軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

77.素人の気づき

「いい、アーニャ。今から行ったとしても、陛下が実際に選抜を通じて選ぶ妃は数人から数十人でしょう」

「うん、そうだね」

「ですが、それに既存の騎士選抜を重ね合わせることで、世の中の女達は陛下に選ばれるために、陛下が定めた基準――方向性に向かって成長していく流れになります」

「……わあ」

「騎士はどうしても男が中心、女が騎士になろうと考えるのは一部の物好き。ですが、玉の輿を望まない女なんてよほどの事でもなければいません。世の中の女は、陛下に気に入られる為に奮起するのです」

「そこまで考えて……すごい!」

アーニャは俺を尊敬しきった眼差しで見つめてきた。

「余の考えを一瞬で読み切ったお前が凄いよ」

そういい、微笑みながらオードリーを見た。

「それは良いのですが、陛下は気に入った女はおられないのでしょうか?」

「なんだ藪から棒に。この流れだと、女として、と言う意味なんだな?」

聞きかえすと、オードリーは静かに頷いた。

「なんでそんな事を聞く」

「陛下は重要な事を忘れていらっしゃるように見受けられましたので」

「重要な事?」

なんか忘れてるか?

「上皇陛下には多くの妃がおります。そして、 様々な(、、、) 妃がおります」

「ふむ」

様々な、という所で少しだけ吹き出しそうになった。

父上は確かに様々な人間を自分の妃にした。

中には臣下の妻だった女や、かつて自分の父親の妃――義理の母親だった女も妃にした。

有名な話だ。

時の皇帝が崩御した時は、政略的に妃にはしたが、まだ六歳という幼さ故に手付かずの女の子が一人いた。

つまり、六歳の未亡人と言うことだ。

それが成長し、適齢期になった時、その美しさを見初めた父上が無理矢理自分の妻にした。

そういう(、、、、) 武勇伝には事欠かないのが上皇、父上なのである。

「臣下の妻をものにしたとき、自分の義理の母にあたる少女を手籠めにしたとき、上皇陛下は誰かに咎められまして?」

「いいや?」

皇帝がなぜ、その程度の事で咎められるものか。

もっとあり得ない、非人道的な事をやっても咎められもしないのが皇帝という物だ。

「ええ、陛下の反応そのままです」

「何が言いたい」

「陛下は貴族の義務と良くおっしゃってますが、貴族の権利を忘れているように思います」

「……ふむ」

「帝国の女は全て陛下のもの――帝国そのものがもう陛下の物なのです」

なるほど、もっと地位と権力を享受しろって言いたいのか。

「話は分かる。が、何故そんな事をいう」

「清き水は住みづらいものです」

「……ああ」

オードリーの言いたいことは分かった。

皇帝の俺がやらないと、下の貴族たちが遠慮してやらなくなるって事か。

それは、よくないな。

俺がただの親王程度ならそれでも良かった。

だが皇帝ともなると、絶対的な権力をもつ皇帝ともなると、どうしたって貴族や臣民は俺に忖度する。

俺に気遣って遠慮を始めると、経済が停滞してしまう。

「陛下は素晴しい才能を持ったお方、一万年に一人という才能なのでありましょう。しかし、皇帝としては、上皇陛下にはまだまだ及ばないと言わざるをえません」

「……なるほど、確かに皇后としての視点だ」

話が少し長くなったが、ようやく、オードリーの言いたいことがわかった。

「分かった。帝国は全て余のもの――それを肝に銘じて動くことにする」

「……やはり陛下は凄いお方」

「ん?」

「自分のやってきたことを全て否定されるような言い方をされても、皇帝として正しい、といえば受け入れられます。さすがでございます」

「そうか」

普段からよく聞く褒め言葉だけど、皇后の視点を持ったオードリーに言われるのは、また違う嬉しさがあった。

次の日の午後、俺は庭で模擬戦をしていた。

メイド長のゾーイと、新しく連れ帰ったケイトを連れて、東屋の中で寛ぎながら、これまた新加入のジズを他の五体と戦わせていた。

鎧の指輪とリンクさせて、具現化させての模擬戦、新しいジズを中心に、次々と戦わせた。

一巡したところで、レベルが上がった。

――――――――――――

名前:ノア・アララート

帝国皇帝

性別:男

レベル:16+1/∞

HP C+C 火 E+S

MP D+C 水 C+SS

力 C+S 風 E+C

体力 D+C 地 E+C

知性 D+B 光 E+B

精神 E+C 闇 E+B

速さ E+C

器用 E+C

運 E+C

―――――――――――

MPが一段階上がった。

久しぶりのレベルアップ。

ジズが新しく入った為のレベルアップ。

「ゾーイ……いや、ケイト。ステータスの魔法だ」

「わ、分かりました」

連れ帰ってからまだそれほど時間が経って無くて、緊張が残っているケイト。

多少の魔法の才能はあったから、ステータスチェックの魔法を覚えさせて、当面の仕事を与えた。

それでレベル17の表向きのステータスを確認した。

まだまだいけると、俺は更に戦わせた。

二巡した所で、おおよその序列が分かってきた。

既存の序列に変わりは無かった。

トップがバハムートで、その次がレヴィアタン。

覚醒したバハムートに、レヴィアタンが負けん気剥き出しにして食ってかかる、という構図だ。

その下はベヘモト、アポピス、フワワの順。

このあたりは特に敵愾心もなく淡々と――なのだが、フワワはあまりにも淡々としすぎているので、レヴィアタンの負けず嫌いと対象的になってて、「本気」をまだまだ隠しているんじゃないかって気になってくる。

その五体の中に、レヴィアタンの下、ベヘモトの上に食い込んだのがジズだ。

鳥の頭と筋肉質な男の胴体。

それが鎧の指輪とリンクさせたジズの具現化した姿だ。

そのジズの序列が大体分かってきた所で、またレベルが上がった。

――――――――――――

名前:ノア・アララート

帝国皇帝

性別:男

レベル:17+1/∞

HP C+C 火 E+S

MP D+C 水 C+SS

力 C+S 風 E+C

体力 D+C 地 E+C

知性 D+B 光 E+B

精神 E+C 闇 E+B

速さ E+C

器用 E+C

運 D+C

―――――――――――

今度は運が一段階上がった。

素の能力はまだまだ地味目だが、それでも十分に強くなってきたとも言える。

表のステータスは――。

「ど、どうぞ」

俺が呼ぶ前に、ケイトが先に魔法をかけてきた。

俺の前に、他人にも見えるようにステータスが浮かび上がった。

レベルが一つ上がった、17+1の18で表示された。

「あっ……」

それに驚いたのはゾーイである。

俺はふっ、とゾーイに自慢するように笑って。

「こういう事だ。察しがいいだろ?」

「はい」

「ぬるくなった茶に手を伸ばしたら、気づかない内に熱いものに入れ替わってたんだ」

「おぉ……」

驚くゾーイ、ケイトを見つめる。

見つめられたケイトは所在なさげに俯いてしまった。

「さすが陛下、こんな普通な娘の才能まで見抜いてしまうなんて」

「見抜いたのは余だが、育てるのはお前だ。任せたぞ」

「はい! お任せ下さい!」

俺に信頼された事が何よりも嬉しい、と言わんばかりに意気込んだ。

微笑みながら頷いて、俺は再び模擬戦に戻った。

経験上、ジズの加入で、あと三つはスムーズに上がるはずだ。

今日はそこまでやっておこう。

序列が決まったせいで、模擬戦にそそいでた集中力が他にも移るようになった。

ふと、ケイトが俺の手元をじっと見つめていることに気づいた。

「どうした、余の手に何かあるのか?」

「え? あっ……」

「失礼よケイト」

「今回はいい、許す。それよりも何か言いたい目をしてたけど、なんだ?」

「えっと……」

ケイトはあわあわしながら俺とゾーイを交互に見つめた。

皇帝の俺が、ゾーイに任せたときに「ゾーイの言うことを聞け」と言ったから、それにまだ慣れてなくて混乱しているのが手に取るように分かる。

「陛下の質問に答えなさい。陛下のお言葉は全てに優先するものよ」

「は、はい!」

あわあわしたまま頷いてから、ケイトは俺の手を見つめながら。

「陛下 様(・) のそれ、人間にも出来るのかなって、思ってました」

「人間?」

「カラ神様は、時に人間の体を乗っ取ってましたから」

「……考えたこともなかった。どうだ?」

聞くと、六体の内、一体だけ答えた。

即答で答えた。

『我ならば』

バハムートだった。

唯一、覚醒しているバハムートだった。

『一分弱なら、その娘の体を使えば』

「やってみろ」

『御意』

バハムートが応じて、腕輪の中から飛び出して、ケイトに乗り移った。

次の瞬間、ケイトの体がみるみるうちに変化していき、少女だった肢体が伸びて大人びたものになり、髪や服など、全身が炎を纏った。

炎の魔人――あるいは魔神か。

そう呼ぶに相応しい姿になった。

「す、凄い……」

直前までケイトだったのが、神々しい姿に変化したのを見て。

ゾーイは、目を見開き驚愕したのだった。