作品タイトル不明
39-2.(レオン)立ったからお祝い
お屋敷の玄関で、お母様がロジィと待っていた。寒いからちゃんと玄関の中にいたの。にっこり笑うお母様は綺麗で、いつも胸がぐっとしちゃう。僕はずっと一人でいたけれど、あれはお母様を待っていたんだなと思うようになった。
明日からランドルフが来る。じぃじやエル達がいなくなって、寂しいけど……また賑やかになるの。手を洗って、口もくちゅくちゅして、暖かいお部屋に入った。はいはいするロジィが僕のほうへ来て、絨毯にお座りした僕の足に掴まる。ぐっと力を入れているみたい。
「あっ!」
驚いて声を上げたら、ロジィが尻もちをついた。いま……立とうとした? 話していたお父様とお母様が僕のほうを見たので、口に指を当てた。たしか、シィをする動きだよ。頷いたお母様がお父様に説明していた。たぶん、お父様は知らないんだと思う。
ロジィは後ろに転がって、また僕に掴まった。うーん、と唇を尖らせてロジィが頑張る。応援したいけど、声を掛けたら驚いちゃうよね。壁のところに立ってる皆も、お父様やお母様も、声を出さないで見ていた。小さな声で頑張れって聞こえる。
「ろじぃ」
小さく名前を呼んだら、ロジィがにこっと笑う。僕も笑顔になった。
「……立ってる、わ」
お母様が呟いた声に、よく見たら……ロジィは立ってる。僕の足を離して手を振り回し、どすんと尻もちをついた。痛くないのかな? きゃっきゃとはしゃいだ声を上げ、またはいはいを始める。
「ローズは立っていた、な」
「お祝いしましょうか」
ぼうっとした感じで繰り返すお父様の肩を叩き、お母様は周囲に伝えた。お祝い? さっき僕とお父様が採ったきのこを入れたシチューはあるよ! アナは読んでいた本を片付け、僕と手をとって回る。ダンスみたいで楽しいの!
夕食はきのこのシチューで、白くて美味しかった。パンは黒くてほんのり甘い。サラダは卵やハムが入ってて、色が綺麗だった。お祝いのご飯はシチューなのかな? そう思っていたら、ご飯の後におやつが出てきた。
いっぱい食べたから、入らないかも。しょんぼりした僕だけど、アナが笑って「別腹よ」と教えてくれた。甘くて美味しいものは、別のお腹に入るんだって。ぽんぽんとお腹を叩いて、どこにあるのか探していたら、お母様がスプーンを差し出した。
薄い卵の色で、甘い匂いがする。口に入れたらぷるんとして、潰れちゃった。すごく美味しい! お腹いっぱいだと思ったのに、全然入るよ? これが別腹……すごいな。お母様が僕と食べている横で、お父様がぎこちなくロジィにスプーンを運ぶ。
「おとちゃま! ちったく」
もっと小さくしないと、零れちゃうの。慌ててスプーンを引っ込めたお父様に、ロジィが泣いた。小さいスプーンで出したら、泣きながら食べる。でも泣いてる。洟を啜って、また口を開けた。お母様は笑い出し、お父様はまたお菓子を運ぶ。
「おいちっ」
にっこり笑って、お母様を押した。
「ろじぃ、して」
ロジィに食べさせてね。そう伝えたら、たくさんキスして抱きしめられた。