軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドキ☆ワク 感動再会物語♪ ~ポロリはないよ☆~

石壁と石段でできている狭い階段は、まさに「隠し通路」という雰囲気がぷんぷんと漂っていた。等間隔にカンテラのようなものが吊るされており、周囲と足元を照らしているのもまた風情がある。

どこからか空気が入り込んできているのか、ときおりスゥッと冷たい風が頬を撫でた。

この分だと換気もできてるっぽいし、窒息するようなこともなさそう、かな。

しばらく下っていたかと思ったら、今度はようやく平坦な道に出た。ただ、奥の方は暗くなっていて、どれだけ続いているのか見当もつかない程度には長いみたいだ。

「……それにしても、こんな地下通路、作るのは相当時間と人手がかかったでしょうね……」

「そうかなー? 土魔法で穴は掘れるし、短距離転移の魔法が使えれば、石とかの配置もできるから、そんなに手間でもなかったんじゃないかなー?」

「え……そ、そんなもんなんですか?」

「まぁ、ほら、リンちゃんもこの国の成り立ち、知ってるでしょ? エルフとかの魔法に長けた種族も追いやられてきてたしねー」

靴音もよく響く空間のため、小声で呟いてみても声が拾われてしまうらしい。

物珍し気に周囲を見回しながら歩く私の後ろにいたエドさんが、コンコンと石壁を軽く叩きつつ応えてくれた。

あー……魔法……。魔法、かぁ。

「魔法」だの「呪文」だのは 空想(ファンタジー) でしかなかった世界で生まれ育った身としては、めちゃくちゃ不可思議なものではあるんですけどね。

物語とかゲームとか……ものすごく身近にあるものではあるけど、決して手の届かない所にあるもの、というか……。

そんな摩訶不思議な技術が、 異世界(こっちのせかい) では普通に生活に根差して使われてて……カルチャーショックを受けまくりですよ、ええ。

……ってことは、だよ。多分、地上部分の建物も、きっと魔法をメインに作られたんだろうなぁ。

「あ、でもね、肉体労働がなかったー、っていうわけじゃないっぽいんだ。そこそこに大きな魔法を使える人の数にも限度はあるし、細かい装飾や微調整なんかは手作業でやってたみたいだよ」

「ああ、なるほど。大まかな所は魔法でやっちゃって、細かい所には人の手が入った、って感じですかね」

「それでも、一から手作業でやるよりは、格段に違っただろうけどねー。オレも当時に生きてれば、色々と駆り出されてたと思うよー」

「ああ。エドさんの魔法、未だに何がどうなってるのかさっぱりわかりませんもん! 凄いなー、っていう事はわかるんですけどねぇ……」

にこにこ笑うエドさんは、さも何でもない風にそういうけど……。

私が覚えているだけで、炎に水に風に雷に……様々な属性の魔法を難なく披露してきたエドさんは、かなり凄腕の「魔法使い」なんだろうなぁ、と思いますよ!

小声で取り留めもない会話をしているうちに、通路に何となく上り坂っぽい傾斜がついてきた。どうやら、地上に向かっているらしい。

果たして、通路の突き当りは階段になっていて、そこを登っていくしかない作りになっていた。

緩い螺旋状になっている階段を、ゆっくりゆっくり昇って行って……。

「……う、わ…………すご……」

目の前に広がる光景に、思わず感嘆の声が漏れそうになったところで……さっきのエドさんとアリアさんの忠告を思い出し、慌てて口を押えた。

ふっかふかの絨毯と、随所に飾り彫りの施された柱、そこかしこに置かれた品の良いアンティークっぽい調度品……。

素人目でも高級品、っていうのがわかる程度にはいいお品なんだけど、全体的に見るとそれが嫌味じゃないように計算されてるって言うか……。

シックなんだけど、モノは良くて……でも、成金っぽく見えないよう飾られてるんだから、凄いセンスが良いんだと思う。

……それにしても、今まで暗い通路を歩いてきて、ようやく地上に……と思ったら、なんか、こう……めっちゃ高級感漂う回廊に立ってるって……現実感がちょっと薄いわぁ……。

『あんなー、あんなー、朕も! あるく!!』

「しー! ごまみそ、しー!! ちょっと静かに、ね?? 暴れないでー!!」

「探検したい!」と言わんばかりに腕の中で暴れるごまみそをぎゅむっと抱き直し、耳元で静かにするよう囁いた。

お願いだから、さっきの空気の読みっぷりをここでも発揮しておくれ! この調度品、壊したりしたら弁償できないから!!

足音や衣擦れの音が下の絨毯に吸い込まれるせいで、五人と一匹というそれなりの大所帯で移動しているのに、回廊はしんと静まり返っている。

誰一人として口を開かず進んでいるせいも、ある。

……うおぉぉぉぉ……なんだ、この雰囲気!? めっちゃ緊張してきたんだけど!!!

緊張のあまり、冷たい汗がつぅっと背中を滑り落ちる。

……と……。

「……だいじょぶだよ、リン……」

「あ、アリアさん……」

「そんなに、悪いことは……おきない、と、思う……」

ごまみそを抱きしめる強張った腕に、ひやりとする柔らかなモノが触れた。

思わず飛び上がりそうになったのをこらえて視線を動かせば、淡い笑みを浮かべたアリアさんがそっと腕を組んでくれた。

だいぶ冷たいとはいえ人肌の感触に、何処か安心した部分があったんだろう。ふ、と詰まっていた息が漏れた。

宥めるようにきゅっと腕を掴んでくるアリアさんに微笑み返して、また静かな回廊を歩く。

どのくらい廊下を歩いたことか……今まで過ぎてきたものと同じような扉の前で、ヴィルさんが足を止めた。

ぎゅっと唇を噛んだまま、ノックするために拳を握って……その拳が力なく落ちる。

それでも、もう一度握られた拳が扉を叩こうとした時。

「扉は開いているよ。入っておいで、ヴィル」

静かで落ち着いた声が、飴色の扉の向こうからこちらの動きを見透かしたように響いた。