軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話 真偽

「最近、またギルド『テンペスト』の評判が上がってきているらしい」

暗い部屋の中で蝋燭の明かりだけが揺らめいている。

部屋の中には三人の人影が見えた。

一人は、年老いた男。

一人は、小柄だが言い知れぬ恐怖を感じさせる男。

一人は、容姿端麗で腰に短刀を携えた男。

「評判を地の底まで落としたというのにどうしてまた?」

年老いた男は容姿通りの低い声をしていた。

「フレイパーラ新人大会で『テンペスト』に所属しているギルドメンバーから優勝、準優勝を飾ったことがきっかけだろうな。決勝の内容が非常に良かったこともあり、今注目度はかなり高いはずだ」

容姿端麗の男は言う。

「へぇ、お前にしては随分と高評価じゃないか」

小柄な男は興味深そうに尋ねた。

「それだけの逸材だったということだ。ギルド『テンペスト』には勿体ないぐらいのな」

「じゃあそいつらを殺しちまえば評判はガタ落ちだなぁ」

小柄な男は口角を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべる。

「止めておけ。新人とは言え、かなりの実力者だ。俺たちとしても不用意な消耗は避けたい」

「大丈夫だって。無防備なところを襲い掛かれば楽勝よ。暗殺は俺の得意分野だぜ?」

「ダメだ。最近、一人殺したばかりだろう。短期間で何度も行うと足が付きやすくなる」

「……あぁ、そうだったな。仕方ない、そいつらを殺すのはもう少し後にしてやろう」

「ならばどうすると言うのだ? 『テンペスト』の評判を落とす策は無いのか?」

年老いた男は辛抱ならない様子だった。

また名前を聞くようになって、彼の中で『テンペスト』に対する憎悪が再熱していた。

「勿論ある。今回の問題の根本にあるのは『テンペスト』に入った新人冒険者の存在だ。これは後々始末すればいい。だが、爺さんの様子だと『テンペスト』が人気になっているってだけで許されないみたいだからな。だったらその人気を加速させている奴を見つけ出せば良い」

「ほほう」

「現ギルドマスターの手腕でギルドがここまで持ち直されるとは思えねぇ。誰かが代理としてギルドを仕切っているとしか考えられない。まずはそいつを捕まえちまえば良い」

「捕まえてどうするのだ?」

「少し教えてやるのさ。『テンペスト』に協力するとどうなるかってことをな。そのあとは解放してやればいい。それだけでそいつは再起不能だ」

「……フッフッフ。良い。実に良い。これでまた『テンペスト』は悲惨な状況に陥るだろう」

5つのCランククエストを終わらせ、これでやっとBランククエストを引き受けることが出来るようになった。

しかし、今はBランククエストが一つも依頼されていないので結局何も出来ない。

個人的な依頼が舞い込んでくる以外は冒険者ギルド連盟に依頼されたクエストが回ってくる。

ギルドの実績に見合ったクエストが回されるので仕方ないことではある。

この待ち時間は鍛錬をして過ごそう。

ちょうどスキルを取得する予定もあることだし。

「やっほー、リヴェル」

「リヴェルさん、こんにちは」

これから闘技場に向かおうかと思っていたら、ラルとフィーアに声をかけられた。

「その組み合わせは少し珍しいな」

「そんなことないでしょ。歳の近い女の子が仲良くなるのは自然な流れじゃない」

「それにお昼の時間ですから、一緒にご飯を食べようという話になったのです」

そういえば、もうそんな時間か。

『あるじ、おなかすいた』

頭の上に乗っているキュウが腹を空かせて目を覚ましたらしい。

「リヴェルも一緒に食べようよ」

「そうだな。お邪魔させてもらってもいいか? キュウもお腹が空いてるみたいだ」

「キュ、キュウちゃんもですか!? 私アーモンド取ってきますね!」

「……どうしたんだフィーアは?」

「あの子、キュウのこと可愛い可愛い言ってるからお世話してあげたくなるんじゃない?」

「なるほど」

『フィーア、いいひとっ!』

キュウは念話で俺に自慢げに伝えてきた。

こいつ、本当チョロい。

フィーアがアーモンドを取ってきてくれたおかげでキュウはご満悦。

俺たちも雑談を交えながら昼食をとっていた。

「お食事中のところ申し訳ありません。もしかして、リヴェルさんでしょうか?」

誰かが話しかけてきた。

金髪がよく似合う整った顔をした男性だ。

俺よりも年上で背丈も高い。

「はい、そうですよ」

「おお、やっぱり! 実は僕も冒険者をしているのですが、今後冒険者として活躍していくであろうリヴェルさんとお話ししたかったんです!」

「あー、なるほど。それで最近ウチでよく食事をしていた訳ですね」

ラルが納得した様子で言う。

「恥ずかしながらそうですね。しかし、食事自体も美味しくて通わせてもらっていました」

「気に入ってもらえたなら何よりです。ウチのギルドはまだまだ評判が低いですから」

「全然そんなことないですよ! 最近、よく『テンペスト』の名は耳にします!」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

この男は、よく『テンペスト』に訪れていたようだ。

それも俺と話をするために。

最近はクエストをこなすことばかりに時間を使っていたから、あまりギルドにいなかったからな。

悪いことをしてしまったかもしれない。

「失礼ですが、名前とギルドをお聞きしてもよろしいですか?」

「勿論です。僕の名前はノア。所属するギルドは『ナイトメア』というところですね。昔からあるんですけど、中々有名になれない、そんなギルドです」

「あ、ギルド名は知ってます。でも申し訳ないですが、どんなギルドかはあまり分かりませんね」

「アハハ、いいですよ。お気になさらず。……おっと、もうこんな時間か。今日はこれにて失礼しますね。皆さんに挨拶できて良かったです」

そう言って、男は去って行った。

「……ふぅ。やっと行きましたか」

フィーアがため息を漏らした。

「フィーア、その態度絶対に人前で見せちゃダメだからね」

「も、もちろんですよ……! 実は私、こう見えても人見知りするタイプなのでああいった感じの人は苦手だったりします」

「それぐらい分かってるわよ。ね? リヴェル?」

「ああ。イメージ通りって感じだし、特に驚くことでもないな」

「え、えぇ……そんなひどいです……」

目に涙を浮かべて悲しむフィーア。

今回は自業自得かもしれない。

……それにしてもノアという男。

印象が良かったものの、会話の最中、何度も魔力の波が揺れ動いていた。

《真偽判定》取得のために人と話すときは《念話》を応用した魔力の波を感じとる作業をしているのだが、今回それが功を奏した。

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○スキル《真偽判定》

指定した相手が嘘をつくと分かる。相手が嘘をつかず真実を隠していてもわからない。

また、指定した相手が真実だと認識しているときは嘘とはならない。

○取得条件

『念話』を習得している。

指定した相手が嘘をついたときの魔力の波の揺らぎを感じ取り、表情の変化や反応を理解する。

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何か秘密を隠しているか、それとも思惑があるのか。

実態は分からないが、良からぬ予感がする。

[スキル《真偽判定》を取得しました]

……このタイミングで取得したか。

だとすれば、この予感は的中している可能性が高い。

ランクを上げることやスキルを取得することよりも襲いかかる脅威を防ぐことの方が先決。

だが、これは確定しているわけではないのでラルとフィーアには話せない。

具体的な証拠が無ければ、信憑性に欠けるし、不安を煽るだけだ。

俺の方で何か対策を打っておくことにしよう。

そのためにもまずは情報を集めることが最優先だ。

昼食後は街に出かけるとしよう。