軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ギミックの 正体見たり 枯れ尾花?

最後の魔力溜りは、そう遠くないところにあった。徒歩で30分くらい、かな。

解像度が下がり、時折幻影と元の風景とが二重に見える程度にクオリティが下がった幻影の中を進んでいくと、他の渦とは違い禍々しい赤黒い光を放つ渦が目に飛び込んできた。

私だけで結界の外にいると何かあった時に対処できない……ってことで、私も一緒に魔力の渦の結界内に入り、早急に 野営車両(モーターハウス) へ駆け込んだ。

例によって、渦の中からいくつかの影が姿を現す。今回は……3つ、かな?

背丈は私より小さいくらい……ボロボロの剣と盾で武装したのが2体と、こちらもボロボロのローブを着込んで杖のようなものをもったのが1体。

生存戦略(サバイバル) さんによれば『食用不可』の『ゴブリンソルジャー』さんと『ゴブリンメイジ』さんらしいよ。

……お、おぉぉ……ここにきてまたファンタジック種族ですな!

可食判定は『食用不可』だけど……まぁ、もしも仮に食用可能だったとしても、アレを食べたいとは、思わないなぁ……。

黒板を引っ掻くような耳障りな声と金属同士が擦れ合うガチャガチャと甲高い音が、鼓膜を刺激する。

この音声はキッツいなぁ……。

「さっさと終わらせて次の階に行くぞ! 邪魔すんじゃねぇ!」

「……ん。そこ、どいて!」

抜刀しつつ大股で踏み込んで、一気に間合いを詰めたヴィルさんがゴブリンソルジャーと表記のあった2匹を大剣で薙ぎ払った。

若干ボロっちいとはいえ金属製の防具と盾を身に付けているというのに、暴風の如き一撃を受けたゴブリンズは黒い塵となって瞬く間に消えていく。

後衛にいたはずのゴブリンメイジにもアリアさんの糸が絡みつき、そのまま吊られて、こう……キュッと……な。思わず仕事人のBGMが脳裏に浮かんだ私は決して悪くないと思う。

そしてこちらも、黒塵となって風に散っていった。

……前衛のヴィルさんが、前衛のゴブリンソルジャー相手に無双できるのはわかる。前衛vs前衛だからね。

でも、前衛のアリアさんの攻撃が後衛のゴブリンメイジにまで届くって……! 糸の攻撃レンジどうなってるんだろう?

本っっ当に規格外だな、 暴食の卓(ウチのパーティ) は……。

ゴブリン達が消えるのと時を同じくして、床で渦を巻いていた赤黒い光も消え……周囲に投影されていた幻影もまた消え去った。

「…………うっわ……広っっっっ! ってか、こんなに何にもなかったんだ……!」

「幻影が消えりゃあ、こんなもんだ」

野営車両(モーターハウス) から這い出た私の目の前に広がっているのは、ただただだだっ広い空間だった。

えーとね、地方によくある郊外型ショッピングセンターの、建物と駐車場を含めた敷地面積くらいの広さ……って言って通じるかな?

それくらい広い空間が、無機質な壁に囲まれるような感じで広がってるんだ。

これ、幻影とか強制ワープとか空間ループとかで迷わせなくても、そもそもが広かったんだなぁ……。1周するだけでそこそこの距離になるんじゃないかな?

……それでも、ショッピングモールは途中でお泊りしなきゃいけないほどではないし。そう思うと、結構な距離を歩かされたんだな、私ら。

きょろきょろと部屋の中を見回すうちに 生存戦略(サバイバル) さんがピコンと反応を返してくれる。

次の階への入り口は……多分あそこかな?

階下に繋がる入り口は、部屋の中でも特筆すべきような特徴がない所に配置されていた。確かにこれを、幻影がある状態で探すのは大変そうだ……!

ただそれでも、 暴食の卓(ウチのパーティ) なら幻影ありの状態でも入り口探せちゃうんじゃないかなー、という予感はあるな、うん。

だって、 暴食の卓(ウチのパーティ) だもん! そのくらいできても不思議じゃない感はあるよ。

「1階が洞窟、2階が草原というか、室内タイプ……次の階はどうなってるのかな?」

「さて、な。正直な所、進むたびにランダムで空間が変わるダンジョンは珍しいんだ。予測は難しい」

「なんか妙なダンジョンだよねー。ギミックは面倒なのが出てくるのに、敵はそんなに強くない……って」

「殺意は少なめ……と判断すべきなんでしょうか?」

地面にぽっかり空いた階段の穴を覗き込んでみる。最初の数段以外は塗りつぶされたように暗く、黒く、良く見えない。

……下の階は灯りはないのかな?

うえーっと眉をしかめていると、私の呟きを拾ってくれたのかヴィルさんも穴を覗き込んできた。

イチゴ色の瞳が、階下を探るように見据えている。この 瞳(め) には、どんな風景が映ってるんだろうね?

そんなことをぼんやり考えていると、他のみんなも集まってきて観察会のようになった。アハハと笑うエドさんの後ろでセノンさんが首を傾げている。

「下の階、今のうちにちょっと探る、から……時間、頂戴?」

「そうだな……戦闘もこなしたことだし、アリア以外は装備の確認をしておくか」

「あ、それじゃあ私は今のうちにご飯の下拵え、しちゃいますね!」

階下に繋がる階段へと糸を這わせたアリアさんがこちらを振り返る。その言葉にヴィルさんが頷いて、男性陣は武器や防具、持ち物を確認し始めた。

それじゃ、私はその間にある程度のご飯の準備をしてしまおうか。

……晩御飯はどうしようかなぁ? お肉はたっぷりあるし、簡単に済む方法で何か作れないかな?

ハンバーグ……生姜焼き……鶏テリヤキ…………迷うわぁ……。