軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

573.まだ子供でいてほしいわ

王太后マルレーネ様も忙しいでしょう。何か差し入れをしたいわ。カールハインツ様とローレンツ様も、接待で忙しいはず。ルイーゼ様が一人で寂しがっているのではないかしら?

「レオン、明日はお父様やルイーゼ様に会いに行きましょうか」

「……うん」

声が沈んでいるのは、さっきの夕食にヘンリック様がいなかったから。やっぱり「三泊する」の意味を理解していなかった。夜には帰って来る、レオンの中でこれは決定事項だったみたい。食事の席できょろきょろしてから「いない」と大騒ぎして、泣いてしまった。

まだ目元が赤いのよ。私が屋敷に来てすぐの頃は「ないない」していたのにね。ふふっと笑いが漏れた。お父様なんて知らない、要らないと拒否した姿が嘘のよう。今では毎日帰ってきて、一緒に遊んでくれる人と認識していた。

「にぃ……ど、ちたの」

疑問というより、変だよと指摘する声色でローズが首を傾げる。この子はレオンに比べてマイペースだった。感受性の豊かさで言えば、レオンのほうが上ね。お昼寝から起きて私がいなくても泣かないのが、ローズのいいところで……ちょっと寂しいところ。

泣いてほしいわけじゃないけれど、平然としていると寂しいわ。以前はレオンを抱っこして歩いたのに、いまはローズに代わった。すぐ歩きたいと騒いで下りてしまうから、性格の違いがはっきりしているわ。自己主張の激しいローズと、空気を読むレオン。

「レオン、一緒にお風呂入ろう」

「うん」

そろそろ返事を「はい」に直したい。でも教師がつくのは、五歳になってからの予定だった。勉強は絵本を読んだり、積み木で数を覚える程度よ。言葉もその頃に直せばいいと思うの。

公爵嫡子としての勉強は難しく、厳しいと聞いている。これはローラント様も仰ったし、ユーリア様やパウリーネ様も口を揃えた。だから早めに教えておくべきか、少しでも猶予を持つのが正しいか。迷って、つい見逃してしまうの。

やらなければいけなくなったら、その時に覚えてもいいのではないかしら? 公爵家の嫡男であっても、レオンはレオンだもの。

「ろじぃも!」

こくんと頷いてランドルフと手を繋いだレオンの背中に、ローズが声を張り上げた。一緒に入ると主張して暴れる。落とさないよう気を付けて下すも、手は離せなかった。

「ローズはダメなのよ」

「やぁ! にぃと、っちょ!」

レオンが泣いていたから? 絶対に一緒に入ると地団駄踏んで主張する。ローズの様子に困っていると、レオンがとことこ近づいてきた。ローズの頭を撫でて「あしたね」と約束する。洟を啜って唇を尖らせる妹の頬を撫でて、唇を指で引っ込めた。

色男の仕草じゃない? どこで覚えたのかしら……と思ったけれど、考えてみたら私がレオンにしたことだった。やだっ、外から見えるとこんな風に見えるのね。なんだか恥ずかしいわ。