軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20話 不仲の二人

◯ラルの独白

最初は本当にこの人がオークを一撃で倒したのか疑っていた。

でも町長が情報を偽装する訳ないし、それだけの実力を持つ冒険者を金貨1枚で護衛として雇えるのは美味しい条件だった。

子竜を従魔にしてたり、言葉遣いが冒険者らしくないことから最初は貴族かと思っていた。

でも違って、何か不思議な魅力のある変な奴だと思う。

口数は多くないけど、自分の意見をハッキリ主張するところや料理が上手なところには好感が持てる。

そして何より、彼は凄い努力家だった。

護衛の役目を果たしながら、彼は自己鍛錬を欠かさない。

魔力枯渇状態になっても平然としている彼を見て、私は彼の才能が【努力】なのではないかと疑うようになった。

『貴方の前に現れる【努力】の才能の持ち主は、商人として成功するうえで欠かせない存在となる』

そんな風に神様からのお告げを聞いた通りになって、私は驚きを隠せなかった。

そして努力を毎日続ける彼を見て、疑惑は確信へと変わった。

神の声の言う通り、私の目の前に【努力】の才能を持つ者が現れたのだ。

逃す手はない。

ウェミニアは宿屋の数も多く、何処に泊まったかが分からなければ居場所を特定するのは難しい。

それを防ぐために私は宿屋を提供した。

彼は私をいいやつだと言うが、そんなことはない。

打算的で利益のことしか頭にない人間だ。

……でも、彼が私をいいやつだと言うのなら、そうあるように努めたいと思うのはどうしてだろうか。

そのように思うこともあって、私はポーションを持って彼に会いに行った。

彼が塩を作ると言ったときは驚いた。

……それを本当に作ってみせたときは更に驚いた。

魔法ってあんなに便利なものだろうか。

いや、彼が特別なのかもしれない。

塩を運搬するために彼が苦しみ出したときはどうすれば良いか分からなかった。

悲鳴をあげている彼を私は必死で応援した。

その最中、私は思ったのだ。

彼は何故こんなにも努力できるのか? と。

そして彼の助けになってあげたいとも思った。

彼の助けになることが商人としての成功に欠かせないものなら私は喜んで協力しよう。

《アイテムボックス》を取得したというメッセージを聞いて、一気に力が抜けた。

地面に倒れ込み、仰向けになった。

「……大丈夫?」

ラルが心配そうに話しかけてきた。

「……ああ、ポーション余ってないか?」

「1つあるわ──はい」

ラルはバッグからポーションを取り出して、俺に渡してくれた。

蓋を開けてポーションを一気に飲み干すと、ふぅ〜とため息が出た。

なんだかとても落ち着いた。

『あるじ、だいじょぶ?』

『大丈夫だ。心配かけたな』

『あるじ〜!』

キュウが胸に飛び込んできた。

人前でハードな努力をするのはやめておいた方がいいかもしれないな。

塩を運搬するためとはいえ、ラルは嫌な思いをしただろう。

「ラル……ごめんな。見苦しいところ見せちゃって」

「これぐらい平気よ。だって、貴方はこれからも努力を続けるんでしょ?」

「そうだけど……」

「じゃあもっと頑張らなきゃね。それで塩の運搬は出来そうなの?」

もっと怒られたりするものだと思っていたが、案外普通の反応だった。

俺としてはとてもありがたい。

「ああ。《アイテムボックス》のスキルを取得したからな。塩ぐらい余裕さ」

「……この短時間で《アイテムボックス》を取得してたの……? 商人なら誰もが欲しがるスキルじゃない!」

「そうだったのか。確かに便利だよな、このスキル」

時間の概念が無い空間にアイテムを保管できるため、食料とかには困らない。

保存食をわざわざ用意しなくても、料理をそのまま《アイテムボックス》で保管すれば、いつでも出来立ての状態で食べることができる。

「リヴェルと一緒にいると感覚が麻痺しそうだわ……」

そして塩を《アイテムボックス》に入れて、ウェミニアまで運んだ。

ラルが100kgの塩を金貨50枚で買い取ってくれた。

夕食はこれで豪勢に食べるとしよう。

翌日。

俺が宿屋の前に出ると、不機嫌そうな顔をしたクルトとラルがそこにいた。

「「リヴェル!」」

俺の顔を見ると、二人とも笑顔で話しかけてきたが、声がハモったせいかまた不機嫌な顔になる。

「なぜ君がリヴェルの名前を呼ぶんだ?」

「それは私がリヴェルの友人だからよ」

「そうか。ところでリヴェル、旅の準備は整ったから今日にでも出発しようか」

「それでクルトは待っていてくれたんだな。よし、出発しよう」

「ま、待ちなさい! たしかリヴェルはフレイパーラに向かう予定だったわね? 私も同行させて貰ってもいいかしら?」

「却下だ」

「なんであんたが却下するのよ!」

「それは僕がリヴェルと旅をする仲間だからだ。それに馬車はもう既に僕が用意してある。君が乗るスペースは無い。諦めたまえ」

「あら、それなら私がもっと良い馬車を用意すれば良いわね。私の商会が用意出来る最高品質の馬車でフレイパーラに向かいましょう」

「ラル。諦めが悪いのは変わらないようだね」

「ええ。根っからの商人気質なものでね」

……なんというか二人は知り合いで仲が悪いようだ。

ただ、旅の仲間にラルが加わってくれるのは個人的に大助かりだ。

これから冒険者になるうえでラルの商人としてのスキルは冒険者の業務以外の部分でかなり役に立つだろう。

「……クルト、すまないがラルの同行を許してやってくれないか?」

「なっ……リーダーである君がそういうなら仕方ないか」

いつから俺はリーダーになったんだ?

「やったー! ありがとうリヴェル!」

「クルトとラルは仲が悪いようだが、この機会に打ち解けてくれると嬉しいな」

「「それは無い」」

またハモった……。

一周回って仲が良いのでは? と思ってしまうが、当人達は凄く不機嫌そうだ。

『あるじ! おもしろそう!』

そんな二人を見て、何故かキュウは嬉しそうにしているのだった。