軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

254 魔法少女が沢山です

無数のドラゴンが飛ぶのを目撃したローラたちは、大急ぎでそこを目指した。

するとその途中、山の向こうから蛇のようなものが、三本も空に向かって伸びて行くではないか。

雲まで届く長さのそれは、黄金のウロコがあり、うねうねと動き、見れば見るほど蛇に似ている。

だが、先端にある顔だけは違った。

ドラゴンである。

無数のドラゴンも驚異だが、ローラはあの黄金の三匹から、もっと恐ろしいプレッシャーを感じる。

あれと戦うのは自分の使命であるとローラは思った。

今すぐ倒さなければ、きっと大変なことになってしまう。

そんな確信があった。

「ローラさんが退かないというのであれば、わたくしたちもご一緒しますわ!」

「私たちは三人と一匹のパーティー。ずっと一緒。一人では行かせない」

「いや、駄目ですって! あの大きな金色のドラゴンが見えないんですかっ? 命の保証なんてないんですよ!?」

「あら。そういうローラさんには命の保証がありますの?」

「な、ないですけど……」

「なら、わたくしたちだけでなく、ローラさんも帰るべきですわ」

「そういうわけにはいきません! あのドラゴンたちを何とかしないと!」

「そう。何とかしないといけない。だから一緒に行こう」

「命の保証がないというのは、全員同じですわ。ならば、このまま進むにしても、引き返すにしても、皆で一緒に、ですわ」

「ローラとハクだけってのは駄目だよ」

シャーロットとアンナはローラの左右に並んで、真面目な顔で言う。

ローラは何か反論しようとしたが、思い浮かばなかった。

かつて王都で吸血鬼が暴れたとき、ローラは戦いに参加したが、シャーロットとアンナは留守番だった。

命の保証がないからだ。

そして今もまた、このまま進んでいけば命の保証はない。

しかし吸血鬼の事件と違うのは、ローラでさえ殺されるかもしれないということだ。

そう。条件は同じ。

いつも遊びでモンスターと戦うときは、全員が安全。

あの黄金のドラゴンとの戦いは、全員が危険。

同じなのだ。

それなら――。

「……強情な人たちですね……もう勝手にしてください」

ローラは肩をすくめて、呆れた演技をした。

そのとき。

皆で一緒に行こうと決めた、そのとき。

体の震えが止まった。

ああ、自分は震えていたのかと気がついた。

雲まで伸びる黄金のドラゴンを見てから、ローラは小刻みに震えていたのだ。

なのに、この二人と一緒に行くと決めた途端、心が楽になった。

不思議な話だ。

危険なことに変わりはないのに。

「ローラ。笑ってる。かわいい」

「わたくしたちの頼もしさに今更気づいたという様子ですわ!」

「ぴー」

「べ、別にそんなんじゃありません! ほら、もうすぐ山を越えますよ!」

照れ隠しにローラは前方を指さした。

そして山を越え、盆地上空にさしかかる。

すると、驚くべき光景が飛び込んできた。

三匹に見えていた黄金のドラゴンは、実は巨大な三つ首のドラゴンだった。

そして、それと戦っている大賢者と、魔法少女のような格好の見知らぬ少女。

彼女らは信じがたいほど大規模な重力魔法で三つ首のドラゴンを拘束していた。

ドラゴンは肉が千切れ、骨が砕け、しかし即座に再生し、また崩壊していく。

そんな状態なのに、ドラゴンは三つの頭を上げて、大賢者たちに口を向けた。

口の奥に、膨大な魔力反応!

あれを喰らって耐えられるものなど、この地上に存在しないだろう。

大賢者と少女は、重力制御しながら攻撃魔法を放ち、ドラゴンの頭部を破壊するという神業を見せた。

だが、破壊できたのは二つ。あと一つ残っている。

それを見た瞬間、ローラの体は動いていた。

そして、示し合わせたかのように、シャーロットとアンナも。

黄金ドラゴンの残った口から、魔力の塊が吐き出されようとしていた。

大賢者と少女は、重力魔法を解除し、回避行動を取ろうとする。

が、間に合わない。

二人の顔に恐怖が浮かび上がる。

しかし、そのとき。ローラたちはすでに黄金ドラゴンの頭上にいた。

「「「仲良し三人組キィィィィック!」」」

黄金ドラゴンの最後の頭部を粉砕。

攻撃の阻止に成功した。

「Cランク以上のモンスターと戦うのは校則違反よ。ローラちゃん、シャーロットちゃん、アンナちゃん。それにハク」

大賢者が冗談めかして言う。

その表情は、とびっきりの笑顔だったが、目の端に涙が滲んでいるように見えた。

「えへへ。まあ、そう堅いこと言わないでくださいよ。学長先生が黙っていてくれたら、エミリア先生に怒られずに済みますから」

ローラには大賢者の表情の意味が何となく分かった。

さっきローラは、皆と一緒に行くと決めたとき、恐怖がウソのように解けていくのを味わった。

大賢者も、それに似た気持ちになったのだろう。

「ローラさんの実家から飛んできたら、強そうなモンスターがいたので乱入させて頂きましたわ! 未知の敵にも臆せず挑む。それが冒険者なのですから!」

「まあ、場合によるけど。今はやらなきゃ学長先生たちが死んでた。ところでこの金ぴかのモンスター、何?」

「ぴー」

と、皆が見つめる中、黄金ドラゴンは再生を始めていた。

全ての頭部を潰されたというのに、元に戻りつつある。

足や尻尾が再生するというならまだ分かる。しかし頭を潰しても元に戻ってしまうなら、一体どうなれば死ぬのだろうか。

不死身の生物なのではないか。

そんな疑問が浮かんでくる。

「あれはキミたちが古代文明と呼ぶものが作り出した最強のモンスター。パニッシャーさ。昔は首が二つしかなかったんだけどね。いつの間にか三つ首になっていた。いやはや、助かったよ。キミたちが来てくれなかったらアウトだった。小さいのに凄い強さだね。どちら様だい?」

見知らぬ少女が黄金ドラゴンの正体を教えてくれた。

パニッシャーというらしい。

なるほど、強そうな名前だ。

それはともかく、誰なのだろうか?

「ああ、ごめんよ。まずボクから名乗るのが礼儀だね。ボクの名前はアルピナ・アサイル。時間がないから雑に説明するけど、初代魔法少女の一人さ」

「本当に雑な説明ねぇ」

横で大賢者が苦笑する。

「ま、魔法少女!? それも初代! 凄いです! あ、申し遅れました、私はローラ・エドモンズです」

「わたくしはシャーロット・ガザードですわ」

「アンナ・アーネットだよ。よろしく」

そうローラたちが自己紹介すると、

「この子たち、私の学校の生徒なのよ」

と、大賢者が補足してくれた。

「へえ。カルロッテの教え子か。だから強いんだね。まあ、それにしても強すぎる気もするけど、とても頼もしいよ」

アルピナは飄々として大賢者よりも捉えどころのない雰囲気だが、ローラたちを頼もしく思ってくれているのは本当のようだ。

「そして私の頭に乗っているのはハクです」

「ぴぃ」

「ハクって、神獣ハクかい? 成体だったら一緒に戦ってもらえるんだけど、生まれたばかりみたいだね」

「ハクは小さいけど強いですよ!」

「ぴー!」

「へえ。じゃあ一緒に戦おう」

「それはそれとして、魔法少女の初代ってどういうことなんですか!? 学長先生みたいに長生きしてるんですか!?」

「古代文明で最初に作られた魔法少女の一人なんだよ。ボクが知る限り、その前に魔法少女はいなかったから初代というわけさ」

「古代文明の人なんですか! じゃあ一万歳以上!?」

「はは、違うよ。ボクは永遠の十七歳だよ。なにせ魔法少女なんだから」

「よく分からないけど凄いです! お会いできて光栄です! 実は私たちも魔法少女なんですよ! シャーロットさん、アンナさん、変身です!」

「ふふ……魔法少女になるのは久しぶりですわ」

「へーんしん」

アンナの気の抜けた号令とともに、ローラたち三人の体が光に包まれる。

そして一瞬で服装が魔法少女のものに変わってしまった。

こんなこともあろうかと、ローラはつねに次元倉庫に魔法少女の衣装を入れて持ち歩いていた。

それを取り出して、体を魔法の光で包んだ隙に急いで着替え、元々着ていた服を次元倉庫にしまったのだ。

これが変身魔法のからくりである!

「わぁお! この時代の魔法少女に出会えてボクも光栄だよ。皆で戦えばパニッシャーにも勝てるはずだぜ!」

アルピナが大げさに喜んでいる横で、大賢者が不機嫌そうな顔をする。

「私の衣装はないのかしら?」

「学長先生の衣装もお母さんが作ってくれたんですが、エミリア先生にあげちゃいました」

「な、何てこと!」

「でも安心してください。こんなこともあろうかと、もう一つ作ってもらいましたから。さあ学長先生。変身です!」

ローラは大賢者を魔法の光で包む。そして次元倉庫の門を開き、光の中に魔法少女の衣装を放り投げた。

そして光が晴れると、見事、魔法少女に着替えた……もとい変身した大賢者がそこにいた。

「うふふ。この歳で魔法少女はちょっとだけ照れくさいわね」

「なぁに、大丈夫だよカルロッテ。魔法少女は十七歳から歳を取らないことになってるんだ。だからキミも十七歳だよ。似合ってるぜ、いえーい!」

「ありがとうアルピナ……魔法少女カルロッテ・ギルドレア! 大賢者とは世を忍ぶ仮の姿よ!」

大賢者は名乗りを上げ、ノリノリでポーズを取った。

するとアルピナもそれに続く。

「魔法少女アルピナ・アサイル! 初代の可愛らしさに悶絶するがいいぜ!」

そうなればローラたちもポーズを取るしかない。

「魔法少女アンナ・アーネット。魔法少女だけど剣士だよ」

「魔法少女ゴージャス・ゴシック・シャーロット、華麗に見参ですわ!」

「魔法少女ローラ・エドモンズ! クラスの皆には内緒ですよ!」

ローラたちはズバッと即興でポーズをとる。

パジャレンジャーの頃からやっているので、こういうのは得意なのである。

「ぴー」

ハクも翼を広げて格好をつけた。

そうして名乗りを上げた魔法少女たちは、眼下で再生途中だったパニッシャーへ向けて、一斉に攻撃を開始する。

それは太陽が地上に落ちてきたがごとき苛烈なものだった。

まず大賢者が、百本以上の巨大な氷柱を上空に形成する。

それらはパニッシャーに超音速で降り注ぎ、ウロコを貫き肉を抉り、地面に縫い付けて動きを封じた。

続いてアルピナが天候を操った。灰色だった雲が黒く変わっていき、まるで夜のように薄暗くなってしまう。

しかし一転。

目が眩むほどの閃光が轟音とともに降り注ぎ、世界が光で包まれた。

それは無数の稲妻だ。

パニッシャーの表皮を焼いただけでなく、氷柱を通して内部に流れ込む。

三つの口から血があふれ出した。

シャーロットが炎の玉を放ち、アンナが魔法剣から嵐と雷を同時に撃ち出す。

ローラは腰から剣を抜き、刃に魔力を流して振り下ろした。すると光が剣の形になって飛んでいき、徐々に大きくなりながらパニッシャーに近づく。命中したときには、パニッシャーの胴体を貫通するくらいになっていた。

ハクも口から光線を吐いて攻撃してくれた。

「ひゃぁっ、こんなに攻撃したのに、また再生していきますよ!」

まだパニッシャーが生きているというだけでも驚きなのに、元の姿に戻ろうとしているのだ。ローラが悲鳴を上げるのも無理からぬことだろう。

「いいえ。最初はあのくらいの傷でも一瞬で元に戻っていたのに、かなり遅くなってきたわ」

「そうだね。少なくとも頭を全て潰せば、魔法少女の決めポーズをやる時間を稼げるくらいになったんだ。きっと、あと一押しだよ。気合い入れて攻撃しようぜ」

パニッシャーはいわば回復魔法を常時使い続けているようなものだ。

普通ならあっという間に魔力が足りなくなるが、パニッシャーの無尽蔵にすら思える魔力が、あの冗談じみた再生能力を支えている。

しかし無尽蔵に見えるからといって、本当に魔力が無尽蔵にあるとは考えにくい。

つまり、パニッシャーの魔力がなくなるまで攻撃を続ければ勝てる。

よく言えばシンプル。悪く言えばゴリ押しの作戦だ。

だがゴリ押し以外に方法は思い浮かばないし、こうして効果が出ている。

もともと大賢者とアルピナでかなり削ったところに、更にローラたちが参戦したのだ。

勝てる、はず。