作品タイトル不明
四日目 昼時
ピリピリとした雰囲気のまま、昼食を取る予定の宿場町に駆け込んだ。
安全地帯に入り、肩の力が抜ける。
襲撃の報告を受けて、宿場町の冒険者ギルドは騒然となった。
この宿場町は警備担当の部署がなく、冒険者が依頼を受けて警備をするとのことだった。
俺の足首はポーションで治ったはずなのに、ジンジンと違和感が残っていた。
ルナもさりげなく腹に手を当てている。
いつもは宿場で一番いい食堂に行くエリオットが、屋台の串焼きを食べている。
領主用の馬車に乗るときの狭いタラップに腰掛け、その前に騎士のトゥラン、商隊長のロイ、冒険者のダルグが立っている。
それぞれ、何かを食べながら相談しているようだ。
「お前たちも手早く食べて、動いてくれ」
と、兵士に声をかけられた。
屋台に買いに行く者と携帯食を食べる者、それぞれが食べながら仕事をした。
まず、馬車の点検だ。これは兵士たちがメインでやってくれる。
次に、ポーションの買い足し。魔法使いのオルドが中心になり、宿場の薬屋と冒険者ギルドに行った。
ポーションを使った怪我人は体を休めていいと言われ、俺とルナは怪我人の一団に交じって昼食を食べた。
「ポーションで強引に怪我を治すと、頭がそれを認識できずに違和感が出る。
そういうときは体を動かさない方がいいんだ」
一人の兵士がそう教えてくれた。
「冒険者の間ではあまり聞かない気がするな……」
ルナが言う。
「兵士は交替要員も計算して行動するから可能なんだろう。
冒険者はギリギリの人数で動くから、そんな悠長なことを言っていられないんじゃないか?」
なるほどな。勉強になるわ。
役割がダブらないようにパーティーを組むのが、常識だもんな。
宿場町の役人から、襲撃現場に行く冒険者が決まったと声がかかる。
今朝増員した、この国の冒険者パーティーから一人が案内に出る。爬虫類系の獣人だ。馬にまたがったら、ちょっと重そうに馬がよろめいた。
これで、増員した冒険者パーティーが三名抜けることになる。
現地で待機している二人と、今、出発した爬虫類系の一人。
あ、待機している二人は携帯食を持っているだろうか?
サァラに声をかけ、俺の予備の携帯食を爬虫類系の獣人に渡してもらった。
「すごく喜んでくれたよ」
サァラがにこにこ顔で報告してきた。
……もしかしたら、俺が渡すより喜ばれたんじゃないだろうか。猫耳の可愛さには誰も敵わないよな。
減員により、午後の配置計画を見直さなければいけない。
エリオットたちは、このメンバーのまま領境まで行くか、この宿場町の冒険者を雇うかを協議している。
増員するのは心強いが、その人がスパイではないという確証はない。
「今日の午後にはこの領を出られる。
増員はなし。トーマをダルグから離さないようにして、領境まで突っ走ろう」
エリオットは苦悩の末に、そう言った。
「え?」
少し離れていたが声は聞こえていたので、そちらに顔を向ける。
手招きされたので、相談している首脳陣のところに歩いて行った。
立ち上がった瞬間、ちょっと足首に痛みを感じてしまう。気付かれないよう、顔の筋肉を固定した。
ダルグが俺の顔を見た。
「あの獣人、お前を殺さずに生け捕りにしようとしていた。
俺たちの荷馬車を狙ってきたフルプレートアーマーの騎士は、レスタール王国の奴じゃないか?」
「すみません。騎士なんて縁がなかったから、わかりません」
このファルガン共和国に来て、なぜかギルドマスターと頻繁に顔を合わせたり、Cランクに上がったりしているけれど――。
レスタール王国では、田舎者のDランク冒険者だった。あちらのギルドマスターですら、見かけたことはあっても会話したことはない。
騎士なんて、噂話に聞く存在だった。俺が働くホテルのレストランに来ていたかもしれないけれど、私服では判別がつかない。
「アーデンがワイバーン討伐に成功したときに、凱旋パレードをしただろう。同じ村出身なのに、近くで見物できなかったのか?」
ダルグが眉をひそめる。
「パレードどころか現地に放置されて、村長の息子が迎えに行ったんですよ」
ホテルで出迎えたときの、ボロボロの姿を思い出すと胸が痛む。
ダルグから殺気が溢れた。
「なんだと?」
エリオットが手のひらをダルグに向けて、制止した。
「そういうことをしゃべられたら困る人物がいるということだ。すぐに出発しよう」