軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約の言葉

アルカナがその清浄な瞳を俺に向ける。

いつもと変わらない透明な表情に、けれども俺はなぜかミーシャが口にした言葉を思い出していた。

乾ききった渇望。

水のない砂漠を永遠にさまよい続けているみたい――

「ふむ。それは、どういう意味だ?」

「あらゆる神は選定者を選ぶことで、選定神となる。わたしは、選定神となる以前に有していた神の名を忘れてしまった」

静かにアルカナが語る。

「覚えているのは、優しさが欲しかったということ」

ぽつり、ぽつり、と呟く言葉から、悲しみがこぼれ落ちていくような気がした。

「わたしが優しくなかったということ」

憂いに染まった瞳は、遠く過去を見つめている。

「……神は秩序。感情を持たず、生きてはいない。だから、わたしは名を捨てたのだと思う。神の名とその記憶と引き換えに、心を手に入れたのだと思う。しかし、人の心は、特に愛や優しさは、秩序を乱す。わたしが手に入れたのは、神が手にしてはならない混沌だった」

それが罪であったかのように、アルカナは言う。

「それに気がつかないまま、わたしは名もなき神として、地底に光をもたらした。救いの光を。わたしはそうしなければならないと思っていた。この身に優しさがあれば、人を深く愛する心があれば、秩序の枠から脱し、もっと多くの者を救えると思っていた」

神族は秩序に従い、それを守るため、それを維持することを至上の目的とする。

その秩序の支配から逃れるために、名を捨てたということか。

「この地底でわたしは神の奇跡を振るい、人知れず救える限りの者を救ってきた。千の命を救い、万の心を救い、そうしてある日、わたしは出会った。娘を殺され、報復を神に願う、ジオルダルの信徒に」

過去を思い出すかのように、アルカナはぼんやりと頭上を見上げた。

そこに空はなく、天蓋が地底を覆っていた。

「彼の娘は選定者で、聖戦の末、命を天に返した。ジオルダルの教えでは、聖戦によって死んだ根源は神のもとで救済される。なによりも喜ばしく、なによりも祝福すべきこと。だが、娘は死の直前に彼に告げた」

アルカナが悲しげに瞳を曇らせる。

「神のもとへ行くより、お父さんと一緒にいたい、と。彼は嘆き、教えに背いて、娘を殺した選定者を恨んだ。彼はわたしに願った。すがるように訴えたのだ。その選定者に裁きが下り、永劫の死が訪れるのを。それだけが救いだと彼は言った」

その者を救うためには、娘を殺した選定者を破滅に追いやらなければならぬ、か。

「どうしたのだ?」

「そのときのわたしは選定神ではなく、名もなき神でしかなかった。選定者に裁きを下すことはできない。わたしは彼を説得しようとした。復讐はなにも生まない。娘の命は戻らない。あなたが幸せに生きることを、死んだ彼女も願っている」

アルカナは一度言葉を切り、それから改めて口を開いた。

「あなたが望むのならば、死んだ娘を蘇らせるとわたしは言った」

「根源が滅びていなかったのか?」

アルカナは俯き、首を左右に振った。

「それではいくら神とて、蘇らせることはできまい」

「<創造の月>の秩序を歪めれば、同じ人物を創造することはできる。心も体も記憶も同一。彼の娘は蘇る。少なくとも彼にとっては」

「……ふむ。嘘をついたか」

こくりとうなずき、アルカナは言った。

「知らなければ、それで彼は幸せになる。わたしはそう考え、アーティエルトノアの力で、彼の娘を創造した」

アルカナが俺の目をじっと見つめる。

「彼はそれを喜んだ。わたしは救えたのだと思った」

それが間違いだったと彼女の顔が訴えている。

「その数ヶ月後、彼は首を吊って死んでいた。泣きじゃくる娘がわたしに言った。選定審判を経て、代行者に選ばれた者が彼に娘は偽物だと告げたと。その者は、彼の実の娘を殺した男だった」

唇を噛むようにアルカナは口を閉ざす。

しばらく無言のまま、彼女は暗い表情を浮かべていた。

「誰が彼を殺したのか?」

自問するように、アルカナは言う。

「彼を嘲笑うように真実を告げた代行者か。それとも、復讐心を抱いてしまった彼自身の咎なのか」

ゆっくりと否定するように、アルカナは告げる。

「いいえ。殺したのはわたし。偽物の娘を創造することでわたしは彼を救おうとした。けれども、それは救いではなく、絶望の種を撒いたにすぎなかった」

絞り出すような声は、まるで彼女の身を切るかのようだった。

「それがわたしの咎。神として、決して犯してはならない過ちをわたしは犯してしまった。わたしは考えた。どうすれば、彼の心を救えたのか。復讐を叶えてやればよかったのか。けれど、彼の心は救われても、今度はその代行者が死に、一つの救いが消えてしまう」

選定審判で彼の娘を殺したこととて、元はといえば、それは神が始めたことだ。

殺した者に罰を与えるのが正しいとも言いきれまい。

「わたしはようやく気がついた。これらはすべてつながっている。今回のことに限った話じゃない。一つの救いは、気づかぬ内に別の救いを失わせる。誰かを救えば、誰かがこぼれ落ち、この神の手の平にさえ、すべての願いは乗せられない」

アルカナは言う。

「全能者はいない。神ですら全能ではない。すべてを救うことはできはしない」

それが、そのとき、彼女が至った結論だったのだろう。

「だからこそ、わたしは自分が間違っていることを願った。わたしの出した答えを、わたしは誰かに覆してほしかった。そうして、地上に出たとき、あなたを知った」

まるでそれが救いだったとでもいうように、彼女は薄く微笑んだ。

「神を滅ぼす暴虐の魔王。もしも、本当に、あなたが神の力を超えているというのなら、わたしの問いに答えてくれるかもしれないと思った」

それで、魔法体を飛ばし、俺にわざわざ尋ねたというわけか。

「不適合者アノス・ヴォルディゴード。あなたはきっと、秩序から外れた存在。わたしは審判を下す。あなたこそ、神の代行者に相応しい、真に全能者へ至る者」

アルカナは静かに手を伸ばし、俺が持つ全能者の剣リヴァインギルマに触れた。

「すべてを救えなくて、どうして神なのだろう?」

独り言のように彼女は言う。

「悪人も咎人も愚者も悪魔さえ救えずに、どうしてわたしは神なのだろう? 神はただ秩序を守るだけの理で、これではなにも救えはしない」

俺が手を離すと、彼女はその剣を水平に持った。

「わたしはすべてを救う優しい神になりたかった。本物の神に」

一筋の雫が、彼女の瞳からこぼれ落ちる。

「そう思って、名を捨てた。たぶん、きっと」

左手に鞘を、右手でアルカナは柄を握る。

「間違いだった。だから、あなたがくれたこの敗北が、罪を犯したわたしへの罰。そして同時に、なによりの救い」

ぐっと彼女は右手に力を入れる。

「さようなら。あなたの勝利を願っている」

静かにリヴァインギルマを抜き放とうと、アルカナは手に力を込める。

その全能者の剣が、彼女の根源を消し去る寸前に、俺はその右手を握って止めた。

不思議そうに、アルカナが俺を見た。

「神にも救えぬあの救いようのない男を、俺ならばどうするか、最後に見ていくがいい」

戸惑った素振りを見せながらも、アルカナはうなずいた。

「そろそろ戻ってくる頃だ。信仰を捨てて、この男がなにを言うのか。期待を裏切ってくれなければいいがな」

仰向けにに眠り、悪夢を見ているアヒデに、< 総魔完全治癒(エイ・シェアル) >の魔法をかけてやる。

切断された四肢が生え、その傷が完全に癒される。

はっと気がついたように、アヒデは目を開いた。

「どうだ、ペテン師? 散々神に裏切られ、いい加減、神を否定することにも慣れたか? 信仰など綺麗に消え失せたのではないか?」

俺の言葉が耳に入り、それを吟味するように考えた後、アヒデはふっと息を漏らした。

「……フ、フハハハハハッ……!」

笑い声を上げながら、むくりとアヒデは身を起こす。

「フヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ! 戻ってきました! 戻ってきましたよっ!!」

神に裏切られる悪夢を千度繰り返したためか、現実に戻ってきた解放感に、アヒデはタガが外れたかのようだ。

「ふむ。気でも違ったか?」

「正気ですよ。信仰も捨ててはおりません」

「心から信仰を捨てねば、< 羈束首輪夢現(ネドネリアズ) >からは覚めぬ」

その言葉に、アヒデはニヤリと笑った。

「ですから、神を信じるがゆえに、心から信仰を捨てたのです。理解できませんか? 先程のあなたが言ったことと同じですよ。あなたが全能者の剣を使いこなすのならば、わたしは全能者の心を持つ者。信仰を捨てつつ、同時に信仰を抱いたまでのことです」

千度の悪夢を経て、なおも腐りきったままの男を見て、口の端から笑いがこぼれる。

「つくづく期待を裏切らぬ男だな、お前は。ならば、約束通り、最後の悪夢を見せてやろう」

少し離れた位置で、俺たちの様子を見守っているアルカナに、俺は言葉を投げかけた。

「後生のことだ。教えてやるがいい。お前がこの選定審判で、誰を選ぶのか」

「残念ですが、今はあなたにつき合っている場合ではありません。新たな神託を賜りました」

言い捨て、アヒデはアルカナの方を向いた。

「我が神アルカナ、ここは一旦退きましょう。彼の力はもうわかりました。聖戦で死を与えることが、救いだというのを理解せぬ愚者だということも。新たな神の力を得れば、この異端者を倒すこともできましょう。さあ」

アヒデがアルカナに手を伸ばす。

しかし、彼女はそれを一瞥すると、淡々と告げた。

「それはできない」

「……ばっ………………!?」

アヒデは絶句する。

だが、取り繕うように、引きつった笑顔を浮かべた。

「……で、できないとは、我が神よ? 無論、いかような試練にも挑みましょう。心を入れ替え、今度こそ人々に救済をもたらします。どうか神託を賜りますよう」

跪き、祈るアヒデに、アルカナは言った。

「我が信徒、神託者アヒデ・アロボ・アガーツェに告ぐ。わたしはあなたを救おうとし、あなたを選定者に選んだ。救われぬあなただからこそ、救いを得るのに相応しいと思っていた」

「選定の神の御心に、深く感謝を捧げます」

「しかし、それは間違いだった」

アヒデは耳を疑ったと言わんばかりの表情で、祈りをやめ、アルカナを見る。

「………………間……違い………………?」

意味が理解できないといった風に、彼は繰り返す。

「なにをおっしゃるのか。神が間違えるなどと……」

「神は間違えることもある。神は決して、全知全能ではない。わたしは間違えた。あなたを選ぶべきではなかった。ゆえに、選定の神アルカナは、盟約に従い、神託者に最後の言葉を告げる」

アルカナは憐れみの視線を、その選定者に向けた。

「あなたは決して神の代行者に相応しくはない。わたしが選ぶのは、全能者の審判を乗り越えた彼、不適合者アノス・ヴォルディゴード。アヒデ、あなたに審判を下します。一人の信徒に戻り、懸命に生きなさい」

アルカナが手にした選定の盟珠から、紅い火が消える。

まるで、アヒデが選定者の資格を失ったかのように。

力ない瞳で、それを呆然と眺めていたアヒデが、小さく息を吐いた。

「……フ…………フフフフッ…………!」

狂気に満ちた瞳で、アヒデが笑う。

「フヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ! なるほどなるほど。千回と言ったのは、わたしをハメるための嘘というわけですか。ああ、ずいぶんとくだらない手を使う。異端者の考えそうなことですね」

「アヒデ。それは間違っている」

アルカナの言葉をアヒデは鼻で笑い飛ばす。

「黙りなさい。秩序だのなんだのに支配されている神如きが、わたしに偉そうに指図するんじゃありませんよ。いいですか? わたしは神なんか、元よりこれっぽっちも信用していないのですよ。ただ都合よく使ってやっているだけのことです」

「ふむ。大した豹変っぷりだな」

「痛みがあろうと、現実とそっくりだろうと、夢だとわかっていれば、なんのことはありません。むしろ、神を信じるなどというくだらない演技をしなくていいのですから、これほど楽な世界もありませんね」

アヒデは< 憑依召喚(アゼプト) >の魔法を使い、その後、< 転移(ガトム) >の魔法陣を描いた。

< 転移(ガトム) >が使えるなにかを、体に憑依させたのだろう。

「信仰を捨てなければならない世界で、わたしを苦しめ、絶望させようと考えたのかもしれませんが、浅知恵というものです。わたしにはそもそも信仰などなく、この夢は、なんら悪夢ですらありません」

狂気に表情を歪め、彼は笑う。

「さて、一〇〇一回目ですか。神を信じ切っている馬鹿な信徒や、普段お高く止まっている教皇に、<全能なる煌輝>などいないということを突きつけてやりますか。さっさと目が覚めてくれればいいのですがね」

< 羈束首輪夢現(ネドネリアズ) >が覚める条件は、自らの国ジオルダルで、神などいないと吹聴して回ることだ。それを千回続ける。

回を追うごとに少しずつ、吹聴しなければならない人数を増やすなど、難易度が高くなるようにしておいた。

試行錯誤し続けたアヒデは、最早、神がいないことを突きつける術に習熟しているだろう。

本物の教皇とジオルダルを相手に、その培った技術の妙をどう見せつけてくれるのか、さぞ見物だろうな。

「頑張ることだ。これまでと違い、一筋縄では行かぬとは思うがな」

そう口にすれば、苛立ったようにアヒデが俺を睨めつける。

「夢の中のあなたにこれ以上言っても仕方がありませんが、もしも聞いているのなら、覚えていなさい、不適合者アノス・ヴォルディゴード。わたしはあなたを、絶対に許しません。必ず、どんな手を使ってでも、地獄の底に送ってやります。この目が覚めるときを、楽しみに待っていることですね。フフフ、ハハハハ――」

魔法陣に魔力がこもり、彼の姿が消えた。

「――ハーハッハッハッハッハッハッハッハッハッッッ!!!」

そんな高笑いを残して。

「残念だが、アヒデ、その悪夢は一生覚めぬ」

くつくつと喉を鳴らし、俺は笑う。

どうすれば夢から覚めるのかと奴は試行錯誤し、神がいないことを国中に吹聴して回る。その行為がエスカレートしていくことは想像に難くない。

なにをやっても目が覚めぬと次第に苛立ち、まさに悪夢を味わうことだろう。

だが、本当の地獄はこれが悪夢ではなく、ただの現実だと悟ったときだ。

果たして、どんな絶望を味わうのか。

すべては自業自得というものだがな。

「見ての通りだ、アルカナ」

救いようのない男の末路を、それでも案じたような表情を見せるアルカナに俺ははっきりと教えてやる。

「俺は、神ではない。神になるつもりもない。救いようのない男をいちいち救ってなどやらぬ」

ゆるりと歩を踏み出し、彼女の前に立つ。

「すべてを救う優しい神が、本物の神が欲しいというのなら、他人に期待するのはやめておけ。恨みを許せる者ばかりではない。争いを望まぬ者ばかりではない。お前のように、心を痛め、優しさを持っている者ばかりではない。特に俺など、その最たるものだ。愚か者は一度、絶望の淵に叩き落としてやらねば気が済まぬからな」

清浄なアルカナの瞳を覗きながら、俺は言う。

「それでもなお、すべてを救う優しい神を求めるのならば、お前がなるがいい」

「わたしは犯してはいけない罪を犯した」

淡々とアルカナは言う。

「罰せられるべき神」

「自ら罰を望む者に、それ以上の罰を与える権利が誰にあるのだろうな」

「命を奪うよりも、残酷なことをした。偽りの命で、彼の心を絶望に突き落とし、なんの救いも与えることができず、滅びだけをもたらした」

アルカナは自戒を込めた瞳で、そう言ってのける。

「過ちを犯した神を誰が信じるのか。罪を抱いた神を誰が許すのか」

もしも許せる存在がいるのだとすれば、自ら命を捨てたその男以外にないだろう。

だが、滅びたものは今更元には戻らぬ。不可能というものだ。

「ならば、俺が許そう」

その言葉に、アルカナは目を丸くした。

「お前の罪を俺が許そう。選定の神アルカナ。お前を糾弾する者が、この地底のどこかにいるというのならば、俺がその盾となろう」

呆然とアルカナは、俺の言葉に耳を傾けている。

「犯した罪は決してなかったことにはできぬ。たとえ、その者が蘇ったとしても、時間が戻り、すべてがなかったことになったとしても、お前の罪は消えはしまい。ここでお前が消えたとて、その罪まで消えはせぬ」

「……あなたはどうすればいいと考える?」

「過ちを認めたのならば、償え。その生涯をかけて」

押し黙り、それから、彼女はまた尋ねる。

「償える?」

「お前はこの戦いで見たはずだ。エミリアを。勇者学院の生徒たちを」

アルカナはうなずく。

「あなたが立ち直らせた」

「それは違う。彼女たちが自ら罪を認め、そして償おうと前を向いたのだ。かつて犯した過ちに、エミリアはこれからも苛まれるだろう。それでも、一歩ずつ前に進むしかないと彼女は気がついた。罪が消えぬ以上は、そうするしかあるまい」

俺の目をまっすぐアルカナが見返してくる。

「間違えぬ者などおらぬ。人も魔族も、誰もがそうやって生きている。ならば、神のお前が罪から逃げてどうする?」

ぎゅっと全能者の剣を握り締めたアルカナに、俺は手を差し出した。

「問おう。お前の償いはなんだ? アルカナ、お前はその罪をどう償いたいのだ?」

「……わたしは…………」

自戒に溢れた瞳から、強い意志が僅かに灯る。

それはまるで火がついたように燃え上がり、強く俺に訴えた。

「選定審判をなくしたい。この秩序は人に優しくなんかない。神の都合で作られた、生贄の儀式。彼の娘が死んだのも、アゼシオンにジオルダルが攻め入ったのも、すべて選定審判が始まり。これが続けば、また争いが起きる。何度も、何度でも、人は死ぬ」

涙の雫が、また一つ、床に静かにこぼれ落ちる。

「不適合者アノス・ヴォルディゴード。あなたにはそれができる。あなたとなら、この儀式を終わらせられる」

目に涙を溜めながら、彼女は言った。

「どうか、わたしに償いをさせてほしい」

彼女の手にした剣を優しく奪い、手の平に魔法陣を描く。

アルカナからもらった俺の選定の盟珠がそこに現れた。

「お前を信じよう。お前の優しさを、俺は決して疑いはせぬ」

神を信じる。

それが、盟約の手段だ。

「俺の神となれ、アルカナ。お前が償いをするというのならば、俺がその罪を許してやる」

盟珠の中心にぼっと紅い火が灯る。

それは神との誓いを表す、盟約の炎。

俺たちの誓いは、一つだけ。

「選定審判をぶち壊す」

それは罪を犯した神と交わした、許しと償いの言葉だった。