軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

265.大人になるのは早い

これ以上、外部の人間である私が介入してもいいのか。家を乗っ取られると心配させてしまうのでは? 家族の問題に首を突っ込んでも、嫌な顔をされるだけよ。何度も自分に言い聞かせたけれど、やっぱり口出ししたくなるの。

不幸な子が一人でも減りますように。泣く子を誰かが抱き締めてくれますように。親になるのは不思議な体験だわ。弟妹の時より強く、レオンを守りたいと思う。それと同時に、他人の子が不幸になるのも許せなかった。手が届くなら、私が悪く言われるだけで済むなら……何とかしてあげたい。

前世の世話焼きおばさんの気持ちが、世界を跨いで理解できちゃうなんてね。ふふっ、あの頃は「うるさい」「邪魔」「余計なお世話」と感じたのに、自分がそのお節介おばさんになりたいのよ。オイゲン様を預かる提案をしてみようか。それとも……。

迷う私の手元のカップが、新しいものに交換される。上位貴族では、お茶会でカップに紅茶を注ぎ足すことは少なかった。一般的にはカップごと新しく交換するのよ。よく温めたカップに適温の紅茶を満たして、違う柄のセットが差し出される。その際に紅茶の葉を変えることもあった。

味を変え、カップを交換し、お茶会は続く。無言で向き合う私達の様子を、侍女はどう感じるのかしら。変なところが気になるのは、私の考えが纏まり始めたからだ。外へ気を向ける余裕が出てきた証拠だった。あとはどう切り出すか。

「ティール侯爵様、一つご提案なのですが」

沈黙を破って切り出したタイミングで、扉が開いた。ノックがない。ユリアンね、と肩を落とした。顔を向けた先で、あちゃあと顔を歪め扉を閉める弟が見えた。すぐにノックが響く。やり直しは、もう遅いわ。

「ユリアン、どうしたの」

家主夫妻が固まっているため、私が促した。ちらっと顔を覗かせ、唇を動かす。やべっ、怒ってるかも。そんな声が聞こえそうなだわ。

「オイゲン、様と仲良くなったんだ……ですが、泊まりで遊びに来てもらっていいですか?」

以前、孤児の子を家に連れてきた時も、この子は同じような言い方をしたわ。途中から言葉を改めたのは、侯爵夫妻の前だから。ボロが出ないよう、普段から言葉遣いを徹底するべきね。

「私は構わないけれど、ティール侯爵やハンナ様の許可をいただくのが先決よ」

「先日も、先ほども申し訳ございませんでした。ユリアン君と話して、俺に足りない部分を見つけたいと思います。父上、母上……許可をください」

ユリアンが促すと、オイゲン様が自ら口を開いた。背中をポンと叩いて、言い終えた彼が頭を下げれば一緒にお辞儀する。世の中を渡るには器用な方がいいのに、なぜか切なくなるわ。子供でいる期間をきちんと与えてあげられなかった。

まだ大人にならず、子供でいていいの。私に叱られ、ぺろっと舌を出して逃げ回る普段のユリアンが見たい。いつもと矛盾した思いを噛み締めた。