作品タイトル不明
王都の冒険者ギルド
会議室に案内され、同行してくれたクランの事務担当者が書類を取り出した。
妖精族とトラブルが生じ、フォンが繭に籠もってしまったこと。その繭を妖精の国へ連れて行くと主張してきたことを説明する。
「国同士の取引に利用される可能性もあります。いち冒険者では対抗できなくても、大手クランなら対抗できますから」
事務担当者がはっきりと言った。
「妖精の国とのトラブルですか。それは、例の宗教団体の絡みですよね。それから、レスタール王国の冒険者ギルド不正問題も。
諸々のことを引き受ける覚悟がある、ということでよろしいですね」
ギルド職員はクランとしての方針を確認した。クランだけでなく、ギルド支部も関わらざるを得なくなってくる。
「クランマスターがトーマ君を気に入っているので、厄介ごとも含めて囲い込みます」
事務担当者が聞き捨てならないことを言った。
「は?」
「あなたは、有益かつ面倒くさい存在なのですよ」
事務担当者はトーマの方を見もしないで、書類を埋めていく。
「はい、結構です。本人たちの申請に、クラン側の受け入れ意思を確認しました。
最優先でクラン登録をしてしまいましょう」
ギルド職員は俺たちの冒険者タグを受け取り、棚の方に歩いて行った。
お茶を出してくれた職員もそちらに行き、二人がかりで魔導具を操作している。
制服の後ろ姿を見て、ちゃんとアイロンをかけてピシッとしているなぁと思った。動きもキビキビしている。
それを眺めながら、ルナはお茶をすすった。
「クラン登録って、そんなに大変なのか?」
「普通は一人の職員がちゃちゃっとタグの変更をするもんね」
サァラも不思議そうだ。
「……あなたたちは拠点をトゥルメル支部から、ファルガン共和国王都支部に移すことになります。
書き込む情報が、クラン加入だけではないのです」
そんな会話に、俺は参加できなかった。紅茶の香りがいいことに感心しつつ、聞き捨てならない言葉が頭の中をぐるぐるしている。
囲い込むってなんだ?
評価されるのは嬉しいが、バスラとは会議で顔を合わせるくらいで、何がきっかけか心当たりがない。納得できない高評価って、据わりが悪いというか……気持ちが悪いな。
「これで、国同士のやりとりに巻き込まれても抵抗できますよ」
ギルド職員が笑顔でタグを返してくれた。
「ようこそ、王都支部へ。トゥルメル支部のギルドマスターからもお話をうかがっていますし、歓迎します」
「あ、そうじゃん。トゥルメルのギルマスに挨拶してない」
ルナが言うとおりだ。気にかけてくれたし、便宜も図ってもらったのに。
「では、連絡を入れておきましょう。伝えたい言葉があったら……口頭より紙に書いてもらった方がいいかもしれませんね。
でも、移転することも想定していたと思いますよ。王都に来て半年以上経っているじゃないですか」
ギルド職員に言われて、驚いた。そんなに時間が経っていたのか。
部屋を出るときにギルド職員に言われた。
「うちの食堂にも、一角ウサギのさばき方を伝授してくださいね」