作品タイトル不明
クランハウスで
わいわいと賑やかに、クランハウスに戻った。
「最初に練習するなら風の魔法かなぁ?」
周囲への被害を考えると、三つの中では風が一番無難という気がする。
「コントロールの補助のことを考えても、杖とブレスレットと入れ墨だったら、杖が手軽なんじゃない?」
ルナが指で数えながら言った。
「火の魔法を杖で使っている人もいるぞ」
山猫亭で出会った魔法使いたちは、杖を持っている人も、いない人もいた。
「いろんな組み合わせがあるんだにゃ。オルドさんに相談したら、最適な組み合わせを考えてくれそう」
サァラが言うと、ルナがぽんと手を叩いた。
「そうだ。魔法の研究をしているんだもんね」
「そのオルドさんというのは、誰ですか?」
オンが期待の目を二人に向ける。
「このクランには所属していない、Aランクパーティーの人だにゃ。もうトゥルメル領に戻っちゃったかもしれないけど」
「冒険者ギルドを通して連絡を取ってもらって、交渉したら?」
ルナが俺に話しかけた。
「王都にいたら頼みやすいけど、トゥルメルにいたら大変だぞ。指名依頼になって、王都までの旅費もこっち負担だ。一人じゃなくパーティーで来るなら、全員分になるし」
獣人やエルフの領を、Aランクなら一人で踏破できるのだろうか。それもよくわからない。
「あれ、なんか人だかりだにゃ」
サァラに言われて見ると、クランハウスの前に護送用の馬車が停まっていた。兵士が周囲を警戒し、騎士がクランの人間と話し込んでいる。
バスラの姿を見つけたクランの幹部が、こちらに走ってきた。
「妖精族の襲撃がありました。目的はフォンの繭です。妖精の国か、例の宗教団体かは確認できていません」
「手薄なのを知っての襲撃か? どこからかクランを見張っていたのかもしれないな」
バスラは周囲の建物を睨めつけた。
「襲撃犯を引き渡すか、こちらで尋問するか、どうしますか?」
幹部はバスラに判断を委ねた。
「話を訊いてからだ。会議室に状況説明できるやつと代表者の騎士を集めろ。兵士が勝手に馬車を動かさないよう、見張りを付けておけ」
てきぱきと指示を出してから、バスラはオンの方を見た。
「訓練の方針は明日話し合おう。それでいいな?」
オンは目をぱちくりさせた。
「はい、明日ですね」
「俺たち、フォンの様子を見に行っていいですか?」
同じパーティーの仲間として、無事だというのを自分で確認したい。
「……ああ。そうだな」
バスラは一瞬、痛ましいという感情をのぞかせたが、すぐに襲撃犯のことに頭を切り替えたようだ。幹部と話をしながら、クランハウスに入っていった。すぐに会議室で話し合いを始めるのだろう。
俺たちはまっすぐにフォンの繭の部屋へ向かった。
走るわけではないが、自然と早足になる。袋の中で壊れた入れ物がガシャガシャと音を立てた。
部屋の扉の前に見張り役の冒険者がいる。
「パーティーメンバーとして、無事を確認したい」
ルナの声は硬かった。
その冒険者は肩をすくめて、場所を譲ってくれた。
今朝、ここを出て行く前と変わらない光景。思わず息を吐き、体から緊張が抜けた。
サァラは座り込み、手に持っていた袋が床にぶつかった。ガシャンと耳障りな音が、静かな部屋を乱す。
「フォンがこんな時に、楽しんでてごめんにゃ」
サァラの顔は見えないが、声が震えている。
「妖精族の繭化……」
オンの声がした。
あ、俺たちについてきていたのか。