軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

小エビの唐揚げにレモンおかけしますか?

サリ貝は砂抜きの時間を待てない! ……ということで、値下がりには目を瞑って納品分と一緒に売り払うことにしましたよ!

クーラーボックスごと持っていくヴィルさんたちを見送って、私とアリアさんで今日の打ち上げの準備をしていこうと思う。

まずは日があるうちに、薪用の木の枝とかを拾っておいて、燃料を確保しておかないと……。とりあえず、良く乾いた枝を太い細いに関わらず、目に付いた分だけ集めてきてみた。

丸太に近いサイズのがあったけど、それはアリアさんが糸で絡めて引き寄せてくれたよ! コレは、燃料がなくなったときの最終手段として取っておくことにしよう。

ある程度の燃料が集まったら、焚火台やら何やらを用意しておいて……あとは楽しい料理の下ごしらえだ!

「流石に 野営車両(モーターハウス) の台所と外の焚火との間を往復するのは得策じゃないなぁ」

「……焚火の調子は、見てられるけど…………料理は、ちょっと……」

「両方とも似たような感じだと思うんですけどねぇ……?」

焚火の火加減を見るのも、料理の火加減を見るのも似たようなもんだと思うんだけど、どんなモンだろう……?

とりあえず、ブイヤベース風アラ汁を作るために、出汁を取っておこうと思いまする。出汁さえあれば、汁物は何とかなるからね!

スズキのアラは塩を振った上で天板に並べ、オーブンでこんがりと焼いておく。

その間に玉ねぎを1個スライスして、オリーブオイルとニンニクと一緒にこんがり炒めて……。

「なんか……良い匂い……」

「玉ねぎは糖分が多いから、ちょっと焦げ目をつけてあげると香ばしい感じに仕上がるんですよ」

「なる、ほど」

「……で、良い色になったら焼いておいたスズキのアラを入れて、アラにも焦げ目がつくくらいじっくり炒めておきます」

ツンと尖った可愛らしい鼻をヒクヒク動かしながら、アリアさんが徐々に色づいていくフライパンの中を覗き込む。

こうしてしっかりおくと、霜降り&水洗いとかにしなくても、生臭くない出汁が引けるんだよね。

玉ねぎとアラがキツネ色になってきた頃合いを見計らって、イカのスパイス炒めに使うつもりで取っておいた虎の子のトマトもここで入れてしまう。

やっぱり、ブイヤベースにはトマトがないとねぇ。うま味成分たっぷりのトマトが入るか入らないかで、結構味は違うと思うんだ。

ブイヤベースって、結局のところ『洋風魚のごった煮』だから、美味しい出汁が引けていることが最低条件らしいのだよ。

生トマトをこうして煮詰めておくと、ビックリするくらい味が濃くて美味しくなるんだよねぇ。

トマトの水分が飛んでもったりしてきたら、水を加えて沸き立たない程度に……表面が揺らめく程度の火加減でコトコト煮込んでおきまっする!

ついでに、スパイスボックスに入ってたローリエも入れておこうかな。新鮮だから臭みはないと思うけど、ま、念のために、ね。

「出汁取ってる間に、小エビの下処理をしちゃおうかな」

「どうするの?」

「塩コショウと小麦粉つけて、軽く下揚げしておきます。男性陣が帰ってきたら二度揚げして、カラっと殻ごと食べられるようにしますよ!」

甘エビみたいな小エビは、小さめのザルに小山ができる程の量が獲れていた。

触ってみた感じそんなに殻も固くはないから、しっかり揚げちゃえば殻ごとバリバリいけると思うよ! お酒のお摘みにはいいんじゃないかなー。

出発前に汚れや何やらは洗い流してあるので、今はもうさっと洗うだけで大丈夫そうかな?

キッチンペーパーでしっかり水気を拭っておいて……と。

ビニール袋に塩・胡椒と小麦粉を適量ブチ込んだ中に小エビを入れ、口を軽く縛って激しくシェイク! シェイク! シェェェェイク!!!

直接触らないから手も汚れないし、粉が飛び散らないから台所も汚れないし、このワザを覚えておくとめっちゃ便利ですよ!

なお、今回のエビみたいに触覚とかトゲとか突起があるモノでやる時は、袋を二重にしておけば破れにくくなりますですよ。

浅型のフライパンにちょっと多めに油を入れて、火をつける前から小エビを入れておく。低温からじわじわ揚げると、しっかり水分が抜けて殻ごと美味しく頂けるのだ。

高温でやっちゃうと焦げるばっかりだから、小鳥遊家では色味は二度揚げの時につけるようにしている。

ついでに、残ったニンニクも粒のまま入れておこうかな。

時折フライパンを傾けて油を集め、エビの身全体が油に浸かるようにして揚げていく。

換気のためにキャビンのドアと窓は開けてあるけど、それでもなお香ばしい香りが台所に充満している。

…………そういえば、隠蔽ってどの程度まで効果があるんだろう? 匂いでバレちゃったりしないのかなぁ??

時折ひっくり返しながら、じっくりじっくり……水分を抜いていく。

………………なんかこの光景、見たことあるなー……と思ったら……。

「………………アヒージョ?」

「それだ!」

「そうなの?」

「……いえ。小エビの唐揚げですねぇ……」

ジュワアアアア……という音が、シュウウウウ……という音に変わってきたら水分が抜けてきた証拠だ。

バットに上げて油をきっておいて、あとはみんな揃ったら二度揚げしよう!

…………でも、せっかくだもんね!

「アリアさん、アリアさん、あっつあつですけど!」

「リン……!!! い、いいの?」

「良いんです、良いんです。味見をして現在の味を知らないことには、味の調整もできないんです」

私がアリアさんに差し出した爪楊枝の先には、まだ油がジュワジュワ弾けている小エビが刺さっている。

薄い衣越しに見える殻は真っ赤に色づいて、見るからにカラっと揚がっている。

感極まったのか、胸の前で祈るように手を組んで見つめてくるアリアさんに、私はにっこりと微笑みながら頷いてみせる。

え? 美食の悪徳へと誘惑する 土偶(あくま) と、それに誑かされる哀れな 聖女(びじょ) に見えるって?

わかってるよ、ほっといて!!

でも、揚げたてを食べずして何が揚げ物か!! 何が唐揚げか!!

口の中の火傷を恐れずに……カリカリの衣や皮で上顎が傷つくことも厭わずに……欲望の赴くままに口に運んでこその揚げ物でしょうが!!!

震えるアリアさんの手にそっと揚げたて小エビを手渡して……私もすかさず小エビを口に放り込む。

「あふっ!! あっふぁ!! あ、あふぃっ!!!」

「はふっ!! はふぅっ!! あふ、おいひ!!!」

揚げたてを食べる(こういう) 時は、どうしてもこうなるよね……。

ふーふーと息を吹きかけて冷ましたとはいえ、まだ舌を焼きそうなほどに熱い殻に歯を立てる。

まだ若干固いものの、噛み砕けない程ではない。

バリンと殻を破れば、中から溢れる甘いエビの肉汁と濃厚なエビ味噌がブシュッと溢れ出し、口の中いっぱいにエビの味が広がっていく。

この風味を逃さないよう口を閉じておきたいのに、ただでさえ熱い口の中がさらに熱を帯びたせいで、はふはふと口を大きく開けて外の空気を取り込む羽目になってしまう。

………………おわかりいただけるだろうか……?

大して涼しくない外気ですら、冷たく感じてしまう程の……………………熱さ……。

衣にもうっすらと塩味が付いているものの、身に残っていた海水の塩味も程よく利いていて、何もつけなくても十分に美味しい。

ぎゅっと詰まった身は旨味が濃縮されており、噛むたびに中から旨味と甘みが肉汁となって滴ってくる。細い脚はジャクジャクと歯切れがよく、香ばしい風味が舌に残る。

限界まで熱くなった口の中に冷たい麦茶を一気に流し込んで…………!!

「――――っぷはぁぁ!! おいっ、しい! でも、あっつい!!」

「でもコレ、お酒に、合う!! ぜったい、あう!!」

瞬時に冷えた舌の上に残った熱の残滓をため息と共に吐き出して、私とアリアさんは高く掲げた掌をお互いに叩き合わせた。

今はまだ若干固さが残るものの、二度揚げすれば気にならないようになるだろう。

「ねぇ、リン。もういっこ……もういっこ、ちょうだい? ね? ね?」

「だ、ダメです!! アリアさん、何回『もういっこ』って言うつもりですか!?」

「なくなるまで!」

「それダメなやつです!! 1個って何個ですか!?」

上目遣いで見つめてくる美女のおねだりは、結局もう1匹のエビをせしめるまで続いたことを、ここに記しておく。

ちくしょう!! あざと可愛い美人さんなんて眼福でしかなかったぜ!!!