軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37話 世界最強の魔法使い VS 世界最強の努力家

「リ、リヴェルさん、髪の色が……」

「どうやらこれが本来の俺らしい」

「そ、そうだったんですか……なにかすごみを感じます……」

「あァ……俺もそう思う」

フィーアだけでなく、アギトもそんなことを言い出した。

「ありがとな、二人共。──それじゃあクルト、気失ってて悪かったな。再開しようぜ」

「ふ、ふふ、はははははっ! さすがリヴェルだ! 最高だよ!」

クルトの笑顔はまるで無邪気に遊ぶ子供みたいだった。

それとは対照的に放出される魔力はとんでもない。

まだ力を隠していたか。

でも、悪いな。

俺はもう負ける気がしないぜ。

しかし、本気で暴れると、とんでもない被害になりそうだ。

俺はクルトに近づき、上空に向かって蹴り上げた。

「なっ⁉」

魔力障壁で蹴りが直撃することは無かったが、衝撃でクルトは上空まで飛び上がった。

俺も地面を蹴り、空高く飛び上がる。

そして、俺とクルトの周りを囲むように魔法で結界を展開した。

「こんな高密度な魔力で練られた結界を見るのは初めてだ」

「お前と遊んでやったら英傑学園が崩壊しちまいそうだからな。ここの中なら思いっきり戦える」

「ふふふ……ゾクゾクするね。やっぱりリヴェルをあんなに簡単に倒しても何も納得出来なかったからね。君が覚醒してくれて僕は最高に嬉しいよ」

「へぇ、負けることになってもか?」

「そういうのは勝ってから言った方がいいよ──さっき君は僕に完敗していたからね」

「ははっ、じゃあ今のところ一勝一敗だな。これで決着だ」

「ああ、今度は長く遊べることを願っているよ」

「どうかな? お前次第だ」

そう言うと、クルトは笑って魔法を無詠唱で発動させた。

さっきはあまりの数と威力に対処出来なかったが、今は違う。

剣を上に振り上げて、構える。

そして、剣を振り下ろすと、クルトが詠唱した全ての魔法を一刀両断。

「これならどうだい?」

クルトは先ほどよりも魔法の数を増やし、俺の360度全ての方向に赤紫色の魔法陣が何重にもなって展開されている。

展開された魔法陣はまるで球体のようだ。

こんなことも出来るんだな。

だが、俺には効かない。

「ほら、防いでみなよ」

魔法陣からレーザービームのような魔法が一斉に放たれる。

こんな魔法見たことないな。

クルトのオリジナル魔法だろう。

面白い魔法を考え付くもんだな。

「そらよっ!」

俺は剣を振り回して、斬撃と風圧で魔法を全て防いでみせた。

身体能力が今までの比にならない。

思った以上にパワーアップしているみたいだ。

「驚いたね……。はは、まさかそんな力技で乗り越えられるとは思わなかったよ」

「クルトもまだまだこんなもんじゃねーだろ?」

俺はそのままクルトに攻撃を仕掛ける。

転移魔法でクルトの背後に転移して、斬撃を入れる。

「くっ……!」

魔力障壁で防がれるが、衝撃までは抑えきれないみたいだな。

「《虚空魔剣》」

再びクルトは魔法で黒色の剣を作り出した。

そっちがその気ならこっちも休むことなく、上に下に、右に左に、斬撃を何発も打ち込む。

クルトも剣で応戦するが、俺のスピードにはついて来れない。

斬撃がクルトの魔力障壁に1回、2回、とあたったところで、クルトは例のスキルを使い出した。

「──《賢者ノ時間》」

クルトの瞳が朱色に光る。

さて、俺はこれを見たのは二度目だが、能力を詳細に理解はしていない。

おそらくクルトは魔法で自身の両目を魔眼化しているのだろう。

そして魔法の連射性能は素の状態でもとんでもないが、《賢者ノ時間》の使用中は更に上がっている。

「いくよ、リヴェル」

そっちが先に攻めるつもりならこっちから攻めてやるよ。

俺はクルトに近づき、剣を振るった。

しかし、クルトは難なくそれを避ける。

魔力障壁による防御や剣で防ぐのではなく、かわしたのだ。

動体視力が上がっているのか?

でないと、避けるのは難しいはずだ。

「リヴェルが強くなっても関係ない。これは僕だけに許された時間だよ」

僕だけに許された時間、か。

普通、そんな表現するだろうか?

両目を魔眼化させ、その効果が時間に関連するものか。

それじゃあ、時間が遅くなって攻撃を避けることが出来た、とかそういうことか?

分からないけど、でも今よりもっと早く動けば反応できないはずだ。

「リヴェル、君の動き──見えてるよ」

「見えてても対処出来ないように俺は動いてやるさ」

「そんなこと出来るわけな……⁉」

俺の攻撃をクルトが咄嗟に剣で防いだ。

さっきの余裕だった表情は一気に消え失せた。

「ば、ばかな……(《賢者ノ時間》は2秒先の未来が見えるはずだ……なのに何故、リヴェルはそれと同じ動きをしないんだ⁉)」

クルトは明らかに動揺している様子だった。

一体何があったのだろう。

『リヴェルさん、聞こえますか』

頭の中で神様の声が響いた。

『この声は……神様? え、これ《念話》ですよね?』

『はい、神となったリヴェルさんなら私と《念話》することが出来るようになったので、私がこの戦いをサポートします。ほんの少しだけですが、お力になれると思います』

『とても助かります!』

神の力ってすごいな……。

今まで神様と会話するなんて、意識を失わないと出来なかったのにまさか《念話》で出来るようになるとは……。

『今、クルトさんが動揺しているのは彼の使う《賢者ノ時間》がリヴェルさんに通用しなかったからです』

『通用しなかった? でも、さっきは普通に攻撃を避けられてましたよ』

『それはリヴェルさんが《賢者ノ時間》を正確に意識していなかったからです。ですが、二度目の攻撃のときは《賢者ノ時間》に対抗しようと行動したため、クルトさんの《賢者ノ時間》の能力が無効化されたのです』

『な、なぜ……?』

『それが神となったリヴェルさんの固有能力です。リヴェルさんは自身の思い描いたことを現実にすることが出来るのです』

『……え、それって無敵では?』

『はい、無敵です。ただ、神のときの能力が戻ったとはいえ、まだ不完全。突拍子もないようなことは現実にすることが出来ないでしょう』

なるほど、つまり限度があるってことか。

その限度がどれくらいまでかは分からないが、過程を1つ1つ踏んでいけば、今の状態でもやりようによってはある程度のことは実現できるかもしれない。

「焦っているようだな」

「この僕が焦っている? そんなの……ありえないだろう。僕は……僕は世界最強の魔法使いなんだッ!」

感情を露わにしてクルトは叫んだ。

「へー、それじゃあ俺は世界最強の努力家ってところか」

「……ふ、ふふ、そうだね。でもそれはお互い勝ってから名乗ろうじゃないか。僕の最強の魔法を受けてみなよ──《混沌咆哮》」

先ほど俺を気絶させた魔法をクルトは詠唱した。

それも1回だけじゃない──10回だ。

無詠唱で残りの9回を詠唱したのだろう。

10個の魔法陣が展開され、俺に向かって一直線に《混沌咆哮》が放たれる。

火、水、風、3つの属性が混ぜ合わさった10もの光線。

1つでも絶大な威力を誇っているというのに、10にもなると英傑学園の敷地全てを破壊できるのではないだろうか。

「《纏魔羽衣》」

「な、なんだその魔力の量は!」

俺が今の状態で《纏魔羽衣》を使うと、クルトが驚くほどのとんでもない魔力の量になる。

「お前が本気で来るなら俺も本気でいかねーとな」

──クルトが放った《混沌咆哮》全てを斬る。

そう、思い描く。

それが俺の固有能力だというのは、凄い納得がいった。

今までもそんなことが何度も起きてきた気がするんだ。

アンナを助けるためにマンティコアと戦ったとき、咄嗟の思いつきで《剛ノ剣・改》を完成させることが出来た。

魔物の大群を指揮していた悪魔と戦ったときだって、奴の《常闇牢獄》を俺は光球を作り出した要領で剣に光を溜めた一撃で打ち破ることが出来た。

今回だって同じだ。

「《無穿刹那》」

たった一振り。

それだけで俺はクルトの《混沌咆哮》を斬った。

切断された光線は、斬撃の風圧によってかき消されていく。

火、水、風、3つの属性の魔法の欠片が宙をパラパラと舞う。

瞬時に俺は転移魔法でクルトの正面に転移した。

「クルト、これで遊びはお終いだ──《無穿刹那》」

そして、クルトを守る魔力障壁を斬った。

パリンと、割れる音がした。

「楽しかったよ、リヴェル。僕の負けだ」

そう言うクルトの表情は、遊び疲れた子供のように満足気だった。

「さぁ、僕も斬るといい」

クルトは両腕を広げた。

魔法で宙に浮くことを辞め、クルトは落下していく。

「ああ、そうさせてもらうぜ」

落下するクルト目掛けて──一閃。

だが、俺が斬るのはクルトではない。

その身に宿る魔神だ。

クルトの胸部から魔神の本体が現れた。

「ば、バカな……! き、貴様のその力……!」

魔神の身体を両断する線が現れる。

「神……そのものではない……か……」

真っ二つに斬り裂かれ、魔神は消滅した。

キラキラとした光の粒になって、空へ消えていく。

おっと、いけない。

クルトが落下したままだ。

俺は急いでクルトの手を掴んだ。

「……なぜ、助けるんだい?」

「友達を助けるのに理由がいるか? それとも友達より弟子の方がしっくりくるか?」

「ふふっ……君は本当にお人好しだね」

「ああ、たとえお前が間違えた道に進んだとしても俺は見捨てることなんて出来ないよ」

「完敗だよ……ありがとう、リヴェル。……そして、すまなかった」

「分かればいいさ」

そう言って、俺はクルトに笑いかけた。