軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ミーシャが構築した六つのガラス球――氷の世界。

< 銀界魔弾(ゾネイド) >の砲台たる青きマグマを吸収するその権能に、凶悪な魔弾が襲いかかる。

「このっ!」

サーシャは闇の日輪を瞳に浮かべ、黒陽にて迎撃を試みる。

放たれた六つの視線。黒き光が襲い来る六発の魔弾を飲み込む――その直前で、魔弾はかくんと弾道を変えた。

「氷の壁」

雪月花を舞わせ、ミーシャは曲がる魔弾を阻む氷の壁を無数に出現させる。

しかし、その隙間を縫うように魔弾は更に弾道を変化させながら、六つのガラス球を撃ち抜いた。

穴が空いたその場所からは、どっと青いマグマが溢れ出す。

次の瞬間、マグマ溜まりに疑似銀泡の魔力が出現し、すぐに消えた。またしても< 銀界魔弾(ゾネイド) >が放たれたのだ。

狙いは絵画世界アプトミステ。撃ったのは神魔射手オードゥスだ。

神詩ロドウェルが響き渡る中、その弾丸は銀泡を傷つけることは決してない。

だが、銀泡を創造しなければならない創造神エレネシアに、確実に不利を強いることができる。

「たぶん、あの要塞は< 銀界魔弾(ゾネイド) >の防衛術式。砲台術式を壊そうとする原因を取り除くためのもの」

ガラス球に空いた穴に雪月花にて応急処置を施しながら、ミーシャが淡々と言った。

「さすがに無防備には置いておかないわよね……」

<終滅の神眼>に魔力を溜めながら、サーシャが言う。

「曲がる魔弾は防ぐのが困難」

「魔法障壁で氷の世界をぜんぶ覆ったら?」

「魔法障壁を広げれば、魔力が足りない。貫通する」

青いマグマを吸い取るために、ガラス球を巨大にしているのだ。広範囲で魔法障壁を展開するには、それだけ魔力を要する。

魔法障壁自体の頑強さは、狭い範囲のものと比べればどうしても落ちてしまうだろう。

その上、全方位を魔法障壁で覆ってしまえば、今度は吸収しようとしているマグマまで防いでしまう。

魔弾が発射されたときのみ展開するならば、ますます難度は高くなる。

「それじゃ、どうすればいいの?」

サーシャが六本の大砲を持つ要塞を睨む。

すぐに二射目が撃たれる気配はない。魔弾の充填に時間がかかるのならば、止めようはある。

「魔弾は防がない」

ミーシャは言った。

「氷の世界が壊される前に、防衛術式を壊して」

弾道が変化する魔弾を防ぐのが困難なら、撃たせた後に直せばいい。

つまり、防御を捨てての撃ち合いだ。

「任せてっ!!」

サーシャがまっすぐ< 銀界魔弾(ゾネイド) >の要塞へ飛んでいく。

「滅びなさいっ!!」

視線でなぎ払うように、黒陽が< 銀界魔弾(ゾネイド) >の要塞に照射される。

要塞は燃え上がり、ガラガラと崩れ落ちた。しかし、周囲の青いマグマが再び固まり、要塞を瞬く間に再生させてしまう。

「そんなことだろうと思ったわ!」

再びサーシャが黒陽を放つ。

同時に六本の砲台から曲がる魔弾が放たれた。

要塞は灼かれ、砲台が爆砕する。

放たれた魔弾をサーシャが避けると、弾道が変化して、氷の世界を撃ち抜いた。

空けられた穴から青いマグマが溢れ出す。そのマグマは要塞の方に吸い込まれていき、サーシャが破壊した大砲が修復された。

「魔弾の破壊力が上がっている。再生が間に合わない」

ミーシャが状況を分析する。

先ほど氷の世界に空けられた穴より、今回の穴の方が大きい。雪月花にて応急処置を施してはいるものの、どちらも完全には塞がっていない。

このままでは穴は増えていく一方だ。やがて、マグマを吸収する量よりも、空いた穴から流出する量が上回るだろう。

そうなれば、< 銀界魔弾(ゾネイド) >を止めることはできなくなる。

「こっちも同じことをすればいいんでしょ」

サーシャの頭上に、闇の日輪が浮かんでいる。

破壊神アベルニユーの権能、<破滅の太陽>――サージエルドナーヴェだ。

「< 破壊神降臨(アベルニユー) >」

破壊神の秩序がそこに満ち、闇の日輪が分割されていく。

それは小さく、無数の<破滅の太陽>。

闇の火輪がゆらゆらとサーシャの周囲に舞い降りてくる。

「この世界じゃ、魔弾の方が効くのよね」

サーシャは< 銀界魔弾(ゾネイド) >の要塞へ、静かに指先を向けた。

そこに破壊神の魔力が集中する。

「< 黒火輪壊獄炎殲滅砲(サージエルド・ジオ・グレイズ) >!!」

いくつもの黒き火輪が、流星の如く、< 銀界魔弾(ゾネイド) >の要塞に降り注ぐ。

分割した<破滅の太陽>を直接ぶつけるその魔法は、速度こそ黒陽に劣るものの、当てれば威力は甚大だ。

その上、魔弾世界の秩序に後押しされ、黒き火輪の力は増していた。

ドゴォッ、ゴォォォ、ダガァァァッ、と< 黒火輪壊獄炎殲滅砲(サージエルド・ジオ・グレイズ) >が直撃していく。

破壊の炎が渦を巻き、破滅をもたらす爆炎が弾けた。巨大な要塞がみるみる炎に包まれ、轟音とともに爆砕した。

青きマグマがみるみる流れ込み、要塞を修復させようとする。だが、先ほどよりも明らかに再生速度が遅かった。

破壊神の権能、その象徴ともいえる<破滅の太陽>はただ一度の破壊を行っただけで消えることはない。

闇の火輪は要塞に直撃した後、炎となってそれを内側から灼き続ける。青きマグマが流れ込むそばから、それを滅ぼしている。

< 銀界魔弾(ゾネイド) >防衛術式の再生力を、サーシャの破壊力が上回ったのだ。

あちらの要塞は曲がる魔弾で応射する。氷の世界に穴が空くが、それ以上に要塞の損傷は大きかった。

大砲は次々と破壊の炎に包まれ、三本にまで数を減らす。

「もう一発!」

再びサーシャの周囲に、いくつもの闇の火輪が舞い降りる。

「< 黒火輪壊獄炎殲滅砲(サージエルド・ジオ・グレイズ) >ッッ!!」

次々と黒き火輪が発射され、< 銀界魔弾(ゾネイド) >の要塞を破壊していく。

互いに魔法障壁を使わない撃ち合いにおいて、魔弾世界の防衛術式をサーシャはその圧倒的火力により押さえ込んだ。

大砲は更に数を減らしていき、そして最後の一本さえも破壊の炎に巻かれた。

氷の世界への砲撃が完全に止まり、ミーシャの雪月花により穴はみるみる塞がっていく。

均衡を保っていたマグマ量が急速に減少に転じた。

「これで――」

サーシャが三度、< 黒火輪壊獄炎殲滅砲(サージエルド・ジオ・グレイズ) >を放つ。

「終わりよっ!!」

燃えさかる闇の火輪が、とどめとばかりに炎上する要塞に次々と降り注ぐ。

ドッゴオォォォォォォォォォォと轟音が耳を劈く。

ミーシャがはっとして、頭上を見上げていた。

氷の世界が一つ撃ち抜かれ、大量のマグマが溢れ出したのだ。

「深淵総軍五番隊隊長エイゼット・アビル」

降り注ぐマグマの向こう側から声が響く。

「同じく六番隊隊長ジェイミー・セロ」

人影が薄らと見えていた。

「七番隊隊長ネロ・フォース」

三人。いや、それ以上だ。

「八番隊隊長コルクス・ファイオン」

「九番隊隊長レゲロ・ファーミー」

「十番隊隊長ビリジア・ヒリス」

現れたのは深淵総軍、六人の隊長。

そして、その部下、六〇名の魔軍族だった。

「我々は貴様たちを滅殺する戦力を有している。ただちに魔力武装を解除し、投降せよ。捕虜としての待遇を保証する」

サーシャの顔に焦燥が覗く。

戦力差は大きい。その上、二人の目的は< 銀界魔弾(ゾネイド) >の砲台術式を破壊することだ。

氷の世界を守りながら、深淵総軍と戦うのは自殺行為といってもいい。

「無益な死か、有益な恭順か」

十番隊隊長ビリジアがそう口にすると、六〇名の魔軍族はマスケット銃を一斉に構えた。

その銃口にみるみる魔力が集中する。

狙いは氷の世界だ。

「選べ」

ミーシャは奴らを視界に収め、じっと砲撃に備える。

サーシャは<終滅の神眼>に魔力を集中した。

返事はしない。

するまでもない。

それこそ、なにより雄弁な回答だった。

「撃て」

「――それは虫の良い選択というものよ」

その低い声と発砲が同時に重なった。

六〇名の軍魔族、奴らのマスケット銃すべてが暴発し、全員が爆炎に飲まれた。

「……!?」

「索敵」

険しい表情で隊長たちが魔眼を光らせる。

だが、見つけられない。

「どこを見ておる?」

声とともに、一人の男が姿を現した。

大きめの眼帯をつけた魔族だ。その顔はミーシャ、サーシャとて見知っているものの、それでも二人は 魔眼(め) を疑った。

魔力の多寡が明らかに別人なのである。一度、二度滅びを克服したぐらいで、辿り着く領域ではない。

冥王イージェスは手にした骨の魔槍を静かに構える。

「我らが選ぶのは、< 銀界魔弾(ゾネイド) >の破壊のみよ。邪魔立てするならば、容赦はせん」