軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54.上位5%の強さ

この日は朝から、庭の東屋でレベル上げをしていた。

屋敷から離れて、庭の開けた所にある東屋。

そこでゾーイを侍らせたまま、模擬戦をやっている。

アポピスが新たに加わった事で、そのアポピスを他の四体と戦わせた。

共に鎧の指輪にリンクし、具現化させて戦わせる。

五体の内、アポピスは四番目くらいの強さってところだ。

覚醒してからは、バハムートがトップを独走している。

もと一位で陥落したレヴィアタンとの力関係は完全に逆転して、バハムートが十回やれば九回は勝てるって差だ。

三番目はベヘモトで、四番目はアポピス、最後がフワワ。

ただし、上の二体が抜きん出ていて、下の三体はこれといった差は無い、と言うのが現状だ。

一体増えれば、戦いの組み合わせもかなり増える。

組み合わせが増えれば、戦いの内容や結末も爆発的に増大する。

それが面白くて、朝からずっと模擬戦をし続けていた。

夕方にもなると、朝に比べて レベル(、、、) の上がり具合が目に見えて遅くなってきた。

――――――――――――

名前:ノア・アララート

法務親王大臣

性別:男

レベル:15/∞

HP C+E 火 E+A

MP E+E 水 C+S

力 C+A 風 E+F

体力 D+E 地 E+D

知性 E+D 光 E+C

精神 E+D 闇 E+C

速さ E+E

器用 E+D

運 E+D

―――――――――――

視界の隅っこに常にあるステータスを見る。

レベルが10から15にあがって、HPと力、それに水の属性がCになった。

ただし、それは 俺の力のみ(、、、、、) でだ。

「ゾーイ、ステータスチェックだ」

「かしこまりました」

ずっとそばに控えていたゾーイに命じて、魔法をかけてもらう。

――――――――――――

名前:ノア・アララート

法務親王大臣

性別:男

レベル:15/∞

HP B 火 S

MP D 水 SSS

力 SSS 風 E

体力 C 地 C

知性 C 光 B

精神 C 闇 B

速さ D

器用 C

運 C

―――――――――――

ゾーイがかけた魔法で、「+」の補正を上乗せした、表向きのステータスが出てきた。

「さ、さすがご主人様。またすごく強くなってます……」

「そうだな」

封地にアララートが加わった結果だ。

アララート分のAが上乗せして、力がSSSになった。

他も順調に上がっている。

俺自身の能力と、部下を加えた分の「+」。

二つが合わさって、いい感じに強くなった。

力がSSSなら気をつければ、最強モードの時と同じくらい戦えるかもしれない。

俺が能力を見て色々考えている傍らで、ゾーイが驚嘆したまま帰ってこない。

「どうした、そんなに驚いた顔して」

「お、驚きますよ。だってレベル15って、帝国臣民全ての上位5%だって言うじゃないですか」

「……ああ、そうだったな」

実はそうだ。

レベルを上げる事は実に難しい。

かつて栄華を誇った古代文明には、「回復魔法」というものが存在していた。

信じられないことに、その魔法は人間のケガを一日足らずで癒やせてしまうというのだ。

その回復魔法があったおかげで、その頃の人間は思う存分戦い、レベルを上げる事が出来た。

今は皇族の初陣がとても慎重に、モンスターの巣を「育てて」やる事からも分かる様に、レベル上げは非常に困難だ。

もっといえば、人類の半数近くは、最大レベルが10未満という事実もある。

かくいう俺も、前世の最大レベルは8だった。

「そんなに若いのにもうレベル15……ご主人様って本当にすごい……」

ゾーイは、俺のレベル15にいつまでも驚嘆し続けていた。

その日の夜、書斎で調べものをしていたら、ドンがノックして入ってきた。

「良かった、まだここにいらしたのですね殿下」

「もうそろそろ内苑に戻ろうと思っていたところだが……どうした」

「でしたら本当によかったです。内苑に戻られると私は入れませんので」

ドンはほっとして、俺の机に箱を置いた。

「これが送られてきました」

「フワワの箱か」

「はい」

頷くドン、真顔で箱をみている。

「殿下から聞いた話では、これがちゃんと送られてくるという事はちゃんとした報告だとか」

「そうだな」

フワワの箱。

フワワの力を使って作った箱で、一旦鍵を掛けてしまえば俺以外の人間は開けることが出来なくなる。

それを俺に直接報告するために、あるいは密告が出来るように、いくつかの代官やら役人やらに配ったものだ。

ちなみに、これを栄誉だとして、他人に見せびらかした時は即座に自壊する造りにもなっている。

それが鍵を掛けて送られてきた。

俺は慎重に箱に触れて、鍵を開けようとした――

「むっ」

「どうしました?」

「おかしい」

「え?」

「これは……何かがおかしい」

何かがおかしい、というのは推測や直感などといったものではない。

――――――――――――

名前:ノア・アララート

法務親王大臣

性別:男

レベル:15/∞

HP C+E 火 E

MP E+E 水 C

力 C+A 風 E

体力 D+E 地 E

知性 E+D 光 E

精神 E+D 闇 E

速さ E+E

器用 E+D

運 E+D

―――――――――――

箱にふれた瞬間、俺のステータスで、属性の「+」が全部消えていた。

ものを手に入れて「+」がつく事は今までよくあったが、減るのは初めてだ。

俺は慎重に、箱を開けた。

中にこぶし大の石と、手紙が入っていた。

俺は手紙を読んだ――眉をひそめてしまった。

「何がかいてあるのですか」

「この石は隕石だが、落ちてきた時の衝撃で表に『自然に』『賢』の文字が出来たらしい」

「あー……」

ドンは眉をひそめ、苦笑いした。

俺は石を手に取って、眺める。

石の表面にははっきりと、賢親王の「賢」の文字が刻まれていた。

「よくある手ですね。天然でこういうものが出てきたから、吉兆だとしてごますりに献上する輩が。このようなものが天然で出来るはずがないのに」

「……」

「しかし、さすが殿下ですな。箱を手に取った瞬間分かったとは」

ドンの言葉を聞き流し、俺は隕石を見つめた。

箱を手に取った瞬間に分かった――ステータス減。

それは、ごますりだとか、今後フワワの箱に新しい機能を追加しなきゃいけないなとか。

そういった事がまとめて吹っ飛ぶほどだ。

俺は少し考えた後、レヴィアタンを抜いた。

水の魔剣を振るって、隕石を真横に両断する――瞬間。

隕石の中から何かが飛び出した。

「うわっ!」

飛び出した物が膨らんで、ドンがそれに弾き飛ばされて、壁に叩きつけられた。

それは次第に形になり――うにょうにょと蠢く、まだら色の触手となっていく。

実に名状しがたい醜悪さと、不吉さを併せ持った触手だ。

触手が暴れだす。

床を穿ち、壁をなぎ払う。

あっという間に、執務用の書斎を半壊させてしまった。

崩壊で巻き起こった砂煙の向こうに星空が見える。

「殿下!」

「下がっていろ!」

こっちに向かってこようとするドンを一喝して、レヴィアタンを構える。

破壊するごとに体積を増していく触手に、まずは威嚇をぶつけた。

「効かないか」

触手の動きが鈍る様子は全く無く、わずかにビクッとしただけで、更に破壊を続けていく。

あれよあれよという間に、書斎はほぼ全壊だ。

そして壊すものがなくなったのか、触手は蠢きながら、こっちに向かってきた。

「ふっ!」

突進してくる先端に、レヴィアタンで斬りつけて迎撃する。

「堅いな――だが!」

刃が通らない程じゃない。

片手で斬りつけた俺は、両手で構えて力を込めた。

触手の真ん中から、縦に一直線に引き裂く。

まるで絡み合った糸くずのような触手のうち、一本が切断され、床に落ちて痙攣した後に動かなくなった。

斬撃は通用する!

俺はレヴィアタンを構えて触手に肉薄する。

人間でいう懐に潜り込むやいなや、レヴィアタンを乱舞して斬りつけた。

堅いが、アポピスほどじゃない。

水色の魔剣で、容赦なく触手を切り落としていく。

ものの三分程で、書斎を半壊させて巨大化した触手を細切れにする事が出来た。

「……これで終わりか」

レヴィアタンを構えたまま、生き残りを少し警戒した。

ついでに威嚇も飛ばしてみるが、反応した様子もないのでレヴィアタンを納める。

「大丈夫か?」

「……」

「ドン?」

「え? あ、ああ。大丈夫です。殿下の剣術はすごいですな。あんな化け物を一瞬で」

「それよりもこの箱を送ってきたヤツを捕まえて、話を聞け」

「そうでした!」

激戦に唖然としていたドンが慌てて外に飛び出して行った。