軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5:色々な測定

「いらっしゃ~い、その子がそうなのね~」

ヘルムス様に連れられたワタシがやってきたのは病院の診察室のようなところだった。

様々な器具、机、椅子が所せましと置かれ、壁には中が窺えない棚が幾つも設置されている。

で、そんな部屋で待っていたのは、白衣を着た一人の女性だった。

「ええその通りです。ミーメ嬢、こちらの方はユフィール・フォン・ウインスキー様と言って、王城内の医療関係の頂点に立つ方です。失礼のないように」

「今日はよろしくお願いします。ユフィール様」

「よろしくね~ミーメちゃん」

ワタシは女性……ユフィール様に向かって頭を下げる。

ユフィール様の目は右目は光属性である事を示す白に近い黄色であるが、左目は白に近くはあるものの紅色だった。

どうやらユフィール様は第二属性持ちであるらしい。

目の色からして……第二属性は肉体属性と光属性の中間くらい……医療関係の頂点であると言う点も併せると……まあ、そう言う事だろう。

そして、この国での魔術の活用も考えると宮廷魔術師の一人であることまでは確実と言えそうだ。

「それじゃあ~ヘルムス君~」

「はい。私は自分の部屋で待っていますので、よろしくお願いします」

「任されたわ~」

ヘルムス様が部屋から去っていく。

まあ、これは当然だな。

と言うのもだ。

「ではミーメちゃ~ん。服を全部脱ぎましょうね~」

「分かりました」

これから行われるのは身体検査兼身体測定なのだから。

女子のそれを行う以上、この場は男子禁制である。

……

「ミーメちゃんは16歳なのね~」

「はい、その通りです」

「身長は~138cmね~」

「うぐっ、140cmになりませんか?」

「なりませんね~。この数字を伝えて~制服を作ってもらう事になりますから~」

「うぐぐっ……」

「胸囲は~数字的には年齢相応なのね~」

「はい。何故か此処だけ膨らみまして……」

「不思議な事もあるものね~栄養状態に問題は無し~筋肉は~案外あるわね~」

「まあ、森の中で狩りを行うにしろ、魔道具を作るにしろ、相応の力は必要ですので」

「ミーメちゃんと同年代の貴族の女の子たちにも見習って欲しいわ~時々居るのよ~ガリッガリになっちゃっている子が~……」

「……。ところでユフィール様。そんなご自身の歳の半分くらいの相手に話しかけるような喋り方をしなくても大丈夫ですよ。さっきも言いましたが、ワタシはこれでも16歳なので」

「あら~。ミーメちゃんてば嬉しい事を言ってくれるのね~。でもこれは癖みたいなものだから気にしなくても大丈夫よ~」

「そうですか? ならいいのですが」

「それじゃあ~服を着ましょうね~手伝うわ~」

「いえ、自分で着られます。単純な構造ですし、ワタシには魔術もありますので」

「あら便利~。ミーメちゃんならドレスでも一人で着られそうね~」

とまあ、こんな感じのやり取りをしつつ身体検査と身体測定は無事に終了。

当然だが危険物なんて隠し持っていないので、トラブルになる事は無かった。

まあ、危険物以外の隠し事はあるので、そこについては全力で隠したわけだが。

しかし……ワタシの背、やっぱり10歳ごろからまるで伸びていないな。

原因に心当たりはあるけれど、その通りなら罠にもほどがあると言うか何と言うか……。

と、そんな事を考えていた時だった。

「では続けて~知識検査の方もしましょうか~」

「え゛っ!?」

ユフィール様が机の方に分厚い紙の束と筆記用具の準備をしていた。

「え、あの、そんなの聞いていない……」

「それはそうよ~。事前準備をさせないためにも~黙っておくのが通例の検査ですもの~。でも安心してね~。ミーメちゃんが~貴族院のような学校に通っていない事はこちらも分かっているわ~。だから~これはあくまでもミーメちゃんがどれぐらいの知識を持っているかを確かめる物であって~、これが出来ないから王城に勤められないなんてことはないわ~」

「そ、そうですか……」

ユフィール様はそう言っているが、王城に勤めた後に任せられる仕事の範囲に差が出たりはしそうだ。

いや、それは着けて当然の差なのだろうけど。

「時間はたっぷりあるから~安心して~しっかりと一つずつ解いてね~」

「分かりました」

まあ、ワタシの無知具合を王城側が知っておいてくれるのは、ワタシとしても助かる事だ。

なので、この検査問題は真剣かつ真面目に解いていき、分からないところは素直に空欄で出すとしよう。

と言うわけで、ワタシは席に着いて、紙の束の一枚を机の上に置き、それと向き合う事にした。

……

「ふむふむ……」

知識検査問題に付き合うこと暫く。

この検査がどういう物なのかが分かってきた。

どうやら、この検査は受検者の知識の広範さと深さの両方を問うものであるらしい。

初めの頃の問題はシンプルな加減乗除であったり、簡単な文章が読めるかであったり、現国王陛下の御名を訪ねるような物だった。

……。

はい、前二つは問題ありませんでしたが、陛下の御名は興味が無いので知りませんでした。

でも平民なんてそんな物なので、仕方が無いと思います。

少し進むと、計算については文章題を解いたり、三角形の特定の角の角度を求めたり、円の面積を求めたり、簡単な二次方程式を解くのを求めて来たりしてきた。

文章関係は古文または有名であるらしい詩の読み解きや穴埋めを求めてきた。

政治関係は現代なら公爵家の家名や名産品、領地の位置関係。歴史なら国内で起きた大きな事件の名前や、開拓王……この王国を建国した王に関係する話への回答を求められた。

……。

計算はまだしも、文章はズタボロですとも。

政治関係もトレガレー公爵家くらいしか分からないですって。

まあ、開拓王がドラゴンを討伐して、第三属性を得てトリニティアイと呼ばれる存在になったのは、とある事情から調べて知っていたので、流石に答えられたが。

開拓王の名前? 申し訳ない。興味が無いので分からない。

で、此処から更に先へ進むと、もはや問題文の読み解きすら難解なレベルの専門分野になってくる。

流石にこの辺りは……ちょっと手に負えない。

計算関係は前世知識で、文学関係は娯楽小説で多少は何とかなったけど、流石にこの辺になってくるとどうにもならない。

貴族の家紋がどうとか、開拓のイロハがどうこうとか言われてもまるで分からん。

それでも、中には野営をする時にどうするのが適切であるか、のような手持ちの札でも何とかなる問題もあるので、そう言うのを見つけては答えていくわけだが……これらが合っているかと問われると困るところだな。

うーん、ワタシの知識で確実にこれが正解だと言えるのは、人体構造と魔物の生態ぐらいだろうか。

前者はワタシの秘密の関係で、後者は狩人としての積み重ねで分かっているので。

少しでも点数を稼げるように文章を伸ばしていく。

「時間ね~」

「分かりました」

と、此処で時間切れらしい。

気が付けば三時間ほど経っていたところで、ユフィール様の声が響く。

なのでワタシはドラゴンについて述べる文章を書く手を途中で止めると、鉛筆を脇に置く。

「あ、文章が途中なら最後まで書き切るのは大丈夫よ~これは試験ではなく検査だもの~。中途半端な文章ではなく~きちんと書き切ってくれた方が嬉しいわ~」

「そうですか? では」

が、ユフィール様にもこう言われてしまったので、書くべき事は書き切っておく。

そして、次の問題には移行せず、紙の束をユフィール様に渡す。

「随分と沢山ね~」

「紙の枚数はそうですが、目を通しただけで空白の紙も多いですよ?」

「目を通して~分からないものは分からないと素直に認めて次に移せるのも才能なのよ~」

「それは……そうですね」

まあ、分からない事を分からないと言えないのは、命のかかっている場面だと冗談抜きに命取りになるからな。

ユフィール様の言うそれは確かに才能の範囲なのかもしれない。

「では最後に~魔力量の検査ね~」

「分かりました」

ユフィール様が水晶玉のような物を持ってきたので、ワタシはそこへ手を置く。

すると水晶玉に付随した目盛りが動いて、120と言う数字の辺りで揺れ動く。

「120~。平民としては少し多めだけれど~貴族としては心もとないと言う感じね~」

「そうですね。ワタシとしてはこれでも十分ですが」

「魔力だけあっても~魔術の使い方がなっていないと~宝の持ち腐れだものね~」

「ですね」

えーと、魔力量は確か……。

100で普通の平民、150で普通の貴族、200以上は王家や公爵・侯爵家ぐらいなもの、だったか。

魔力量は遺伝するので、魔力量が多い者同士で縁戚を結ぶことも多く、結果として貴族は平民に比べて魔力量が多くなりやすい、だったはず。

尤も、魔術の出力関係のとあるルールを知っている身としては、ソシルコットのように魔力量が多い事だけを誇っている貴族の姿が滑稽なものにしか見えない訳だが。

そして、このルールは第二属性持ちであるユフィール様も把握している事だろう。

なので、ワタシとしてはユフィール様の言葉には苦笑を返すことになるわけだが。

「さて~今日の所はこれで終わりだったかしら~?」

「はいそうです。この後は王城内の寮に案内してもらい、そこで泊めてもらう予定です」

「そうなの~。明日からも頑張ってね~ミーメちゃん」

「はい。ありがとうございます」

ワタシは今日の予定を思い出す。

うん、知識検査の事を知らなかった時は、これしかかからないのにどうして王城内の寮にと思ったが、知力検査の事を考えたら、この後に寮へ行くのは妥当な予定でしかなかった。

つまり、そこに気づくヒントはあったわけか……ちょっと悔しい。

コンコンッ

部屋の扉がノックされる。

「ヘルムスです。ミーメ嬢を迎えに来ました」

「どうぞ~」

「失礼します。ミーメ嬢、どうでした?」

「書ける事は書きました」

「そうですか」

そしてヘルムス様が入って来て、ワタシはヘルムス様に受け渡された。

こうしてワタシの王城初日は多少のトラブルに巻き込まれつつも、何とか終わるのだった。