作品タイトル不明
謁見の行方
「では、内密にエドガー氏と連絡を取りましょう」
斜め後ろの人が言い、国王がうなずいた。
これで俺の話題は終わりかな? なんとなくそんな空気を感じた。
「ブロンズタートルの討伐法など、面白い案が次々と出てくるようだから、後日関係部署と歓談してもらえまいか」
ありゃ、まだ続きがあったらしい。
――で、国王の発言は依頼の形だが、命令だろうか?
エリオットが振り返ってくれないので、トゥランを見た。厳しい顔をして首を縦に振っている。
あ、断れないやつだな。
「……はい。仰せのとおりに」
これでいいか? トゥランが小さくうなずいてくれたから、正解みたいだ。
国王はフォンに目線を移した。
「フォンと言ったな。お主は妖精族なのか?」
「養い親から、そのように聞いております」
フォンの緊張が高まった気がする。
「そのサークレットが、問題の宗教団体に着けられた可能性があるのだな?」
国王の問いかけにエリオットがうなずいた。もう事情は説明済みのようだ。
「養い親に装着されたものです。恥ずかしながら、詳細は存じません」
フォンが答えた。
「いつ頃からサークレットを着けているのか?」
「え……いつ頃……? いつからだったかしら?」
フォンの目が宙を彷徨う。
「幼い頃の記憶はあるか?」
「……え、記憶?」
フォンが言いよどんでいる。
フォンは昔話をあまりしない。だが、俺も村にいた頃の話はしたくないから、特に気にしていなかった。
押し殺したため息が、グレタ婆さんから漏れた。
長い時間立ちっぱなしだ。足腰が辛そうに見える。
「各々、一日では話が終わりそうもないな。今日のところは王宮で休み、明日以降、関係部署の聞き取りに協力するように。
フォンに関しては、魔塔から魔道具に詳しい者を呼ぶので、安心してくれ。
ぬいぐるみの予約状況、増産計画は、こちらの担当者と明日以降会議をするように」
国王がそう告げて、謁見は終わった。
俺たちは再び礼を取り、国王が退出するのを見送る。
豪勢な衣装が見えなくなった瞬間、どっと脱力した。つ、疲れた。緊張した。
エリオットが重臣たちに軽く挨拶をした。
あ、まだ、お偉いさんたちがいたな。
頭がパンクしそうで、早くこの場を去りたい。早く挨拶終われ~。
ようやく退出することになり、俺たちはその後に付いていく。
とにかく、終わった。
いや、明日からまだ何かあるんだっけ。
もう今はこれ以上考えられない。
「あ、グレタ婆さん。足、大丈夫?」
声をかけると、顔を歪ませて「大丈夫なわけあるかい」と言われた。
そうだよなぁ。俺だって足が痛いのに。
トゥランが抱き上げて運ぼうかと提案した。
「そこまでじゃないよ」と赤くなりながら、グレタ婆さんは馬車まで自分で歩いた。
これから、馬車で迎賓館に戻る。
王宮で暮らすのも大変そうだな。呼び出されたら、その度に馬車に乗らなきゃいけないのか。
この時、俺はフォンが複雑そうな顔をしているのに気付かなかった。