軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第6-23話 時の魔術師

「ミコちゃん! 急いで!!」

「『 身体強化(アクティブ) 』ッ!」

直上から落ちてきた 吸血鬼(ヴァンパイア) を身体強化されたミコの足が捉えると、大きく蹴り飛ばす。腹部にミコの蹴りが直撃した 吸血鬼(ヴァンパイア) は身体を大きくたわませると、そのまま弾性限界を突破したかのように身体が真っ二つに裂けた。

そして、 蝙蝠(こうもり) に姿を変えると高笑いとともに元に戻った。

「クソッ! 効いてねえな!」

「 吸血鬼(ヴァンパイア) の変身魔術だね。即死させない限り、受けた傷を全部治しちゃうってやつ」

「しかし、こいつらどっからわきやがった?」

「侵入者が呼んだんじゃない? 今はとにかくみんなを守らないと」

生徒会のツートップはそう言って、 吸血鬼(ヴァンパイア) を相手に構えた。学校内に出現した 吸血鬼(ヴァンパイア) は12体。目の前にいる 吸血鬼(ヴァンパイア) はミコとミルが相手にしている。また、1体はフレイに釘付けだ。

だが、残りの10体は学校中に散らばった。

騎士団と教師たちが相手にしているのだとミルは推測したが、それも正しいのかも分からない。侵入者の正体が分からない上に、力量も分からない。ただ、この数の 吸血鬼(ヴァンパイア) をまとめて呼び出せるということは、まともな人間ではないということはたしかだ。

ミルはそんなことを考えながら、真正面にいる 吸血鬼(ヴァンパイア) を見た。

「私が支援するから、ミコちゃんは攻撃をお願い」

「……逆じゃねぇの?」

「何言ってるの。ミコちゃんも強くなってるんだから」

ミルの言葉を聞いて、ミコは小さく笑うと拳を握りしめた。

「分かった。オレが――」

刹那、ぞっとするような殺気がミコを襲った。彼女は自分の直感を信じるように、自らの左に拳を突き出す。そこには先程の 吸血鬼(ヴァンパイア) が音もなく接近しており、ミコの首にその牙を突き立てようとしているところで。

「――ふッ!」

息を吐きながら、ミコの拳が炸裂。

吸血鬼(ヴァンパイア) の身体が地面と水平に吹き飛ぶと、校舎に激突して停止。だが、 吸血鬼(ヴァンパイア) がニヤリと笑うと、その姿が影になって、再び実体化。

気がつけば完全に傷が修復されていた。

「埒が明かねぇなァ」

「大丈夫。だいたい分かったから」

「……流石は天才。頼りになる」

吸血鬼(ヴァンパイア) を見ながら、自信満々にミルが言う。

ミルの実力を誰よりも知っているミコは心強さを感じながら、笑った。

「私が合わせる。ミコちゃんは自由にやって」

「おう」

その合図とともにミコが地面を蹴る。

遅れて、ミルは魔力を励起。

「『綻べ』」

命令にも似た、魔術の詠唱。

刹那、世界が凍りついたかのような冷たい錯覚がその場全ての魔術師を襲うと、ミコの蹴りが再び 吸血鬼(ヴァンパイア) の身体を捉えて吹き飛ばす。 吸血鬼(ヴァンパイア) は空中で強引に体勢を立て直すと、ニヤリと笑う。

そして――何も起きないまま 吸血鬼(ヴァンパイア) の腹部にミコの拳が入った。

「どうだ。痛ェだろ」

地面に叩きつけられた 吸血鬼(ヴァンパイア) の表情には明らかな困惑が浮かんでいた。それは、使ったはずの魔術が使えなかったという困惑の顔。

「……妨害魔術か」

そして、呻くようにそういった。

「どうだろうな? お前が下手なだけなんじゃねえの」

「調子に乗るなよ、人間風情がッ!」

吸血鬼(ヴァンパイア) が吠えるが、ミコは既にそこには居ない。

そして、一拍遅れて 吸血鬼(ヴァンパイア) の頭が消し飛んだ。

バッ! と、赤い血液が放射状に散って、ようやく 吸血鬼(ヴァンパイア) が死んだというのをミルは遅れながらに理解する。

「な、なにそれ?」

「これか? イグニが教えてくれたんだよ。『ぐるぐる魔力』つってな、魔力を回転させてパワーアップするんだ」

「へぇ……」

ミコのネーミングセンスは今更なので突っ込まないが、自分の目ですら捉えられないほどの高速移動にミルは驚愕する。

「あれ、あれだけ大口叩いてたのに、チェニク死んじゃってるじゃん」

だが、音も無く現れた色白の少女の出現が2人の戦闘体勢を崩させてくれなかった。

「どっちがやったの? あ、そっちの身長が高い方か」

少女はミコの足についている血液を見て、そういった。

「ま、どっちでもいっか。2人とも吸っちゃえば良いし」

「ミル。準備は」

「できてる」

一瞬で戦闘モードに切り替わった2人の鋭い視線なんて気にしていないかのように、少女は頬に手を当てる。

「私ね、童貞よりも処女の血の方が好きなの。こんなご馳走、捨て置け無いわね」

刹那、ミコは少女に向かって蹴りを放った。だが、ミコの足は少女の右手がガッチリとホールド。

「だから、大人しくやられてね」

――――――――――――――――

「……何なんだ、お前は…………ッ!」

グレゴリーの声が聞こえた時、イグニは魔法の発動に失敗したのかと思った。

だが、違う。

魔法は確実に発動している。

「「なんで、止まった時の中で……ッ!?」」

そして、2人して全く同じ言葉を吐いた。

「ありえない! クレーヌの魔術は世界で1人だけの魔術だ! お前が使えるはずがないッ!!」

そして、グレゴリーの焦燥に駆られた声がイグニの耳に届くとともに、彼は何が起きたのかを全て理解した。

「……なるほどな。不明な侵入経路、突然の攻撃。何が起きているのか、まったく分からなかったが……大体理解できた」

ルクスから、聞いたことがある。

時を操作することの出来る【 固有(オリジナル) 】があると。

「そっちの娘が、【 固有(オリジナル) :刻】。時間の操作を行える魔術か」

「お前は、何なんだ……ッ!?」

「だから言ったろ? 魔法使いだって」

イグニは絶対的な自信とともに、グレゴリーを見る。

「お前はこの世界の始まりが何だか知ってるか」

止まった時の中で、イグニはグレゴリーに熱線を放つ。

グレゴリーはクレーヌを連れて避ける。

「クレーヌ。絶対に魔術を解くなよ……っ!」

「ぐっ、グレゴリー。難しいよ……」

クレーヌの顔は青を通り超えて、真っ白になっていた。

恐らく止められる時間に限界があるのだろう。

時を操作する魔術は絶対的だ。

だからこそ、彼女は自分を鍛えるということをしてこなかったのだ。いや、そんなことをする 必(・) 要(・) も(・) 無(・) か(・) っ(・) た(・) のだ。

「大丈夫……。向こうだって、無制限に時を止められるわけじゃない……ッ!」

グレゴリーの推測は正しかった。

イグニの『創造の奇跡』にも限界はある。

「勿論、俺にも限界はあるぜ」

「……だから、クレーヌ。それまでは」

「この魔力量だと、143億年はかかるだろうけどな」

「…………は?」

その時、グレゴリーの動きが止まった。

「それが、魔術と魔法の違いだ」

だが、イグニは止まらない。

その場の絶対者はさらに魔力を熾した。