軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

57-2.(領民の子)親友と紹介されて

広場に集まった人のざわざわした声が、ぴたりと止む。凄いんだ、何か合図したわけじゃないんだけどさ。ピアノの前に座って、ぽーんと一つ音を鳴らしたら……皆が黙った。

綺麗な服着てるけどさ、あれはユンだ。間違いない。貴族である先生の子供だから、ユンも貴族だよな。楽器をくれた娘さんと同じ。真っ白なシャツと光るボタン、上着を脱いでいるけど、ズボンはすっと線が入った青紫だった。金髪だから映えるな。

こうしてみると、やっぱりユンも貴族だ。一緒に走り回って、泥だらけになったり、傷だらけで喧嘩したけど……お貴族様だったんだなぁ。

「あの子、見たことあるねぇ」

お母さんに「ユンだよ」と教えたら、驚いた顔をされた。そうだよな、いつも襟や袖を汚して走ってたユンが、こんなカッコよくなるなんて思わないもん。

ぽろん……複数の音が重なって、そこからは溢れ出てきた。なんて表現したらいいんだ? こう押し寄せてくる。こっちが後ずさりそうなくらい、強い音なんだよ。でも綺麗で透き通っていて、耳に気持ちよかった。いつまでも聴いていたくなる。

最後の音を聴いたときには、目を閉じていた。音が消えて慌てて目を開けて、そこで閉じていたって気づいたんだ。聴き入るって、こういう状態なのかも。

わっと拍手の音が起きて、慌てて俺も拍手した。お母さんも一緒だ。強く拍手して、手のひらが痛くなる頃……またピアノの音がした。すぐに拍手が収まり、ピアノの音だけになる。十分な広さがある場所なのにさ、音が溢れるのに足りない気がした。

ひたひたと広がって、まるで泳いでいるみたいだ。ふわふわと流れていく感じで、身を任せる。こんな曲を弾けるようになったんだな。ちょっと前まで、俺らと泥だらけで遊んだのに。めちゃくちゃ遠い、手の届かない人になったみたいで……寂しくなった。

何曲か弾いて、優雅に足を引いて一礼したユンが舞台を下りる。空の上は星や月が輝いて、舞台に降り注いだ。金髪がきらきらして、昔は茶色っぽいと思ってたのにさ。全然違った。

「貴族になっちまったんだな。なんか、寂しいや」

「友達の出世だよ! 喜んでやりな!」

お母さんにどんと背中を叩かれ、そうかと笑った。ただ祝ってやればいいんだ。

「よう! ファビじゃねえか。来てたんなら言えよな、ほら」

寂しさを堪えた俺の名を呼ぶ声が聞こえて、ユンが走ってきた。舞台の上の衣装そのままで、俺に手を伸ばす。お母さんが無言で背中を押した。振り返って顔を見れば、笑顔で頷く。それから「遅くなる前に帰るんだよ」と送り出してくれた。

「うん!」

笑って走り出す。一緒に悪さをして叱られたし、パン屋からパンの端を貰って齧った。あの頃のユンのままだ。綺麗な服着たって、中身はおんなじ! 俺の知るユンが手首を掴み、煌びやかな集団へ連れていく。清潔な服を着た人の間を抜けて、見覚えのある先生の背中にたどり着いた。

「リア姉、俺の親友ファビだ」

優しそうな貴族の奥様へ、堂々と俺を紹介する。嬉しさと誇らしさと、少しの恥ずかしさで顔が赤くなった。それを揶揄うユンとじゃれ合って、夢みたいな夜だよ。俺さ、ずっとお前の親友でいられるように頑張るな!