軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

物見遊山は楽しいな 知らない風景楽しいな

しばらく走ると、道が二股に分かれている所に出た。

ナビを見ると、右に行けばメルロワの街へ。左に行けば王都へと続く道……という感じになっているようだ。

キャビンの方から若干一名の「右でもいいんじゃないか」オーラを感じた気がしたものの、昨日の話し合い通り王都を目指すべくハンドルを左に切る。

「今日のお昼はどうしましょうかねぇ……ハムとかベーコンとかの加工肉とか、チーズ、卵あたりがメインになると思うんですけど、何か食べたいものってありますか?」

「……いつもであればベーコンをそのまま齧る程度のことしかできなかったというのに、こうして料理をしてもらえるなんて……何とも贅沢な気分ですね」

「……………………相変わらず闇が深い……!」

「朝ご飯が終わったのにもう昼ご飯の算段を?」と聞かれるかもしれないが、仕方ないじゃないか!

暴食の卓(ウチのパーティ) だぞ!? 食いしん坊パーティだぞ!? 食い倒れ万歳だぞ!?

薄っすらと微笑みつつ感慨深げに頷くセノンさんの背後から漂う消しきれない闇の気配を感じつつ、頭の片隅で冷蔵庫の残り物を思い浮かべる。

……あ、そうだ! チーズフォンデュ作ろう!!

こっちの世界のチーズ、お乳の味がしっかりしてて美味しいんだよ!! そこに、あのベーコンの旨味が加わったら最高じゃない!?

白ワインの残りもあったし、牛乳も買ってあるし、コーンスターチ的なのもこの前買ってたし……できるできる!!

「それじゃー、今日のお昼はチーズフォンデュにしましょうか! お肉も野菜も美味しく頂けるはずです!」

「それは素晴らしい! 期待していますよ、リン?」

「は、はい! がんばります!!」

ペカーっと後光が差す勢いで微笑むセノンさんの顔面パワーに負けなかった私、えらい。超えらい。

あ。やはり鍛冶の街と王都を繋ぐ幹線道路は人通りも多いため、街道脇の未舗装部分を走らせていただいておりますよ! 馬が牽く馬車とか恐竜が牽く竜車の他にも、徒歩で移動する旅人さんとかがいてけっこう面白いなぁ、と思う。

時々ものすごいスピードで駆けていくのは、速達便を運ぶ飛脚みたいな職業の人だそうな。走るのが早い種族とか、持久力がある種族に人気の花形職業なんだって。

そりゃ、街道をあれだけ颯爽と駆けていくんだ。人目は引くだろうし、荷物や手紙を一刻も早く届けたいっていう人もいるだろうし、需要はあるだろうなぁ。

緩やかとはいえ若干の山越えがある、という事前情報通り、次第に林や森が多くなってきている。

こんな車窓の移り変わりを見るのも、また楽しい。

そんな半ば物見遊山のドライブをきりの良さそうな所で切り上げて、人目につかないよう街道から少し離れた所……気持ち良さそうな木陰に 野営車両(モーターハウス) を停める。

「それじゃー、ちょっと見回り行ってくるねー♪」

「すぐ、帰ってくるね!」

「昼食を楽しみにしていますね」

「はい、行ってらっしゃい! お気をつけて!!」

木が増えてきているということは、それだけ見通しも悪くなっているということで……。

私が昼ごはんを用意している間に、アリアさんとエドさん、セノンさんとが周囲の見回りに行ってくれることになった。

セノンさんには軽く昼食メニューを伝えてあるせいか、浮かぶ笑顔がとっても眩しい。でも、それに負けず劣らず、エドさんはチャラ可愛い系イケメンだし、アリアさんも可愛い系美女だし、ヴィルさんも厳つめ系イケメンなわけで……。

うむ。うちのパーティ、みんな顔が良いカッコ私を除くカッコトジ。

え? ごまみそ?? おみそは……えーと…………う、ウザ可愛い、とか??

そんなヴィルさんとごまみそは、お留守番、兼、いざという時のボディガードである。実に豪華なSPですな。

「さて! それじゃあご飯の準備を始めますか!」

『ごあん! 朕もごあん!!!』

「何か手伝うか、リン?」

「そうですね……ヴィルさんは、ごまみそをモフモフする作業をお願いします!」

「い、いいのか!? 猫は、嫌いじゃなくてな……」

本猫はスリスリのつもりだろうけど、やられてるこちらとしてはゴツゴツという脛への頭突きにしか感じられない愛情表現を受けつつ、台所に立つ。

とはいえ、さすがにこのままじゃ足元をウロチョロするごまみそを蹴ってしまいそうなので……。

足元のごまみそをひょいと抱き上げて、こちらに来てくれたヴィルさんにそのままお渡しする。

一瞬目を丸くするヴィルさんだったけど……すぐに目を細めてごまみその喉を撫で始めた。ごまみそも目を細めてごろごろ喉を鳴らしている所を見るに、まんざらでもないかんじだねー。

ヴィルさん曰く、旅に出てからアリアさんがずっとごまみそを抱っこしていたから、ちょっと羨ましくなったんだそうな。

確かに、助手席でもキャビンでも、アリアさんに引っ付いてましたもんね、ごまみそ……。エドさんから漂う殺気みたいな雰囲気が、運転席にまで漂っておりましたとも……!

「それで、今日は何を作るんだ?」

「簡単に、チーズフォンデュにしようかなー、と。チーズを溶かして、野菜とかベーコンを絡めて、食べます!」

「それは話を聞くだけで美味そうだ!!」

「チーズは、この前ヴィルさんがおすすめしてくれたお店で買ったやつなので、美味しいと思います!」

献立を聞いてイチゴ色の瞳を輝かせるヴィルさんと、「おこぼれがもらえるのでは!?」と期待してか、耳をピンとたてるごまみそ。

期待に添えるよう、今日も頑張りますかね!

ぐいっと腕まくりをし、まずはチーズを取り出すべく、私は冷蔵庫の扉を開けた。