軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

誇り高き騎士の恋

宴の間では、魔王聖歌隊の中で誰が良いか、という論争が延々と繰り広げられていた。

「……まったく。父上にもネイト団長にも、困ったものだ。災厄の日が過ぎたとはいえ、あろうことか聖歌隊なんぞにうつつを抜かすとは。恥を知れ、恥をっ」

熱く語る男たちに、白い視線を向けながら、竜騎士団副団長シルヴィアは、ディルヘイドの酒を飲み、くだを巻いている。

彼女も彼女でかなり酔っぱらっているが、今日はまだ幾分か理性が残っているように見えた。

「やはり、男など、くだらないっ……!」

「君はどういう人が好みなんだい?」

シルヴィアの隣で酒を飲みながら、レイがさらりと尋ねた。

「こっ……こっこここここ……」

「……こけこっこー……ですっ……!」

ゼシアが嬉しそうにシルヴィアに寄ってきた。

「誰がにわとりだっ!?」

しゅん、とゼシアが肩を落とす。

「にわとりは……いませんか……」

「あ……ああ、いや、そんなことは……ほ、ほら、にわとりさんだぞぉ。こーっこここここここ」

「にわとり騎士……いましたかっ……!」

「……にわとり騎士……」

ゼシアが両拳を握り、期待に満ちた目でシルヴィアを見つめた。

仕方ないといった風に、彼女は言った。

「……そ、そうだ。私はにわとり騎士っ! 見せてやろう。にわとり剣法、こけこっこートサカの舞いっ! 恋をしている男共を斬り裂いてやるっ!」

シルヴィアが手刀でレイに攻撃を仕掛ける。

「こーこっこここここっ!!」

すると、ゼシアが表情を輝かせ、同じように手刀をレイの足元に繰り出した。

「こーこっこここここっ!!」

レイは苦笑しながらも甘んじてその攻撃を受けている。

「にわとり騎士ゼシアは……冒険の旅に出ます……!」

次なる標的を見つけたのか、ゼシアは嬉しそうに去っていった。

「それで?」

「……なにがだ? もうにわとり剣法などやらんぞっ。恥ずかしくて仕方ないっ。まったく、恥を知れ、恥をっ」

シルヴィアがくだを巻くように言う。

「君の好みの話だよ」

「こっ、ここここここっ……!!」

「にわとり剣法かな?」

「違うわっ! 好みだとっ!? そ、そんな破廉恥なことが言えるかっ……!」

赤い顔を朱に染めて、シルヴィアは酒杯の酒を呷った。

「別に普通ですよー、好みぐらい。いいじゃありませんか。聞かせてくださいよー」

ミサが楽しげな様子でシルヴィアに詰め寄っていく。

「いや、しかしだな……私は騎士として……騎士の誇りが……」

「関係ないじゃないですか。もうアガハの竜騎士に、天柱支剣となる使命はないんですし。シルヴィアさんも本当は憧れだって言ってましたよねっ?」

「そ、それは……まあ……」

ふふっと微笑み、ミサがシルヴィアに近づく。

「じゃ、あたしにだけ教えてください。誰にも言いませんから」

「……ほ、本当だな? 本当に誰にも言わないな」

「はい。約束です」

「……私の好みは、だな……」

躊躇いがちに視線を逸らし、自らを勇気づけるようにシルヴィアは酒瓶を手にする。そうして、一気に呷った。

ごくごくと喉を鳴らし、すべて飲み干すと、彼女は言う。

「やはり、恋愛などにのぼせ上がるような男ではなく、恋などまるで眼中にないような、誇り高く、強い男がいいな。理想的だ」

ミサにだけと言っておきながら、酔いのためか、その声は大きく響いている。

「シルヴィアさんらしいですねー。でも、あれじゃありません? 恋なんか眼中にない人を好きになっちゃったら、なかなか大変そうですけど……」

「そうなのか? まあ、そんな者が、いるわけもないからな。父上やネイト団長でさえ、重責がなくなればあの始末だ。どいつもこいつも、乳繰り合いたくて仕方がないのだろう。私の理想の王子様など、所詮は恋をしたことのない騎士の哀れな妄想というやつだ」

アンニュイな微笑みを彼女は浮かべた。

「あのっ、アノス様っ」

ドレスを着た魔族の女が、俺に話しかけてきた。

今宵の宴は、地底と地上の交流を兼ねているため、ディルヘイドからも多くの者たちを招いている。

「本日はお招きくださり、ありがとうございます。覚えていらっしゃいますか? 魔皇ボロスの妹、リーザと申します」

魔皇ボロスは、辺境のヘルゼッドを治める者だ。

確かに覚えがあるな。

「ふむ。珍しい病を患っていた娘か」

「はいっ」

そう口にすると、リーザは花が咲いたように笑った。

魔王再臨の式典の後、ディルヘイドの民と多く謁見をしたが、その内の一人が魔皇ボロスだ。妹のリーザはこの時代の医療魔法では治せぬ奇病を患っていた。それを治してやったのだ。

「おかげですっかりよくなりました。今日は、その、命を救っていただいたお礼ができたら、と……」

リーザが俺の近くに体を寄せる。

「あのときから、その……すごく素敵な方だと……」

「ふむ。そうか」

「今日はその、『星屑の泉』という宿に泊まっております」

ミッドヘイズが来賓などに対応するための高級宿だ。

一般の者は泊まることができない。

「……これが、その部屋の鍵です……」

リーザは俺の手を取り、その鍵を手渡した。

見れば、彼女は顔を真っ赤にしている。

「わ、わたしなんかがこんなことを申し上げるのは……その、ご迷惑かと思ったのですが……でも、今宵限りのことだから……」

「皆まで言うな。来賓に恥をかかせる俺ではないぞ」

口にすれば、彼女は笑った。

そうして、俯き、恥ずかしげに言った。

「……ま、待っています……」

リーザは走り去っていった。

「エリオ」

すぐに俺はミッドヘイズを治める魔皇エリオに声をかける。

「魔皇ボロスの妹リーザを知っているな」

「は」

「鍵を返された。どうにも部屋に不満があるようだ。確かに、見てくれは立派だが『星屑の泉』の宿は少々反魔法が弱い。不安で眠れぬ者もいよう。デルゾゲードの一室に変更し、警備をつけてやれ」

「承知しました」

エリオに鍵を渡すと、彼は去っていく。

すると、三人組が、こちらに意味ありげな視線を向けてきた。

レイとミサ、シルヴィアだ。

「……惚れた……」

「ええっ!?」

シルヴィアの言葉に、びっくりしたようにミサが振り向いた。

「……恋愛などまるで眼中にもない、あの毅然とした態度……私の理想だ……まさかこんなところに……こんなにも急に始まるものなのか……」

「え、えーとですね……酔ってますか?」

がしっとシルヴィアはミサの両肩をつかむ。

「教えてくれっ!」

「な……なにを、ですかー?」

「どうすればいいっ。どうすれば、その……こ、恋が、できるんだ…………?」

助けを求めるようにミサがレイの方を振り向く。

「アノスは見ての通りだからね。はっきり言うしかないんじゃないかな」

「わかった。行ってくる」

「えっ!? い、今ですかっ? もうちょっと段階を踏んだ方がいいと思うんですけど……」

「今より早い時はないっ! 恋など知らない私が小細工を弄してどうするっ? 先手必勝、全力でぶつかるのみだっ!」

「……そんな戦闘みたいなこと言われても、ですね……」

苦笑いを浮かべるミサの横をすり抜け、シルヴィアは堂々と俺のもとへ歩いてくる。

「アノス王」

彼女はまっすぐ俺を見ると、怯んだように僅かに視線を下へやる。

「……その……」

震える拳を握り締め、ぐっと決意を固め、シルヴィアは顔を上げた。

「私はあなたに恋をした。恋人になってくれ!」

「くははっ、面白いことを言う」

「だめなのかっ?」

「ふむ。もしも本気だというならば、シラフで挑むことだ。酒に飲まれた言葉を受け取っては、お前の恋に申し訳がたたぬ」

俺が踵を返すと、シルヴィアは「はぅぅっ……!!」と声を上げ、足元がふらついたかのようにその場に崩れ落ちる。

「だ、大丈夫ですか……?」

レイとミサが心配そうに、彼女に駆けよる。

「う……うぅ……」

シルヴィアが床を見つめながら、声をこぼす。

「えーと、ですね。お、お酒が入っていたから、アノス様も真に受けなかったんだと思うんですよ。だから、そんなに気落ちしなくても……」

「……か、格好いい……」

「え?」

「歯牙にもかけずに一蹴された。なんて冷たいんだ。私のことなんか、まるで気にも留めないようなあの態度。そっけなくて、心が痛くて、ああ、だけど……なんて尊いんだ。これが、恋なのか……」

レイとミサが顔を見合わせる。

「……私は、恋をしてしまったのか……」

ミサはなんとも答えづらそうな顔をしていた。

「……か、格好いい……」

シルヴィアと似た呟きが近くで聞こえた。

振り向けば、そこにいたのは母さんだった。

なぜか俺を見て、感極まっているようだ。

「なんて格好いいの、アノスちゃんっ! もうー、なにその断り文句なにーっ。少し見ない間にそんなに男らしくなっちゃって、もう、このこのっ」

母さんが俺に絡むように身を寄せては、肘でガツガツとつついてくる。

確か、母さんは酒は飲まないと言っていた。つまり、完全にシラフだ。

「本当にもう、アノスちゃんってば、しばらく会わなかったら、こんなに大きくなっちゃって。いつのまにか、すっかり、七ヶ月の顔ね」

どんな顔なのだ?

返答に困るな。

しかし、まあ、ここしばらくは家に帰っていなかった。

母さんも心配していたのだろう。

「あ、そうだ。そういえば二人に聞こうと思ってたんだけどね」

母さんは後ろにいたアルカナの両肩を抱いて連れてきた。

どこに行ったかと思えば、母さんと一緒だったのか。

「離婚裁判って、どうなった?」

深刻な表情で、母さんは言った。

そういえば、まだ訂正していなかったな。

「母さん。選定審判は離婚裁判じゃないんだ」

「え……だって……アルカナちゃんを拾ってきたんだよね? 悪い男の人から助けたくて」

すると、アルカナは言った。

「人の子よ。それは正しいが、勘違いをさせてしまった。わたしに伴侶はいない。離婚裁判もしていない。安心してほしい」

「そうなの?」

ふむ。珍しく説得できそうだな。

アルカナと視線を合わせると、彼女もほっとした様子だ。

「すべては解決した。お兄ちゃんはわたしを助けてくれただけだ」

「……お兄ちゃん…………?」

母さんの反応を見て、アルカナは失敗した、といった表情を浮かべた。

「今のは間違い。気にしないでほしい」

「構わぬ。母さんにも言っておこう」

困惑する母さんに、俺は言った。

「アルカナは、俺の妹だ。だからといって、母さんと父さんの子供にしてほしいというわけでは――」

「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ、アノスちゃんって、アノスちゃんって、お兄ちゃんになりたかったのぉぉぉぉぉっ!!」

ふむ。まだ最後まで言ってないのだがな。

「そういうわけではないのだが――」

「わかる! わかるわっ! アノスちゃんっ! 僕、妹なんかいらないもんっ、よねっ! お母さん、すごくわかる。お母さんもね、一人っ子だったから、ずっと妹が欲しかったの。寂しかったのっ!」

なにやら、母さんの琴線に触れたようだ。

「でもね、アノスちゃんの気持ちわかるし、なんとかしてあげたいって思うけど、アルカナちゃんにも、家族がいるでしょ?」

「もういない。みんな死んだ。わたしは一人」

すると、母さんは悲しそうな表情でアルカナを見た。

ずいぶん昔の話だ。アルカナはいつも通りの顔をしていた。

そんな彼女に母さんは優しく微笑み、ぎゅっと抱きしめた。

「アルカナちゃんは、アノスちゃんのことが好き?」

「……お兄ちゃんのことは、好きなのだろう……」

「じゃ、うちの子になる?」

戸惑ったように、アルカナは訊く。

「……いいのだろうか……?」

母さんがアルカナを撫でる。

「すぐに家族になるっていうのは、うまくいかないかもしれないけどね。手続きとか、気持ちとか、色々だと思うから。でも、まずはみんなで一緒に暮らしてみようよ」

「……それは、迷惑というのだろう」

母さんがゆっくりと首を振る。

「大丈夫よ、もう一緒に住んでるんだし。アノスちゃんが妹だって言うんだもの、きっとうまくいくわ。それにね、お母さんも娘が欲しかったのよ」

「そう?」

「うん。だから、まずはお互いお試しで、やってみるっていうのは、どうかなぁ?」

しばし、考え、アルカナは言った。

「……やってみたい……」

「うん」

母さんがアルカナを優しく撫でる。

「あ、でも、お母さんだけで決めちゃだめよね……」

と、母さんが辺りに視線を巡らせようとすると、

「なに言ってるんだ、イザベラ。勿論、俺も大賛成さ。大・大・大、大賛成さ」

現れたのは父さんだ。

話を聞いていたようで、すでに俺の胸に飛び込んで来いといった風に両手を広げ、気取ったポーズを決めている。

恐らくは、包容力をアピールしたいのだろう。

「アノス、父さんな。実は、父さん。娘も欲しかったんだ。娘ができたら、やりたいことが沢山あったんだよ! こんな可愛い娘ができるなんて、大歓迎――」

「あー、アルカナちゃん気をつけた方がいいぞっ。アノス君のお父さん、犯罪者の目をしてるぞっ」

ふらーっとほろ酔い気分のエレオノールがやってきて、ふらーと去っていく。

「……犯罪の目……よく見ますっ……! こーこっこっこっこーっ」

にわとり騎士ゼシアが父さんの体を手刀で何度も叩き、そしてエレオノールを追いかけていった。

後に残ったのは、なんとも言えぬ気まずさだけだ。

「いや、違う。違うんだ、アルカナちゃんっ」

父さんが必死に弁解を始めた。

「冷静に、冷静になろう。違うんだぞ。やりたかったのは、そんないかがわしいことじゃなく、たとえば可愛い服を着せたりとか、一緒におままごとをしたりとか、いや、違う違う、そういうんじゃないんだっ!」

父さんはなにやら話せば話すほど自らドツボにハマッていく。

「ああ、そうそうっ、そうだそうだそうだった!」

父さんが名案を思いついたといった調子で言い、猫撫で声を出した。

「アルカナちゃん、あっちにすっごく美味しいケーキがあったんだよ。一緒に食べよう。なあ、お父さんって呼んでくれてもいいんだぞ。なーんて、気が早いか。ああ、でも、どうせならパパが、いいかもな。パパな、憧れだったんだ。ははっ」

そう言いながら、アルカナをぐいぐいと押して連れ去っていく。

さながら食べ物で子供を誘う誘拐犯の如しだ。

「じゃ、アノスちゃん。ちょっとアルカナちゃんと遊んでくるわね。仲よくするから、心配しないでね」

母さんは笑顔で父さんとアルカナを追いかけていった。

「あー、アノス、ようやく見つけたわ」

ふらふらと歩きながら、サーシャが俺の体になぜか顔をぶつけた。

「うー……なにするのよ……?」

「ふむ。なにもしていないが」

とことことミーシャがこちらへ歩いてきて、サーシャの手を取った。

「サーシャは酔ってる」

「これぐらい酔った内に入らないわ。わたしだって、アガハの酒宴で学んだんだから」

ミーシャがぱちぱちと二回瞬きをして、小首をかしげた。

「アガハでは確か、酔い潰れていただけに思ったが?」

こくこくとミーシャがうなずく。

すると、サーシャが彼女のほっぺたを両手でつまんだ。

「聞き分けない子は変な顔にするわよ?」

「……へんはかおにはれた……」

ミーシャは変な顔にされたと言いたいらしい。

「まあ、許してやれ、サーシャ。ミーシャもお前を心配しているだけだ」

「うー、なによ、アノス。アノスはミーシャの味方なの? 依怙贔屓なの?」

「なにを言っている。依怙贔屓などするわけが――」

「えいっ」

と、サーシャが俺のほっぺたを両手でつまみ、悪戯っぽく笑う。

「ふふっ、アノスも変な顔にしたわ」

やれやれ、まったく、困ったものだ。

「サーシャ」

おもむろにサーシャに両手を伸ばし、そのほっぺたに指を触れる。

「……え……?」

「この遊びなら、二千年前にも流行った。どちらが相手をより変な顔にするかという勝負だったが、俺は負けたことがなかったぞ」

不敵に笑い、サーシャのほっぺたをつまんだ。

「覚悟はできているだろうな? お前を顔だけでディルヘイド一の道化師にしてやろう」

「やっ、やーっ。やだやだっ……道化師じゃないんだもんっ……」

「くははっ。ミーシャも甘んじてお前に変な顔にされたのだ。今度はお前の番だ」

サーシャはぶるぶると首をふるが、俺の指に押さえられていて満足に顔は動かせない。

彼女は駄々をこねるように、両足を振って、バタバタと鳴らした。

「ミーシャ、助けてっ……ミーシャッ……アノスに変な顔見られちゃうわっ……」

「なにを当たり前のことを言っている。ミーシャ、リクエストはあるか?」

ミーシャはぱちぱちと瞬きをする。

「リクエスト?」

「悪鬼、首長、スライムと、俺のバリエーションは豊富だ」

若干考えた後、ミーシャは言った。

「可愛くしてあげて」

「……ふむ。可愛くか。いいのか?」

「ん」

らしいことを言う。

じっとサーシャを見つめると、彼女は半分涙目になり、「うー」とこちらに脅えた視線を送ってくる。

「……か、可愛くはできないって言う気……?」

「なに、容易いことだ」

そう口にし、俺はサーシャの頬から両手を放してやる。

「これでリクエスト通りだろう」

一瞬きょとんとした後、サーシャはぱっと顔を明るくした。

「もっと見ていいわ」

嬉しそうに、サーシャは笑顔を俺に向けてくる。

そうして、酔っぱらいらしく唐突に言った。

「ねえ、アノス。ネクロンの秘術見せてあげるわ」

サーシャがミーシャを手招きすると、彼女はとことことそばまで歩いていく。

二人は両手を合わせて、上半身を折る。ミーシャは彼女に引きずられるようにして、同じく上半身を折った。

「< 融合組体操(トンネ・ル) >」

サーシャは満面の笑みで、ミーシャは無表情で俺を見た。

「サーシャは酔ってる」

そのようだな。意味がわからぬ。

「少し酔いを醒まさせるか」

「まだ飲むわ。アノスも一緒に飲みましょ」

仕方のない。

「では、外でこれでも飲むか」

< 創造建築(アイビス) >の魔法で、酒瓶を創り、サーシャに手渡した。

「魔王酒だわっ!」

嬉しそうにサーシャが魔王酒を抱く。

俺が歩き出すと、若干ふらふらになりながらもサーシャがついてくる。

ミーシャは彼女が倒れぬように手を引いていた。

「魔王酒って、酔っぱらってても美味しいわよね。飲みやすくて、いくらでも飲めるわ。どうしてかしら?」

水だからだ。

「さて、どうしてだろうな?」

言いながら、俺たちは宴の間を後にした。