作品タイトル不明
夕食
迎賓館に戻ると、残っていた面々が出迎えてくれた。
馬車の音で戻ってくるのに気付いたそうだ。
ルナとサァラにハグされて、ものすごくホッとした。
もう夕飯の時間を過ぎていた。
彼女たちは、食べ終わっているそうだ。
そういえば、腹が減ったかもしれない。
食堂は大皿に料理が載っていて、好きなものを取っていく形式だった。
温かい野菜が食べたい。
きっと肉もしょっぱくないぞ。
急に空腹感に襲われる。ああ、緊張が解けてきたんだ。
「あれ、フォン。それっぽっち?」
サァラがフォンの皿を見て、心配そうな声を出した。
「あまり食欲がなくて……」
「緊張して疲れたよな。後でマッサージしてやるよ」
ルナが食後のお茶を飲みながら言った。
「そのサークレット、うまく取れそうか?」
ルナの質問に、フォンはスプーンを落とした。表情が硬く、言葉が出てこない様子だ。
「魔塔というところが、相談に乗ってくれるらしい。
もしかしたら、何日か王宮に行かないといけなくなるかもなんだ。
今日は迎賓館に泊まるけど、そのあとどうするか会議をするって、エリオット様が言っていたぞ」
フォンの代わりに答え、帰りの馬車での会話を伝える。
「ああ。『光牙の道標』さんたちも、依頼がここで終わるのか……どうなんだろうって」
サァラが果物を口に入れた。
「ダルグさんたちは何て言ってるんだ?」
訊いてから、肉にかかったソースをテーブルに落とさないよう、慎重に口に入れる。
美味い。ちょっとスパイシーで、肉がとろける。
「王城に残る組と領主の屋敷に滞在する組と、領地に帰る組に分かれるんじゃないかって。
王城に残る組は、今日謁見したメンバーの中から出るだろうという見立てだよ」
ルナがそう教えてくれた。
つまり、可能性があるのは俺とフォンか。
「もしそうなったら、ルナとサァラはどうする?」
あんまり考えたくないけれど、今日も有無を言わさずに連れて行かれた。今後もこちらの意思は確認されないかもしれない。
ルナとサァラはもう話し合っているようで、すぐに答えが返ってきた。
「領主様のお屋敷に滞在できるならそこにいるよ。
駄目なら、王都の冒険者ギルドに行く。おすすめの宿を訊いて、そこを拠点に依頼を受けたりして待ってる」
「あ、そっか……」
すごく……安心した。俺たちは自由な冒険者だもんな。柔軟に動けるんだ。
「フォン、もう部屋に行って寝るか?」
ルナがフォンに声をかけた。
フォンは小さくうなずく。
「お皿はあたいが片付けとくにゃ」
サァラが二人を見送った。
「フォンに何かあったん?」
サァラが小声で俺に問う。
「謁見で、フォンに子どもの頃の記憶があるかって話題になったあたりから、様子が変だった。
なんか視線を合わせないし、『訊かれたくない』みたいな壁を感じたから触れなかったんだけど……」
「それで正解にゃ。
……今夜、うなされるかも。
トーマ。フォンのベッドで抱っこして寝てあげるにゃ。ただし、エッチなしで」
ブフォ!
「おま、なに言って……」
吹き出しちゃったじゃないか。
迎賓館で男女が同じベッドで寝ていいのか?
しかも、言っている内容は生殺し案件――。