作品タイトル不明
評価とモテは微妙に違う
「人員配置は、情報漏洩を避けるため当日発表します。トゥランさんとダルグさんはこの後、打ち合わせしましょう」
商隊長になるロイが、その二人を見た。
「王都に到着してからの動きは未定です。
誰かが関係部署に呼ばれるかもしれないし、話を訊かれるだけではすまないかもしれない。
そのあたりは随時連絡を取り合っていく予定です。連絡方法は王都に着くまでに検討しておきます」
ロイがそう締めくくり、ようやく顔合わせが終わった。
はあ、すっごく疲れた。
ルナは机にぐったりと突っ伏して「え~、あたし、危機感が足りなかったのかぁ。リーダーとして失格じゃん」と落ち込んでいる。
「それを言うなら、私も危機意識が低かったわ。サークレットを外せればいいと考えていたもの」
フォンがルナの頭をなでた。
「俺も、あんなふうに言われてびっくりだよ」
俺だって冒険者なのに、守られる立場というのも恥ずかしいし、悔しい。
そこに領主の孫、エリオットが話しかけてきた。
「ねえ、君。トーマ君」
「は、はい! なんでしょうか?」
まだ帰ってなかったのか。
「君はどんな女の子が好みなのかな?」
「え、はい?」
いきなり何だ? なんて答えればいい?
「貴族ではないお嬢さんもたくさん知っているからね。いい娘がいたら紹介するよ」
なぜ突然、見合いのような話を持ちかけられているんだ? 状況がまったく見えてこない。
「領主様に、トーマ君を囲い込むつもりがあるのですか?」
商業ギルドの会計担当の人が割り込んできた。
「だって、ブロンズタートルを傷つけずに討伐するのを考案したのも彼なのだろう? 薬師や芸術家からも注目されている、期待の人物だよ。
トゥルメルの冒険者ギルドが売りだす窓口になったら、人が集まって街が発展する可能性を秘めている」
ああ、ブロンズタートルか。そういえば、そんな話もあったなぁ。あれだって、冒険者ギルドの資料室で調べた、他の亀の弱点を応用しただけなんだけど。
「それなら、商業ギルドで可愛くて働き者のお嫁さんを斡旋します」
会計担当は、領主一族に張り合うつもりらしい。
「それならそれでいいけど。この領内の娘にしてくれよ」
エリオットは、あっさり引き下がった。
なんだこの茶番。俺はダシにされてるだけじゃないか。商業ギルドに売り渡されたみたいな……。領地を繁栄させるために考えているのは立派だが、あまり面白くない。というか、不愉快だ。
「そういうの、お呼びでないにゃ!」
サァラが俺に抱きついて、勝手なことをしゃべっている人たちを牽制した。
ありがたい。ホッとした。サァラの可愛さで、断っても角が立たない気がする。
「そういうことなんで、お気遣いいただかなくても大丈夫です」
はっきりと宣言する。ここは「え、可愛い子? 紹介して」なんて、ふらついたら駄目な場面だ。
「おお、羨ましい。モテモテじゃないか。余計な口出しをしたな、失敬」
そう言ってエリオットは離れ、騎士のトゥランが打ち合わせをしている方に歩いて行った。
いや、モテてるんじゃなく、金勘定に巻き込まれているだけだろ。 そこに俺の人柄とか人生設計とか、まったく考慮されてないもんな。
「人」を見る前に利を計算して、それを「好意」のように錯覚させる。貴族も商人も油断ならない。
親父ギャグを言っていたドワーフに話しかけられた。
「ちょっといいか?」