作品タイトル不明
強者たちが集合
しばらく貴賓室のソファーの辺りにいたのだが、ギルド職員に促されて会議用のテーブルに移動した。代表者たちが案内されて席を埋めていく。
Aランクパーティーのリーダーは犬系の獣人、傭兵らしき女性の獣人、商業ギルドの被服部門担当といった顔ぶれだ。
ルナも席に案内されたが、座るのをためらっている。それぞれが強者の雰囲気を醸し出していて、Cランクパーティーの俺たちは場違い感がすごい。
そこに冒険者ギルドのギルドマスターが入ってきた。
「おう、ルナ。なんで立ってる。リーダーなんだから座っとけ」
「え、でもさぁ……」
「悪いが、今日はお前に構ってやる余裕はねぇ。割り振られた役目を果たしてくれ」
ギルドマスターが少し緊張気味に、妙なことを言う。
状況がわからないのは俺たちだけみたいだ。
ルナが渋々と座った。フォンがその肩にそっと手を置いて、「私たちが後ろにいるわ」と囁いた。
廊下から微かなざわめきが聞こえてきた。
現れたのは――たぶん、貴族。ギルドマスターの緊張は、このせいか。
青年は、領主の孫だと自己紹介した。後ろには領主一族の護衛騎士がついている。
マジか?
領主の孫が王都まで同行するって、なんでだよ? ぬいぐるみを運ぶだけだろうが。
ギルドマスターが会議の開始を宣言した。
「忙しいところお集まりいただき、恐縮です。
本日の議題は、三日後に王都に向けて出発する商隊の護送についてです。対象は、王侯貴族に納品するぬいぐるみ二十体です。
商業ギルドさん、間違いはないですか?」
ギルドマスターが敬語を使っている。お貴族様がいるから、当たり前か。
「はい。商品については、その通りです。
おそらく今後の作成数などについて質問が出るでしょう。ぬいぐるみ作成の進行管理をしている職員を同行させます。それから、ぬいぐるみを最初に作成した農婦にも同行を依頼しました」
ああ、グレタばあさんね。
「それはいいね。きっと、作成秘話なんかを聞きたがる方がいらっしゃると思うよ」
領主のお孫さんからお褒めの言葉が出た。
「王都までは五日ほどです。進行管理や隊列に関しては、領主の騎士団から任せてほしいという話が出ています。それでよろしいか?」
ギルドマスターは、冒険者たちに顔を向けて、確認を取る。
「騎士たちに、冒険者と協力する意思があるならいいが。こちらを見下す傾向があるだろう。部下でもないのに下っ端として扱うつもりなら、依頼を断る」
Aランクパーティーの強面が、はっきりと言った。
「騎士団の中でも、冒険者に対して偏見がない者を選出する。貴殿たちの意見をきちんと聞き、相談して進めるよう指導するので、安心してほしい」
騎士が請け負った。
傭兵の女性が挙手をして話し出した。
「私は別の街を拠点にしています。今回は、呼ばれて来ました。
私が傭兵の立場から発言すると、話し合いが収拾つかなくなるのではないですか?」
ギルドマスターがニヤリと、いつもの顔になって笑った。
「いや、必要だ。
貴重な品を運ぶだけなら、商業ギルドに任せておけばいい。だが、このぬいぐるみは盗賊だけじゃなく、貴族たちが横槍を入れて奪いに来る可能性がある」
「途中の領主に積み荷を要求されたとき、断るために私が盾になりましょう」
領主の孫が微笑んだ。
「貴族や裏家業の者が依頼を受けて盗みに来ることも、想定しています。その場合は身柄を確保して、尋問……情報を引き出さないといけません。
君は、そのあたりを得意としていると聞いたのですが?」
「理解しました」
傭兵が軽く頭を下げた。
「盗賊などに襲われた際は、騎士の半分はご子息の守りに入ります。
君たちには荷物の方をしっかり守って欲しい」
騎士がそう言った。
「ああ、そういう役割分担か。残りの騎士の半分をどうするかは……」
Aランクのリーダーが言いかけたところ、ギルドマスターが手で制止した。
「もう一つ、重要な仕事があるんだ」
ギルドマスターが深刻な雰囲気を出すので、貴賓室に緊張が走った。
「あの、あたしたちは同道しない方がいい気がしてきたんですけど」
ルナが恐る恐る口を出した。
「グレタばあさんが可哀想だろう。話し相手として参加するべきだと思うよ」
商業ギルドの職員が、笑顔なのに逆らえないような圧を出してきた。