軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暴れん坊食卓が斬る!

フライの争奪戦の後、「今日はここで泊まる~~」という方々にベッドの設営方法やら何やらを伝授して、私は運転席と助手席とでヴィルさんと密談にもならない密談を始めた。

会話は筒抜けだろうけど、まぁ、「聖女召喚ってヤバいんじゃね?」という話題だけならそう秘密にしておくことでもなかろう、と、ね……。

「……ということで、 欧風時代劇(そういう) 筋書きとかもありえるのかな、と……」

「あー…………『らしい』といえば『らしい』が、リンのいう筋書きはあくまで虚構の中の世界だろう?」

「そうなんですよねぇ……現実世界でそういったことが起こるのか……って言われると……」

昔見た『南蛮渡りの巫女と悪徳商人、悪代官とが手を組んだ大規模ペテン話を成敗!』というストーリーを基に、南蛮渡りの巫女を『聖女』、悪徳商人と悪代官を『召喚を行った連中』……という方向で説明してみたんだけど……。

ヴィルさんの反応は、鈍い。

それもまぁ仕方ないか。いきなり「この世界は欧風時代劇の世界だったんだよ!!」って言われても、ねぇ……。「な、なんだってー!?」とも言いにくいよね、うん。

ただ、ヴィルさんが顎に手を添えて考え込んでいるところをみると、何かしら引っかかることもあるんだろう。

「かつての文献を見る限り、『聖女召喚』は魔物の恐怖にあえぐ民衆の最後の希望、のような扱いだったようですから、一概に『成敗される側』というわけではなさそうですよ」

「ただ、 今代(こんだい) の聖女サマも 最後の希望(そう) か、って言われると……ってところじゃない?」

「魔物の被害報告も、 大量発生(スタンピード) の報告も、何も上がってきていないようだしな……」

「ん。だから、こそ……王都で、ほうれんそう?」

「…………結局のところ、そうなりますよねー」

いつの間にか、跳ね上げ式のカウンター付近にみんなが集まってきていた。

カウンターに肘をついて運転席側を覗き込んでくるエドさんと、その後ろで腕を組んでいるセノンさん。そして、エドさんの隣に座り込んでいるのか、ちょこんと頭だけが見えるアリアさん。

セノンさんの調べ物って、もしかしてこの『聖女召喚』についてだったんだろうか。

……確かに、先代聖女って魔物に苦しめられてた人を救ってくれた、って話なんだよね……。それを思うと、一概に『聖女=悪役』とも言えないんだけど……エドさんとヴィルさんが言うように、『魔物の被害がない』状況で『魔物を浄化』する必要があるのか、と言われれば……ないよね……としか言えないしねぇ。

最終的には、アリアさんの言うように中枢の判断を仰ぐ、ってことになると思うんだな、これが……。

「王都……国の中枢でしょうから、色々な情報が集約されてるでしょうし、そういったものの調査・収集っていう面でも大事そうですね」

「精査や選別は必要だが、情報はあるに越したことはないからな。判断材料にもなるだろう」

「それがわかっていながら行き渋るんですから……本当に ヴィル(あなた) には困りますねぇ……」

……改めて今回の王都行きの必要性が見えてきたな。

中枢への報連相って言う意味合い以外にも、王都であればより高度、もしくは詳細な今現在の情報が集まってる可能性もあるわけだし、過去の出来事に関する文献なんかも集まってる可能性が高いわけだし、『情報収集』っていう面においても重要になってくるわけだね。

私の呟きに同意してくれたヴィルさんを、セノンさんがため息をつきつつ蒼い瞳でチラリと一瞥する。

うぅん……セノンさんは、ヴィルさんに対して時々ツンツンする感じになるよね!

当のヴィルさんはその視線を鼻で笑って流しちゃう程度には気にしてないから良いんだけど……何というか……仲良く喧嘩してる感がすごいんだよな、このお二人……。

「兎にも角にも、明日は王都行きの準備、ってことで良いですか?」

「…………そうだな。行くより他に仕方がなさそうだしな」

「リン! リン! それじゃ、一緒に……おかいもの、いこ?」

「あー、いいなぁ! オレも! オレも一緒に行く!!」

……今までの情報を纏めると、結局は『 王都に行く(そういう) 』ことになるわけで……。

ざっくりと話を纏めてしまった私の言葉に、ヴィルさんが不承不承という態で頷いてくれた……と思ったら、次の瞬間横から伸びてきた冷たい手に腕を掴まれた。

視線を送れば、瞳を輝かせたアリアさんと、その隣で元気よく挙手するエドさんが見える。

はいはいと承諾しかけてふと隣のヴィルさんを見れば、いつの間にか表情が険しくなっていた。

え? と思ってセノンさんを振り仰げば、こちらもまた苦い顔をしているんですが……えー?

「いいか、リン。この二人を甘やかすなよ? 屋台でねだられてもホイホイ買うんじゃないぞ?」

「そうですよ、リン。この二人ときたら目で食べたがりますからね。何でも買い与えてはいけません!」

「え!? いや、流石に何でもは買わないと思いますが、ハイ……」

「そーだよー! オレたちだって、ちゃんと食べられる量しか買わないもんね!」

「ん! 美味しそうなのだけ、買う……!」

「それをやめろ、と言ってるんだ……!!」

赤と青のキッとした視線が、私に突き刺さる。ヴィルさんもセノンさんも、なかなか必死な様子で「買い物買い物」とはしゃぐ二人を抑えてくれてるんだけど……頬を膨らませてブーブーと口をとがらせるエドさんとアリアさんには効果が薄いような感じだなぁ。

目頭を押さえたヴィルさんの、様々な感情を押し殺したような制止の声もどこ吹く風だ。

「いいな、リン。絶対に流されたり、絆されたりするんじゃないぞ? 絶対にだ!」

「あ、はい……がんばり、ます……」

当事者である二人を制しても意味はなさそう、と判断したのだろう。

私を肩をガッシリと掴んだヴィルさんが訴えてくるんだけど…………なんだろうこの『押すなよ絶対に押すなよ』っぽさ……。

……明日の買い物、大丈夫かな……。

殺しきれない不安の中、膝の上のごまみそが呑気に大きなあくびをしていた。