軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レアル湖フィッシング リターンズ

「糸、細いね!」

「『科学の力ってスゲー!』っていう感じですかねぇ? 私から見ると、アリアさんの糸の方が凄いですけどね」

「糸、使う??」

『朕がなー、おみじのなか、シュッシュッってしようかー??』

「もし大物が釣れた時は、フォローお願いします!! おみそは水に落ちないように気を付けてね」

二人がかりだと、設営もあっという間に終わってしまう。もともと焚火台とかを用意するだけだったし、風で飛ばされるのが嫌だったので、収納庫から出して、すぐ取り出せるよう 居室部分(キャビン) の出入り口付近に纏めたらOK……って感じだったし。

そんなわけで、アリアさんとごまみそと一緒に、釣り道具一式を抱えてレアル湖の波打ち際までやってまいりましたよ!

ラインの……釣り糸の細さに驚くアリアさんだけど、私にしてみると魔物を両断したり賽の目に切り刻めるアリアさんの糸の方がすごく感じるけどなぁ。

……それにしても、朝マズメはとっくの昔に過ぎてて、いまはもうお昼近くになって……活性は落ちてるよねぇ……この前はかなり盛んにあったライズも、今日はほとんど見られない。

……うーん…………ただでさえ腕がないのに、こういう状況でスプーンで釣れる気がしないんだよなぁ……。

……………………。

……………………………………。

うん! こういう時はフェザージグかな! ネイティブトラウトに効くかどうかはわからないけど、管理釣り場のレギュレーション的にOKな時はボウズ逃れのための強力な味方だもんね!

「えーと……虫っぽいのは飛んでるから、ちょいと泳がせ系のフェザーちゃんをですな……」

「ちっちゃい!!! それで、釣るの??」

『ふあふあ!! それ、朕のおもちや?? 朕のおもちや??』

「水棲昆虫みたいに漂わせて誘うタイプの疑似餌ですね。他にもありますよ! おみそ! 針ついてるから危ないよ!」

手持ちのフェザージグの中から比較的色合いの落ち着いたもの……その上で水中をふわふわ漂う虫のように引けるものを選択し、釣り糸と結びつける。プラリと竿から垂れ下がるジグをごまみそがぶっとい前足でつついてきそうになって、慌ててロッドを上げて距離を取った。

うん。猫にとっちゃいいおもちゃだよね、うん。

ルアーケースのルアーをしげしげと眺めるアリアさんに、他のルアーケースを渡しつつ、私は水際にそっと歩み寄る。ルアー観察をしつつ、アリアさんもついてきてくれるようだ。足音を殺して私の横を歩いている。

幸い、風は吹ていない。

ちょっとフェザーを水で濡らして、僅かばかりではあるものの重量を増やして…………。

「よいしょー!」

「……そんなに、とば、ない……??」

「あくまでも人工の釣り堀用のルアーですからねぇ……自然渓流用とかのはまた違うんでしょうけど……」

私としては結構上手く飛ばせたとは思うけど、やっぱり現役冒険者の目から見れば大した飛距離は出てないように感じるんだろうなぁ。

着水から水面からどれだけ沈んだかカウントをはじめて…………お?

5カウント目くらいで、手元にコツンとアタリが伝わってきた。

合わせてみるけど、魚がかかっている手ごたえはない。ショートバイト……甘噛みみたいな感じだったか……!

竿をしゃくってルアーを水面まで上げて、もう一度カウントしながら沈めていって……さっき手ごたえがあった5カウント目くらいの深さで、ゆっっっっくりとリールを巻き始める。

アタリがあった、ってことは、そこの深さに魚がいるってことだろうからね!

「……こう……ふわふわと……漂わせる、感じ、で……」

「てごたえは、ある??」

「うーん……アタリっぽいのは、あるんですけど………………よしっっっ!!!!」

リールを巻きつつ竿を持つ方の手の指で、コツコツと軽く竿を叩く。こうすると微かに竿が揺れて、水中のルアーが絶妙に揺れる……らしいんだよ。

その上で、水棲昆虫が逃げ惑う感を出すように、ゆっくりとリールを巻いていくと……。

ゴゴッとラインに重みが加わった。素早くリールを巻いて合わせてやる。

途端にドラグがジィィィィッと鳴り、糸が沖へと吐き出されていく。

「かかった!?」

「かかりました!! 結構大きいんじゃないかな、コレ……!!」

『朕が! 朕が! シュッシュッてする!!!』

「おみそステイ!! 焦らせないで!!!!」

水面に向かって弓なりに引き込まれる竿に、アリアさんが瞳を輝かせて私と沖の方とを交互に見つめてくる。

ごまみそも爪を出して、練習のつもりなのか素振りをする程度にはやる気満々だ。

まって! みんな待って! まだ沖だから! 魚寄ってきてもいないから!!!

針を外そうとしているのか、イヤイヤをするように頭を振るような感触がロッドを握る手に伝わってくる。

いやいやいや……逃がしはせん……逃がしはせんぞー!!!

ラインが弛まないよう、ロッドのしなりとリーリングでテンションを保ち続ける。カエシが付いてない針だから、糸が緩むとすぐに逃げられちゃうんだよぅ!!

不意に水面が沸き立ったかと思うと、真っ白な魚体が姿を見せた。この前釣った大物に負けず劣らずの良い型に見える。

しかも、その口元にはオリーブカラーのフェザージグがしっかり食い込んでるじゃないかー!

「リン! 大きい!! 魚、大きいよ!!」

「ですね! しかも、けっこう良い所にかかってる!! このまま寄せれば……」

逃げるな逃げるなと念じつつリールを巻いていると、ラインの先のミルクトラウトが突然ジャンプした。

幸い、ずっとリールを巻いていたおかげか糸は緩んではいないよう、で…………。

「ふあぁぁ!?!?」

「もっと大きいの、出た!?」

ジャンプした大物ミルクトラウトの後を追うように、それよりもさらに一回り大きなナニかが水面を割って飛び出してきた。

茶褐色で、流線形だけど……魚では、なさそうな……??

ほんの一瞬だけ見えた姿を目で追って……次の瞬間には派手な水柱が上がる。パシャリと細かい水の飛沫がこちらにまで飛んでくる程度には勢いが強かった。

「な……な、なに、今の……!?」

「マッドオッター!! 魚、食い……!!」

思わずリールを巻く手が止まり、糸が弛んだ。さっきまで鳴っていたドラグが沈黙する。

さ、流石に逃げられたか……!!

つい余計なことに気を取られた、と歯噛みした私の隣で、アリアさんが腕を構えた。

何事か……と思う間もなく、目の前が 生存戦略(サバイバル) の真っ赤な警告アラートで埋め尽くされた。

咄嗟に視線を上げれば、目の前の水面がヌゥゥと持ち上がり……さっき見かけたナニかが顔を出す。

水の膜の向こうで爛々と不気味に輝く、赤い瞳と目が合った。