軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イカを炒めてエビ揚げて 夜を通して酒浸り

「貴方へのお土産ですよ、リン」

「あ! これトマトじゃないですか!!」

「昼間、よく使ってたみたいだったからな。好きなんだろう、ソレ」

「はい! 大好きです! ありがとうございます!!!」

セノンさんが提げていたクーラーボックスには、トマトがいくつかと、ワインの瓶が何本か、塊のハムが収められていた。

私のトマト愛っぷりを見たヴィルさんが、追加で買っていこうと言ってくれたんだそうな。

あの、野菜嫌いのリーダーが、野菜をお土産にしてきてくれるなんて……!! ありがてぇ……! リーダー、マジでありがてぇよぅ!!

これで、イカのスパイス炒めにトマトがプラスできる!!!

「オツマミ作っておいたんで、コレで乾杯しててください!」

「リンはどうするんだ?」

「私はもう何品か仕上げちゃうんで、先に始めててくださいな」

「いけませんよ、リン。貴女も一緒に席につかなければ……一人だけ働かせるわけにはいきません」

「そうだぞ。お前は、もう 暴食の卓(ウチ) のメンバーなんだから。妙な遠慮はするな」

ヴィルさんからトマトを受け取ると同時に、小エビの唐揚げをヴィルさんに渡す。物々交換みたいだ。

よーし! さっそく追加のツマミを作るぞー! ……と意気込んだんだけど……。

まさか真顔で止められるとは思ってもみなかったんだ……。……思わずジーンときちゃうよねぇ。

でも、 料理(コレ) はもう半ば趣味みたいなものなので、気を使ってるわけじゃないんです。

楽しいからやってるんですよ!

「車内で作業してますし、目の前で調理してくれるアトラクションと思ってくださいな! アツアツを、食べて欲しいんですよ」

「………………本当に、遠慮とかしてないだろうな?」

「してないです! ……でも、どうしても気になるのであれば、外の焚火台に火を起こしててもらってもいいですか? その間に仕上げちゃうので……!」

「よし、わかった。ちょっと待ってろ」

本心を述べてみたものの、やっぱり気にしているようなヴィルさんに、火熾しをお願いすることにした。

ちなみに、セノンさんも「私も手伝いますよ」と言ってくれたので、飲み物のグラスの準備をお願いしている。

エドさんとアリアさんは、索敵用の網やら虫よけの陣を作ってくれているようだ。

時間稼ぎ……というわけではないけれど、この間に料理を仕上げてしまわねば……!!

ブイヤベース風スープを温め直すその横で、イカの炒め物2種を作りまする!

まずはバターを溶かしたフライパンにお土産にもらったトマトを擂り下ろして炒めていく。

水分が飛んだところで、ブツ切りにしておいた皮付きイカを加えて炒め合わせ、私特製のミックススパイスとちょっぴりのカレー粉、塩かお醤油で味を調えたものを更に煮詰めたら出来上がり!

下拵えしておけば、実に簡単にできる料理の一つなのだよ。

スパイス炒めを皿に盛り、フライパンをざっと洗ったらまたバターを入れて、今度は皮付きのブツ切りを炒めていく。

半分くらい火が通ったところで肝を溶かした醤油を加えて、こちらもお醤油がちょっと煮詰まった頃合いで火を止める。

こちらは蒸かしたジャガイモを一口大に切ったものの上に掛けたら出来上がりだ。

「あとは丸太焼きをオーブンさんにお願いしておけば、OKだね!!」

「リン。火が起きたが、火加減はどうするんだ?」

「火加減は今くらいで! エビ、焼きましょう!」

ちょうどよく戻ってきてくれたヴィルさんの前でお馴染みのBBQ用金網をヒラヒラさせながら、伊勢ロブスターと大型車エビの入ったボウルをもう片方の手で掲げてみせる。

伊勢ロブスターは大きいけど、お刺身でもイケる鮮度だろうからざっくり焼きでも大丈夫でしょう!!

ギューギュー鳴いているヤツを金網の上に放置プレイして、車内に戻る。火が通るまで時間がかかるだろうし、多少焦げても殻を剥けば大丈夫じゃないかなー。

逃げないように、焦げないように見張りつつ、打ち上げしましょうか!

「ギルドから火熊の分も含めて報酬が出たが、清算は明日に回そうと思う。とりあえず今は、何事もなかった海辺の任務に……乾杯!!」

銘々にグラスと好みの飲み物が配られた後。ヴィルさんの音頭でグラスとグラスがぶつけられた。

ヴィルさんとエドさんはエール、セノンさんは赤ワイン、アリアさんはスパークリングワイン、そして私は冷えた麦茶だ。

所狭しと料理が並ぶテーブルは、それでもお昼みたいに銘々皿でないだけまだ若干のスペースがある。

「うっま!! エビ、うま!! カリッカリじゃん!! なにこのエールが強制的に進むヤツ!!」

「いか、おいひぃ……おやさい入ってるのに、おいひぃよぉ……」

「ジャガイモもこうして食べるとしっとりとして、良いものですね。あのパサパサとした食感が苦手だったのですが、これなら気になりません」

「……失敗したな……もう一樽買ってくるべきだったか?」

いやぁ。気持ちいいレベルで次々にツマミがなくなっていきますな!

それに伴ってものすごい勢いでお酒も消費されてるんだけど、山積みされてる瓶と樽だから、まだ足りるんじゃないかな??

……さて。私もなくなる前に争奪戦に参加しよう!

イカとトマトのスパイス炒めと、ゴロジャガバターを皿にかっさらい、まずはスパイス炒めの方を……。

……あー……我ながら美味しいもん作ったわぁ。

多めに入れたクミンとコリアンダーがガツンと香った後に、濃厚なバターのコクとイカの旨味が舌に絡みついてくる。それを煮詰まって甘酸っぱさが増したトマトがさっぱりと洗い流して、最後にカレーがピリっと口の中を引き締めていく。

ついつい後を引く美味しさなわけで、うっかりすると箸を止めずに食べ進められてしまいそうだ。

スパイスミックスがなければ、カレー粉だけで作っても美味しいよ!

ご飯と一緒に食べてもいいし、そうめんとかと一緒に食べても美味しいんじゃないかな?

ちなみに、私のミックススパイスは、クミンとコリアンダーを中心に、パプリカとかチリとかカルダモンとかクローブとかオールスパイスとか……目についたスパイスを気の赴くままに混ぜたヤツだ。

塩味を入れていないから、塩にも醤油にも味噌にも対応できる優秀な子なのですよ!

チリのお陰で火照った口を麦茶でクールダウンさせ、今度はゴロジャガバターに箸をつける。

こちらはこちらで、濃厚な肝の旨味をバターが上手に膨らませてくれている。乳脂の甘い香りが、ともすれば生臭くなりがちな肝を包み込んでくれているからだろうか。

そこに香ばしく焦げたお醤油が絡まっているもんだから、生臭みは感じない。

ゲソはシコシコと、エンペラはコリコリと、胴体はむっちりとしていて、それぞれ噛んだ感じが違うからか、食感に変化が生まれて口飽きがしてこない。

イカの旨味とバターとお醤油が沁みたジャガイモは、どっしりとそれらを受け止めて、しっとりほろほろと口の中で溶けていくようだ。

海の匂いと土の匂いが、ふっと鼻から抜けていく。

イカ、美味しいなぁ……!

見る間に空になっていく皿に、ある種の感動を覚えつつ……出来上がりを告げるオーブンの中身を取り出すべく、私はそっと席を立った。