作品タイトル不明
向上心とは
俺とフォンの組み合わせで動く。フォンが風魔法で鉱石スライムの動きをコントロールし、俺がボウガンで仕留める作戦にした。
持ってきたボウガンは中型のものだ。大型のように貫通力はない。小型のように連射できるわけでもない。
一射を確実に、狙いを定めて、素早く次を装填する。
一人だと隙ができるが、その間はフォンにカバーしてもらえば、大丈夫だ。できる。
深呼吸して、鉱石スライムの気配を探しながら歩いた。
俺が前方に意識を向け、後方はフォンに任せた。ルナとサァラはその間を歩く。
カツンコツンと音がした。
ルナとサァラが後方に下がり、フォンと俺が待ち受ける。
俺がボウガンで正面に一射。
フォンがウィンドボールを構えている。
鉱石スライムが縦に伸びたら、その腹を狙う。もし後ろに逃げようとしたら、進路にぶつけて足止めをするのだ。
逃げようとしたので、フォンは後ろにウィンドボールを投げた。
その間に充填したボウガンで俺は二射目を放つ。ガツンと音がして、少し表面が削れた。
削れたところにウィンドボールを当てたら、破片が飛び散った。
鉱石スライムがキィーと鳴き声を上げる。効いているんだ。
この調子で繰り返せば……と手応えを感じたときに、それが来た。
ラグラットがすごい勢いで向かってきたのだ。
「ネズミは任せな!」
ルナの声が飛ぶ。
一瞬焦ったが、二匹同時は想定内だ。
落ち着いて対処すれば問題ない。
そう思った。
そのはずだったのに、石つぶてが飛んできた。
「あなたたち、何をしているの?」
教場指導をしていた女性の冒険者が叫ぶ。
子どもたちが俺たちに向かって……いや、フォンに向かって石を投げている!
フォンの手にはウィンドボールがある。
だが、これを人に向けたら大怪我をさせてしまう。
俺は判断に迷ってしまった。
目の前にモンスターがいる。だが、それに対峙している間に、石つぶてとはいえ急所にあたるかもしれない。接近されて致命傷を負わされることもあり得る。
カツ、カツ、カツと、ナイフが石つぶてに当たり、落下した。このナイフはどこから飛んできた?
小柄な人影が、子どもたちに容赦のない蹴りを入れた。
鼠獣人のミナスだ。
「子どもだからって、なに油断してんのさ。冒険者タグを持ったら、もう一人前だろ」
そう言いながら、子どもたちを縛っていった。
「ぼけっとしてないで、地上の職員に連絡入れなよ」
「あ、はい!」
ミナスに怒鳴られ、教場訓練の引率者が共鳴石を取り出した。
近くにいた冒険者たちが駆け寄ってきた。
この冒険者は昨日から何度も見かけた顔だ。俺たちの護衛役なんだろう。
一連の騒動に気を取られて、俺は鉱石スライムの一撃を食らってしまった。
スネがものすごく痛い。
骨折じゃなかったのが救いだ。
俺たちは二層の退避スペースに早めに行くことにした。
「ポーション飲むか?」
ルナに訊かれた。
「痛いけど折れてないからいい」
打撲用の塗り薬で、一晩様子を見ることにする。
ポーションはすごく高価だ。後で本当に必要になるかもしれないから、温存しておきたい。
「夕食まで休んでるにゃ」
サァラに言われて、甘えることにした。
あの子どもたちはなんだったんだろうと考えながら、寝てしまった。
揺り起こされたときは、パンとスープが用意されていた。
夕食時、ミナスはまるでパーティーメンバーのように近くに陣取ってきた。
先ほど手助けしてもらったので、スープくらいはお裾分けしよう。
「うん、旨い。やっぱり、このパーティーならいい。入ってやるよ。
あたしを入れたら、すぐにBランクに上がれるしさ」
「先ほどのお礼はしますが、加入はお断りしますわ」
フォンが外向けの、仮面のような笑顔で返事をした。
「そういう、向上心がないの――感心しないなぁ」
受け入れない俺たちが悪いかのように、言ってくるな。
「俺が昔いたパーティーは、DランクからCランクに上がろうと必死になってた」
「でしょう? 努力って大事だよね」
ミナスが前のめりになった。
だけど、違うんだ。
「それで無茶して、一瞬Cランクになったが、あっという間にEランクに下がったらしい。
戦闘スタイルや実績を考えて、適切な依頼を選んでいればよかったんだ。人からの賞賛を求めて、道を誤ってしまった。
どのランクだって、正々堂々と胸を張っていいはずだ」
「なに言ちゃってんの? 怠け者の言い訳じゃん」
実績を重ねて得たランクと、人から評価されるためのランク上げ――結果は同じでも、得た後の人生が違ってくる。
たぶん、ミナスとは話し合いが成立しない。