軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

46 お手伝いです

久しぶりに食べた母親のオムレツは、やはり絶品だった。

作るたびに具が違うのだが、今日はニラと豚の挽肉だった。

あと卵にチーズを混ぜたらしい。

細かい理屈はよく分からないが、とにかく美味しかった。

食べてる間中、ローラは頬が緩みっぱなしになるのを止められなかった。

そしてローラだけでなく、シャーロットとアンナも一口食べた途端、目を見開いていた。

「な、何ですの、このふわふわとろりなオムレツは……!」

「私、こんなの初めて」

一心不乱にオムレツを食べるローラたち三人を見つめて、ドーラは幸せそうな顔をする。

「娘が一気に増えたみたいで楽しいわぁ。三人とも、しばらくここに泊まって行きなさいよ。夏休みは一ヶ月以上あるんでしょ?」

今は七月の終わりで、夏休みは八月一杯までだ。

ブルーノの出した退学願を撤回させるという目的は早々に達成してしまったから、あとは遊びたい放題である。

「せっかく帰ってきたんだし、ゆっくりしていきたいけど……シャーロットさんとアンナさんは大丈夫ですか?」

「私は基本的に暇だから大丈夫。でも宿代とか払えないよ?」

アンナはオムレツをもぐもぐしながら言う。

「もう-、何言ってるのよー。ローラの友達からお金とるわけないじゃない」

「安心した。お世話になります」

アンナはぺこりと頭を下げる。

「わたくしも特に予定はありませんけど……魔法の特訓は休みたくないので、この近くで行なっても構いませんか?」

「大丈夫よ。この辺はのどかなだけが取り柄の場所だから。標的になるようなモンスターはいないけど、代わりにローラが相手したげればいいでしょ」

「うん。いつでも相手しますよー」

するとシャーロットがギラリと目を光らせた。

「いつでも……つまり朝から晩までローラさんと特訓できる!? ではしばらくご厄介になりますわ! よろしくお願いいたします!」

「あらあら。ローラとシャーロットちゃんは友達であると同時にライバルなのね。素敵な関係ねぇ。ああ、でも自然破壊だけは、ほどほどにね」

ドーラはシャーロットの顔付きを見ただけで、二人の繋がりを言い当てた。

流石はAランク冒険者にして母である。

「それにしても、三人とも凄い食欲。特大オムレツにしたのに、もう食べちゃったの?」

「だってお母さんのオムレツは世界一なんだもん!」

「うちのシェフよりも料理がお上手ですわ」

「毎日食べたらほっぺが融解する」

褒められまくったドーラはご機嫌だ。

母が褒められてローラもご機嫌だ。

それから空になった皿を洗おうというとき、意外にもアンナが「手伝う」と名乗りでた。

「掃除洗濯の類いは得意」

失礼な話だが、ローラは驚いてしまった。

アンナはいつもボーッとした顔をしているので、家事とは無縁だと思っていた。

人は見かけによらないのだなぁ、と反省する。

「では、わたくしもお手伝いしますわ!」

シャーロットも申し出る。

となればローラも手伝うしかない。

入学する前は皿を洗ったりテーブルを拭いたりしていたから、お手伝いはお手の物である。

「皆ありがとう。女の子が沢山いると助かるわ」

ドーラは嬉しそうに言う。

しかし――。

ガシャーン。

キッチンに皿の割れる音が盛大に響き渡った。

シャーロットが落としたのだ。これで二枚目だった。

「も、申し訳ありません……手がズルッと滑ってしまって……」

シャーロットはわたわたと皿の破片を拾い集める。

ローラはそれを手伝いながら、疑問を口にした。

「……シャーロットさん。もしかして家事とか駄目なタイプですか?」

「うぅ……全てメイドたちがやってくれるので……面目ないですわ」

「シャーロットさんの家にはメイドさんがいるんですか……」

どうやらお金持ちらしい。

ガザード家が由緒正しい魔法使いの家だというのは知っていたが、まさか見た目通りのお嬢様だったとは。

とはいえ、しっかり者のシャーロットに抜けているところがあって、ちょっと面白い気分になるローラであった。

一方アンナは、自信満々だっただけあり、無難にこなしている。

「アンナちゃんのおかげで、あっという間に洗い終わっちゃったわ。ありがとう」

「どういたしまして」

褒められたアンナは照れくさそうに頭をかいた。

「ぐぬぬ……まさかこんなところでアンナさんに敗北するとは……!」

「ふふ。シャーロットちゃんは魔法の特訓だけじゃなくて、夏休みの間、ここで家事の特訓もしましょうか?」

「よろしいのですか!? ぜひお願いしますわ!」

こうしてシャーロットはドーラに弟子入りすることになった。