作品タイトル不明
昼食
馬車から箱を降ろして、その上に準備していた昼飯を広げた。手が汚れても食べられるよう、具入りのパンを紙で包んである。
「うう、自分が臭いにゃ」
サァラが自分の腕を嗅ぎ、猫耳がへにょっと下がる。
「泥水が服にかかったからな……」
ルナは自分の服の胸の辺りを摘まんだ。
護衛のAランク冒険者が近づいてきた。
「軽い風魔法なら使えますよ」
と提案してくれたので、お言葉に甘えてかけてもらった。昼飯を置いた箱を中心に、風がそよぐ。臭いが自分の背後に流れていき、これだけで充分ありがたい。
「これで、食欲が湧きますね」
エドガーがニコニコと笑顔になり、みんなにお茶を配る。
オンはパンにかじりつき、目を輝かせた。
「美味しいですね」
「携帯用に水分をできるだけ飛ばしたからな。パンがべちょっとしないように」
一手間かけると、仕上がりがぐっと変わる。
「はあ、強ければいいと言うものではないのですね」
オンが護衛に話しかけた。
「戦うにはもちろん強さが重要になってきます。ですが、コントロールして弱く長く使いたい場面もあるでしょう」
「そうですね。それで快適な生活ができるなら、出力を弱くすることを覚えたいです」
オンがそう言うと、護衛は嬉しそうに励ました。
「いいことです。ぜひ!」
「問題は、その練習をどこでやるかじゃねぇか?」
食べ終わったアーデンが紙を丸めながら言った。
「……広くて、人里から離れた場所が必要ですかね? 王都の近くに、そのような所はありますか?」
エドガーが護衛に話を振る。
「この森とか丘の上とか……ですかねぇ。パーティーの遠征に同行するにしても、もう少しコントロールできないと厳しいかな」
護衛は腕を組んで考えながら答えている。
「あの、なんでオンはそんなに魔力が多いんでしょう?」
規格外すぎるし、たぶん人族ではないよな。
「あたしは魔族なのです」
オンがケロリと言った。
「ワイバーン討伐のとき何羽もいたんだが、オンがほぼ一人で討伐したんだよ。
俺たちが戦ったのは、人里に降りてきた奴だ」
アーデンが苦笑した。
護衛も、うなずく。
「あのままだったら、討伐に出た者たちの半分以上死んでもおかしくなかった。本当に恩人です」
「いえ、あれは魔族のテイマーが悪ノリしたのが悪いのです。モンスターを操って、多種族を蹂躙してみたいとか言い出して、ご迷惑をおかけしました。
あの後、ギッタギタに叩きのめして千切りましたので、数十年は復活できないと思います」
丁寧にしゃべっているが……内容が恐ろしい。
俺とエドガー以外は、オンがワイバーンを討伐する姿を見ているのか。
「お料理が美味しかったので、こちらに再び来てしまいました。
野営料理よりさらに美味しいものがたくさんあって、幸せです」
オンはそう言ってお茶を飲んだ。
……共生するためには、コントロールが必須だと思うぞ。