軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

異世界食材に贖罪を捧げ食欲を承諾し食卓に招来し

虹尾長のスープは、白濁したスープの中にゴロリと丸鶏が沈んだスープだった。 生存戦略(サバイバル) さんによれば、日の光が当たると虹色に輝く長い尾が特徴の鳥みたいだ。

炎属性らしく、激昂するとその尾羽から火の粉が飛び散って火事を起こしたりするらしく、発見し次第捕獲なり討伐が義務付けられている上に、肉の味がいいということで食卓によく上がる食材とのこと。

まずは、黄金色の脂の輪が浮かぶスープを一口。

味付けはシンプルに塩味なんだけど、肉からも骨からも旨味が溶けだしていて、物足りない感じが一切ない。少しトロミが付いていて、よーく冷まさないと舌を火傷しそうに熱かった。

スプーンで突くだけで骨から肉が剥がれる程にじっくり煮込まれた肉は、思った以上に弾力があった。煮込まれて柔らかくなっていそうなのに、しっかりと歯を押し返してくる。

地面を走り回る鳥……ということもあるんだろうか?? 噛み切るとぎゅっと束ねられていた筋繊維の一本一本が、口の中でブワッとばらけていくような感じがする。

その上、噛めば噛むほどその繊維の奥から旨味が滴ってくるんだから、どれだけ旨味が濃いんだろうか……?

「凄いですね、虹尾長! めちゃくちゃ味が濃いです!」

「そうでしょう? ただ、その分肉が硬いので、スープなどの煮込み料理によく使われるんですよ」

「煮込んでも、しっかりお肉に旨味が残ってますもんね!」

大きな取り分け用スプーンで肉とスープのおかわりをよそっているセノンさんが、にっこりと微笑む。

いつもだったらそのイケメンオーラに目を潰すところだけど、それを感じている余裕が今の私にはないみたいだ。

だって、こんなに美味しいご飯があって、食材があって……!!

今度もしこれらの食材を手に入れた時、どうやって料理しようか考えただけで血が滾るんだよぅ!!!!

虹尾長……どうにかして煮込み以外で食べる方法、ないかな??

ああ……日本だったら、塩こうじに漬けたり、舞茸ソースに漬け込んだりしてみるのに……!!

油に糸目をつけないのならコンフィとかもありなんだろうけど、それも結局のところ「油煮込み」みたいなもんだし……。

「ちなみに、この虹尾長、王都の近くでもよく獲れますよ」

「そうなんですか?」

「王都の、宿とかの……定番、ご飯」

「あぁ! お店によってそれぞれ味が違って、食べ歩きとかしても楽しいヤツですね!」

ふむふむ。王都行きの楽しみがまた増えたなぁ! 事故らないように運転しないと……!

内心で拳を握って決意していると、エドさんとアリアさんが頼んでいた山吹サーモンが到着した……ん、だけど……。

「うわ! 黄色……っていうか、金色!? 皮目光ってる!!!」

「山吹サーモンはねぇ、美味しいんだよ……!」

「フライとか、さい、こう……!」

身は黄色とオレンジの中間のような鮮やかな色で、皮を剥いた後の銀皮は、もはや金皮というべき輝きを纏っている。

確かにコレは山吹色、だなぁ……。悪代官に差し入れられてもおかしくないくらいには山吹色だ。

何切れか貰って口に入れると、たっぷりと乗った脂が口の中でトロリと蕩けて……あっという間に流れていく。濃厚なんだけど、後口に響かない……というか、トロっと融けた瞬間に、もうサラリと消えてしまう感じ……。

その癖、濃厚な甘みと舌の根が痺れる程度の強烈な旨味が舌の上に広がって、微かな海の香りが鼻に抜けていく。

身は柔らかいような、そうでもないような……??

いや、硬くはないんだよ?? でも、ダラッとだらしなく柔らかくもない。

口の中に入れた瞬間はむっちり滑らかなんだけど、噛みしめると身の奥は歯に抵抗してくるようにしっかりと引き締まっている……っていう感じ。

こうして食べると、ミルクトラウトも美味しかったけど、やっぱり「トラウト」だったんだなぁ……って思う。ミルクトラウトもしっかり脂が乗ってて味が濃かったけど、山吹サーモンと比べるとさっぱりしてる部類だわ、あれ!

美味しかったのは美味しかったんだけどね! 釣り味も良かったし………………んん??

「あ! 火山回りで行くってことは、レアル湖の近くを通るんですよね!? 休憩がてら、釣りとかしても大丈夫ですか!?」

「またミルクトラウトを釣るつもりだろう? 俺としては大歓迎だな。あの塩焼きは美味かった……!」

レアル湖、まだミルクトラウト釣れるかな??

釣れるんだったら、また釣りたい!! あそこのトラウト、めっちゃ引くんだもん!!!

それに、 生存戦略(サバイバル) さんによれば「産卵に備えて荒食いを……」って書いてあったし……旨く行けば魚卵とかも食べられるかもしれないじゃないか!!!

そう思ってヴィルさんに確認を取ってみれば、ヴィルさんもミルクトラウトの味を思い出しているのか、ふと口元を緩めて許可してくれた。

うん。なんだかんだで、あの夜のご飯、美味しかったですよね。初異世界の夜だったけど、色々と楽しかったなぁ……。

しみじみとそんなことを考えていると、ワインのグラスがコトリと音を立ててテーブルに置かれた。

視線を上げれば、セノンさんがいつも以上ににっこりと微笑んでいる。

「……何ですかそれは? 私たち、まだそれは食べていないのですが……?」

「ヴィル、ずるい!! わたしも、たべたい……!!!」

「リンちゃん、リンちゃん! 今度はオレたちにも作ってよー!!」

笑みをたたえたまま口を開くセノンさんを皮切りに、アリアさんとエドさんがこちらに詰め寄ってきた。

今度のレアル湖は、賑やかな夜になりそうだなぁ……。

山吹サーモンのフライが来るまで食べたいコールに晒された私は、静かに現実から逃避をし続けていた……。