作品タイトル不明
初めてのクラン
バスラのクランハウスに着いた。
煉瓦作りの三階建て。王宮のような華やかさがなくてホッとする。
と言っても、田舎の冒険者ギルドより立派な佇まいだ。
体格のいい獣人たちが待機していて、フォンが入った繭を運ぶと申し出てくれた。二人で抱えて、慎重に階段を登る。俺は、その後ろをルナたちとついていった。
日当たりのいい個室だ。真ん中にマットやクッションが置かれている。そこに繭を横たえた。
「ありがとうございます」
ルナが代表して礼を言った。
その横でサァラがクッションの場所をいじって、少しでも快適になるようにしている。
「ざっと話は聞いている。これからクランに加入するんだろ?
よろしくな」
獣人たちはそう言って、応接室に案内してくれた。
急いでクランへの加入手続きをしないといけないんだった。
応接室には、クランで事務担当をしている人が待っていた。クランの規則を説明して、問題なければ署名するように言われる。
俺たちはフォンを妖精の国に連れて行かれないために、名前を書いた。
「大丈夫。フォンだってわかってくれる」
ルナが自分に言い聞かせるように呟いた。
「妖精族の方が安全に繭を解けるのかもしれない。だけど、あんなふうに自分の都合を押しつけてくる人がいたら駄目だ」
俺は、ルナだけの責任じゃないと伝えたかった。
あの婆さんは、フォンの六歳から今までの人生を否定しかねない。俺が肉親の情を知らないからか――あの重い愛情には狂気を感じた。
自分の感情を押しつけるのは、果たして「愛」と呼べるのだろうか。妄執というか、うさんくささが漂うと言ったら、叱られるかな。
だけど、あの婆さんより、俺たちの方がフォンのことを知っていると主張したい。
「えっと……フォンの目が覚めて、クランから抜けることもあり?」
サァラがずばりと質問した。
「加入と脱退には一定の決まりがあります。ですが、クランマスターのバスラさんの口利きですから、特例が認められると思いますよ。
それよりも、早く冒険者ギルドに行って、手続きをしましょう。冒険者タグにクラン所属と書き込んでもらわないと」
事務担当者はさっと立ち上がったが、ピタリと止まった。
「フォンさんの冒険者タグは、もしかしなくても……繭の中ですかね?」
「……おそらく、そうです」
繭に包まれるのを見ていた俺が答える。
「まあ、パーティーの四人中三人のタグに書いてあれば、なんとかなるでしょ」
急に適当なことを言いだし、俺たちを促して冒険者ギルドに向かった。
ルナとサァラは王都の冒険者ギルドに顔を出していたらしいが、俺は初めてだ。
整然としている、それが第一印象だった。
一階のホールが広い。
掲示板を見ていて誰かにぶつかられることはなさそうだ。
警備担当らしき人が立っている。もめ事があったら即座につまみ出されるのだろう。
あ、それから、臭くない。埃っぽさと汗臭さが、皆無とは言わないが薄い。
都会はすごいな。
クランの事務担当者が受付で説明すると、別室に案内された。
普通の冒険者だったらカウンターでパパッと手続きするよな。なんか……特別扱いされているのか?