか。

「じゃあいくぞ。ミーシャ、面倒臭いから呼び捨てすっからな。先ずは【 星留(ホシル) 】の菊花側でない方な、その形状だと少し魔力の流れが悪い。もう少しこう、ザッときてスッと落としてくれ」

「うーん、素直な楕円って意味でいいですか?」

「そんな感じだ。もう少し “ ぬる〜っ ” と落とせ」

ラルフロ=レーンさんの指示、何だかとっても分かりにくい!! 確かに言われてみたら気持〜ち歪というか、カラット数を意識し過ぎて残し過ぎという感じではある。周りをマクラメ細工で囲むなら今のままでもいいんだろうけどなぁ。

バッグパックから砥石と 木賊(とくさ) を取り出してサンゴの化石を整え直す。気持ち嵩高な楕円カボションカットになった。パワーストーン屋の商品から 裸石(ルース) 屋の商品になった感じね。

「上等、上等。ついでに底面もスパッと平らに整えてくれ」

言われるまま、底面も整える。

「それで、ミーシャは仕上げに何を使ってる? 混合砥の粉か? 細粉金剛砂か? アダマンタイト砂か? 金市鉱(セリア) 粉? まさか魔樫の炭粉とか…… 海底素材でルルの家の砂もあるか……」

ごめんなさい、俺、その異世界素材は初耳です。

「ボク…、手持ちの一番番手の細かい砥石か仕上げ用 木賊(とくさ) で仕上げています」

ウゲッ… という呻き声が聞こえたのは気の所為じゃないな。

「うっわー、荒削りなのは技能じゃなくて手持ちの砥石か!? ミーシャ、職校辞めて学園に入らないか?」

いや、俺…勉強は苦手なので………指パッチンからの錬金術発動には憧れがあるけど。

今回はラルフロ=レーンさんの手持ちの細粉金剛砂を使わせてもらって仕上げ磨きをする事になった。仕上げの良し悪しは魔道具になった時の魔力の伝導に関わってくると言われた。最後に魔鹿の袋角で擦り上げれば完成だ。魔鹿の袋角もラルフロ=レーンさんから借りました。

折角なのでそれも全部研磨ノートに記載した。いつかこの【菊花・ 星留(ホシル) 】が天に還ってもノートの記録は手元に残るからね。

「さあ、【 星留(ホシル) 】を見てみろ。かなり変わっただろ?」

謎の異世界素材で仕上げをしたせいか、前世基準だと有り得ない不思議な艷の仕上がりになっていた。

「凄い……魔力が通りそうって、まさにそんな感じです」

「おっと、魔力を流すなよ。変な癖が付くからな…」

それを聞いたリンド=バーグさんが苦笑いしている。この場にいる面子で魔石滓の時のやらかしを知っているのはリンド=バーグさんだけだからなぁ。

「魔力遮断布もあるから、研磨時に自信がなければ使えばいい。そして【菊花・ 星留(ホシル) 】の裏側に『葬送』の魔法陣を刻めば【 星留(ホシル) 】の処理は完了だ。で、どの魔道具にする?」

「携帯鏡の背に着けて欲しいな。バッグパックに下げたい」

「これ、『菊花葬送』が二回打てるからな」

「えっ!? 一回じゃないの?」

「普通なら一発使い捨てだが、これは研磨の質が良かったから二回打てる。ミーシャに感謝しとけよ」

「ありがとう。ミーシャちゃん凄いなぁ。お姉ちゃんも鼻が高いです」

「あはは~、ボクはラルフロ=レーンさんの指示通りに研磨しただけだし、凄い仕上げ道具も貸してもらえたので……」

「だからミーシャ=ニイトラックバーグ、学園に入ろう。そして俺の専属研磨師に………」

そしてリンド=バーグさんとラルフロ=レーンさんの間で、俺に対して勧誘と勧誘阻止合戦が繰り返されるのだった。