軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120 突撃ラーメン売り歩き作戦です

王都から徒歩で二時間ほどの、深い森の奥。

そこで冒険者のパーティーと、黒く巨大なモンスターが戦っていた。

パーティーの名は、真紅の盾。

この近辺では名を知られた一流の冒険者たちだ。

討伐してきたモンスターは数知れず。

だが、そんな彼らは今、全滅の危機にさらされていた。

なぜなら相手のモンスターはケルベロス。

家ほどの大きさを誇る、黒い三つ首の犬だ。

冒険者ギルドが定めたランクは、Aマイナス。

ベヒモスと互角だ。

かつて真紅の盾はベヒモス相手に苦戦し、秘密結社カミブクロンを名乗る女の子たちに救われたことがある。

しかし、あれから修行し直した。

装備も整えた。

もう負けないつもりだった。

だが、足りなかったらしい。

それに、強い人間と弱い人間がいるように、同じ種類のモンスターでも個体によって強さは変わる。

あのとき戦ったベヒモスも、通常より圧倒的に強い個体だった。いわゆる変異種。

今目の前にいるケルベロスも、おそらく変異種だろう。

刃が通らないし、魔法も弾かれる。

逃げようにも、足が速すぎて逃げ切れない。

つまり絶体絶命。

リヴァイアサンのときもベヒモスのときも、都合よく助けが来たが……今度ばかりはもう無理かもしれない。

真紅の盾の誰もが諦めた、そのときである。

「ラーメン、ラーメンはいかがですか! 狩りの後の一杯は、ラン亭の冒険者ラーメン!」

少女の声――。

それも聞き慣れた少女の声が近づいてきた。

あるときはパジャレンジャー。

あるときはカミブクロン。

その実態は冒険者学園の女子生徒。

今まで何度も真紅の盾のピンチを救ってくれたあの少女たちが、またタイミングよくやってきたのだ。

それにしても今度は大所帯だ。

いつもの三人だけでなく、この前から加わった獣人とドラゴンの赤ん坊。

あと大人の女性が二人に、謎の屋台まである。

あれはもしかして、近頃話題になっているラーメン屋という奴だろうか。

王都で何か珍しいことが起きたら、その半分くらいはあの少女たちが関わっているのかもしれない――などと考える真紅の盾たちだった。

ローラたちは城門の外に出た途端、屋台を引っ張り加速した。

なにせ冒険者学園の教師に、トップクラスの生徒三人。それから獣人だ。

その身体能力は野生動物より高い。

ゆえに屋台は、馬車よりも速く疾走していく。

しかしランだけは一般人なので、ローラたちの動きに付いてこられない。

なので屋台の屋根に乗せて運ぶことにした。

なにやら「速すぎるアルぅぅぅ!」と悲鳴を上げているが、これでも抑えているのだ。

それにローラの頭の上にいるハクはこの速度でも平然としている。

慣れと根性さえあれば耐えられるはずだ。

そうやってドタバタと森を突き進んでいくと、誰かがモンスターと戦っている気配が奥から漂ってきた。

「ラーメン、ラーメンはいかがですか! 狩りの後の一杯は、ラン亭の冒険者ラーメン!」

などと叫びながら突撃していくと、いつもの冒険者パーティーがケルベロスと戦っていた。

確か、真紅の盾という名前のパーティーだ。

以前、チンピラの居場所を教えてくれた親切な人たちだ。

「お客さん候補がピンチです。エミリア先生、十万ボルトです!」

「分かったわ! って、どうしてローラさんが仕切ってるのよ」

そう言いつつもエミリアは電撃を放った。

更にシャーロットが大きな氷の塊を出現させ、それを超スピードで叩き落としてケルベロスを昏倒させる。

すかさずアンナが飛び出し、剣で相手の足の筋を斬っていく。

「ほら、冒険者さんたち! ケルベロスが倒れましたよ! 今がチャンスです。倒しちゃってください! そしてラーメンを食べるのです!」

「お、おう」

冒険者たちは戸惑いつつもケルベロスの頭を集中攻撃し、トドメを指した。

「お見事です! さあ、お疲れでしょう。疲れを癒やすため、ラーメンを食べるのです。ニンニクと野菜と背脂のトッピングは無料ですよ!」

「……君たちにはまた助けられたな……これで三度目か。本当にありがとう」

「え、何のことです? パジャレンジャーとかカミブクロンなんかと勘違いしてませんか?」

「そ、そうか……あれは一応、正体を隠しているんだったな……」

一応ではない。

立派な変装のつもりである。

何だか一部の人に正体がバレバレになっているが、そこは空気を察して、気づかないふりをして欲しい。

「とにかく助かったよ」

「いえいえ。私たちも前にチンピラたちの居場所を教えてもらいましたからね。助け合いです。まあ、そんなことはともかく、ラーメンを食べてください!」

「分かった。いただこう。それにしても、ラーメンを売るためだけにこんな場所まで……?」

「はい!」

ローラが元気よく答えると、真紅の盾のメンバーは目を点にしていた。

きっとローラたちの斬新な商法に感心しているのだろう。

「カウンター席が足りなくて申し訳ないアル。その辺の岩を椅子代わりにして欲しいアル」

ランはラーメンをゆでながら言う。

そしてローラたちが、完成した冒険者ラーメンをお盆に入れ、彼らのもとへ運んでいく。

「おお、これが噂のラーメンか。凄いボリュームだし、実に美味しそうだ。ところで、さっきから気になってたんだが……あんた、もしかしてエミリア・アクランドか……?」

冒険者の一人が、エミリアに視線を向けた。

するとエミリアは肌を赤くし、チェイナドレスを手で押さえる。

しかし、そんなことをしても太股は隠せない。

「エミリア先生って有名人なんですね!」

「流石はAランク冒険者ですわ」

「一人でドラゴンを倒したという逸話は私も聞いたことがある」

生徒三人の賞賛を浴びたエミリアだが、あまり嬉しそうではない。

「おお、やはりエミリアだったか! 俺、あんたのファンなんだよ!」

「お、俺も!」

真紅の盾の男性メンバーは鼻息を荒くした。

それを女性メンバーが冷ややかな目で見る。

注目の的になったエミリアは、涙目になって屋台の後ろに隠れてしまった。

「エミリア先生、意外と照れ屋なんですね」

「だって、その人たち、脚ばっかり見てくるんだもの!」

「「「「うひょー、Aランクの美脚だぜ!」」」」

などと叫ぶ男性冒険者たちを、女性冒険者たちが後ろから殴りつけた。

「遊んでないでラーメンを食べて欲しいアル。麺が伸びてしまうアル」

こうして突撃ラーメン売り歩き作戦は順調な滑り出しを見せた。

真紅の盾から代金を徴収し、次の狩り場へと向かう。

その途中――。

「あ、ところであなたたち。さっきケルベロスに攻撃してたわよね。Cランク以上のモンスターと戦うのは校則違反よ」

「ふぁっ!? 今更そんなことを言うんですか!?」

というわけで、次からはエミリアが一人でモンスターを倒すことになった。

ローラは魔力を探知し、冒険者を探すことに徹する。