作品タイトル不明
二日酔い
昼過ぎに、俺の部屋に訪問者が来た。ふらつきながら、なんとか鍵を開ける。
「うわ、酒臭いにゃ。昨日、どれくらい飲んだん?」
サァラが自分の鼻を摘まんだ。
うう、すまない。そう思うが、声を出すのがしんどい。
よろよろと情けなく、無言でベッドに戻る。ベッドに腰を下ろすだけなのに、動きが鈍くなる。
「ドワーフと同じペースで飲むのは、無理があるだろ」
ルナに額を突かれて、俺はそのままベッドに倒れ込んだ。
そういえば、ドワーフは酒豪という噂を聞いていたっけ。
酔い潰れた俺をここまで連れてきて、また飲み直すと言って出て行ったな。
「初めてドワーフと飲んだのかしら? まるで水のように飲むから、驚いてしまうわよね。
お昼に行くのは……無理そうね」
フォンが俺の額にかかった髪を、手で整えてくれた。
「今日は一日寝てな」
え、誰の声だ?
ああ、グレタばあさんか。そういえば、昨日は女子会とか言っていたな。そのまま一緒にいるのか。
「食事がてら買い出しに行くけど、欲しいものはある?」
それもそうだけど、もっと大事なことがある。
「旅の支度……」
「ああ、最近やってる準備を思い出しながら、足りないのは買い足しておくよ」
ルナが頼もしい。
思わず安堵の息が漏れた。
「よろしく……」
なんとか、それだけは伝えた。
「仲間なんだから、当然だ。あたしたちのためでもあるんだし」
ああ、ここには「お前の仕事だろ」と怒鳴る人間はいないんだな。
「じゃあ、あたい猫草ガムを買っちゃおうかにゃ」
「サァラ、それはパーティーの財布からは出さないよ。自分で買いな」
ルナがばっさり切る。
「ええ、みんなで食べたら経費になるでしょ」
「猫草のおいしさは理解できません」
フォンがすました声で言う。
「クッキーは経費にしてるくせにぃ」
サァラが地団駄を踏む。
いつもの、くだらないやり取りだ。
「枕元に水を置いておくわね」
薄目を開けて横目で見ると、フォンのきれいな長い指が目に入った。
「ほら、眠る前に、鍵をかけないと」
ルナに引っ張り起こされた。
俺が扉を閉めて鍵をかけると、外から「行ってくる」と声が聞こえた。
小さく「いってらっしゃい」と答え、のそのそとベッドに戻る。
はあ、賑やかな団体様だな。
窓から気持ちいい風が入ってきて、カーテンを揺らす。
穏やかで平和な日常。失敗を笑い飛ばして、フォローしてくれる仲間たち。
今度こそ、本当の仲間だ。俺を利用したり、邪魔者扱いしたりしない――。
そよ風が頬を撫でた。なぜか涙が溢れてくる。
俺は……二日酔いの体を持て余しながら、幸せを噛みしめた。