軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

掛けまくも畏き綿津見の大御神の広き厚き御恵を辱み奉る

レジャーシートの上に転がる、魚介の山の凄さよ!

まず目を引くのは、伊勢海老とロブスターを足して割ったみたいなデカいエビだ。ギチギチと立派な触角を振り回しながら鍋の底を這い回っている。

それ以外にも、尻尾の先が七色グラデになっている大型クルマエビみたいなヤツもいれば、甘エビみたいな小エビも結構な数が獲れている。

他にも、甲の長さが掌くらいあるカニとか、拳ほどもある巻貝にホタテによく似た二枚貝、そして追加のサリ貝とスルーイカが何杯か。

争奪戦に加わるのが遅かったせいか、魚は拾えなかったみたいだ。

……うん。魚がないのは逆にありがたいけどね。

いくら海鮮好きかつ料理が好きって言っても、この量を処理しろっていうのは、流石にちょっとキツいものがある。

「こりゃまたずいぶん取れましたね!」

「他の連中の持ち込みも多いだろうし、大分買い叩かれそうだな」

「海鮮の需要と供給のバランスが、しばらく崩れるだろうしねー」

「買い叩かれるくらいなら、いっそ食っちまうか?」

「流石にこの量は食べきれ…… 貴方(ヴィル) がいれば食べきれそうですねぇ」

眉根を寄せたヴィルさんがボソリと呟いた。

海に来ていた冒険者さん達が山ほど海の幸を持って帰っていったし、あの量ならしばらくは海鮮が安く卸されそうだもんね……。

値崩れは必至だろうなぁ。

納品分は契約時の買い取り価格で買い取ってもらえるものの、余剰分はその時の相場価格での買取になるらしい。

ヴィルさんと海鮮の山とを何度か見比べたセノンさんが呆れたようにため息をつくけど、正直わたしもそれに賛成かなー。

ヴィルさんならペロっと食べきれそうだよね、うん。

「確かにねー。足元見られるより、幸運の使者の恩恵に与った方がいいかも」

「……ん。 沖に棲まうモノ(レプン・カムイ) からの、女神の恵みのおすそ分け、だし」

「ああ! そういえば、あのシャチそれらしいこと言ってましたね」

「海の女神の祝福を!」という何とも『 幸運の使者(ソレ) っぽい』セリフだが、恐らく絶妙などや顔で言ってるんだろうなぁ、と思うと何となくイラっとする気持ちが湧き上がってくるのはなんでだろうなぁ。

アイツの言動のせいだな、うん。

でも、コレを食べちゃう方向で行くのなら、ぜひぜひブイヤベース風アラ汁に挑戦してみたいなぁ!

甘エビっぽいのは殻ごと唐揚げ。大型車エビと伊勢ロブスターとホタテっぽい貝は豪快に網焼き。じっくり焼けば、大型車エビくらいなら殻ごとバリバリ食べられると思うんだ!

あ、でも、何匹かはお刺身でも食べたいなぁ……! イカも切れ目入れただけの丸焼きにしても美味しいと思う!

巻貝はガーリックバターと醤油で香りよく頂きたい所存! サリ貝は……君はまず砂抜きからだね!!

「あ、でも、皆さんギルドに報告に行かなきゃいけないんですよね? 私は今日は何もしてないですし、街の外でご飯の準備しててもいいですか?」

「…………ソレもアリと言えばアリだろうが、リンを一人にはできないからな。アリアに残ってもらうか」

「ん! 味見とか、味見とか、味見とかは、任せて!!」

「………………不安しかないな……大丈夫か、リン?」

「アリアさんが残ってくれるなら心強いですよ! 私たちの味見で食料がなくならないうちに、皆さん帰ってきてくださいね!」

ざっくりと仕分けをしている間にふと思い出したんだけど、依頼達成したってことはギルドに行って終了の報告とか納品とか買取とかをしてこなくちゃいけないわけだよね??

とはいえ、今日の私は採取にも戦闘にも関わってないし、街の外で待ってるわけにいかないかな?

また大門を落とされちゃうと、下拵えとかもできなくなっちゃうもの……。

そう思ってヴィルさんに提案してみたところ、アリアさんがお守りとして就くことを条件に許可を頂けましたよ!

……尤も、私とアリアさんだけだと、摘みg……んっんっ……味見が進みすぎる可能性があるので、ぜひお早めに帰ってきてくださいね!

「BBQメインにするつもりなので、お酒とか飲まれる方は各自購入をお願いします! 主食が欲しい方も持参の方向でお願いします」

「おう。帰りに適当に買ってくるが、アリアとリンは何か欲しいものはあるか?」

「お酒! エールでも、ワインでも、なんでも!!」

「私はお酒得意じゃないので、パンとかが欲しいです」

「わかった。それじゃあ、まずはエルラージュに帰るか!」

常温に置いておくよりは……ということで、洗って砂やら汚れやらを落とした海の恵みを冷蔵庫にぶち込んで、 野営車両(モーターハウス) のエンジンに火を入れる。

ブルルル……という重低音と振動と共に、何となく車体全体にナニかが回っていく気がする。

私にはよくわからないんだけど、コレが『魔素』とかいうものなんだろうか……。摩訶不思議物質だなぁ……。

メニューについて、あーでもないこーでもないとキャッキャウフフと話している 居室(キャビン) の声に、私も胸が弾んでくる。

「海鮮BBQ、めっちゃ楽しみです!」

「ああ! 期待してるぞ、リン!!」

「了解です! 皆で打ち上げしましょう!!」

少々のでこぼこ道もなんのその。 野営車両(モーちゃん) はエルラージュへの道をひた走る。

ヴィルさん達を下ろしたら薪集めておいて、設営して……そしたら念願のかーいせーんばーーべーーーーーきゅーーーーーーーーーー♪

……はっ!! もしや、また無意識に鼻歌が……!?

………………恐る恐る助手席に座るヴィルさんをチラ見してみると、思いっきり笑いをこらえるかのように唇を噛みしめられていた。

ああぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!! また! また聞かれたー!!!!!

ハンドルに突っ伏しそうになるのを必死にこらえる帰路は、なかなかに苦行だったという事だけは伝えておきたいと思う。